浮気した彼女から送られてくるNTRビデオレターをエロ動画サイトにアップし続けたら、広告収入で富豪になった件
『いえ~い彼氏くん。見てるぅ~?』
それは悪夢だった。
ある日の午後。『ごめんね……』という文字と一緒に、彼女から動画が送られてきた。
(サプライズ動画かな~?)
ウキウキで再生してみると、そこには見知らぬガチムチ金髪男に抱き着いている彼女の姿があった。
「え……?」
女子プロレスデビューしたのかな? なんて一瞬思ったけど、どう見ても浮気です本当にありがとうございました。
NTRビデオレター。まさか実在したとは。
あまりのショックと怒りでクラっとくるが、画面から目を離すことができなかった。
浮気相手の男はカメラ目線になり、口を開いた。
『いえ~い彼氏くん。見てるぅ~?』
見てるよ。再生してるんだから見てないわけないだろ。もっと他に言うことあるだろ。
『彼氏く~ん? キミの彼女、俺とまぐわっちゃってるよ~?』
いや実況しなくてもわかるわ。つーかまぐわうて。古文かよ。
『ご、ごめんね彼氏くん。でも私、身も心もこの人のものなの……あんっ』
男に頭を撫でられ嬌声を上げる彼女が、瞳に涙を浮かべながら謝ってきた。
嘘つけ。心が金髪男のものであることは事実かもしれないが、体は違う。日本国憲法18条。「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない」。よって体まで金髪男のものになることは憲法に反する。違憲である。
そんな意味不明なことを考えてしまうぐらい、俺の頭は混乱していた。
『だってよ。残念だったなぁ、彼氏くん。俺の虜なんだってよ』
『うん。私、この人なしじゃ生きてけない……あんっ……やめてよぉ』
『なぁ彼女。伝えてやれよ。言いたいこと、あったんだろ?』
『……ねぇ、彼氏くん。私、ずっと不満だったの』
彼女は意地の悪そうな笑みを浮かべ、口を開く。
『彼氏くん、あんまりかっこよくないよね。クールぶってるけど、普通にコミュ障なだけだし。話してても面白くないっていうか』
『おいおい~。彼氏くんがかわいそうだろ~? やめたれってw』
『それに年収も低いし』
『ぎゃはは!』
『社会人なのに女児アニメ見てるし』
『ぎゃはは』
『朝起きた時、口臭いし』
『いや……そこまで言う必要はなくね?』
間男が同情すんなよ。一番効いたわクソが。
『と、とにかく~。彼女ちゃんはもう俺のモノなんで。悲しいだろうけど、このビデオでも見てオナニーでもしてれば? ぎゃははw』
そこでビデオは終わっていた。
俺は泣いた。彼女を奪われた悔しさ。金髪男への怒り。自分の弱さへの絶望感。そういうものがごちゃ混ぜになって、俺の心はボロボロだった。
三日は寝込んだ。家から出られなかった。家から出れないのでアニメを見た。時間はたっぷりあったから1クール×5本ぐらい見た。やっぱ今期はリコリコが覇権だね。たきなちゃん、かわゆ。
あと動画は普通にエロかったのでクラウドに保存した。アングルが絶妙で普通にハイクオリティ。金髪男、いい仕事するね。
それはさておき。
失意のままネットサーフィンをしていると、あるネット記事が目に留まった。
『素人でも月30万!? ポルノハーバー入門』
ポルノハーバー。ハーバーといったらパールハーバーとハーバード大学ぐらいしか浮かばないけど、調べてみると、どうやらあるエロサイトに動画をアップする人種のことらしい。エロ動画の広告収入で金を稼ぐ。Porn○ubだからポルノハーバー。なるほど、ユーチューバーみたいなものか。
まぁ、俺には関係のない話だ。オリジナルエロ動画なんて持ってないし、違法転載をする勇気もない。30万円なんて夢のまた夢だ。
『年収低いし……』
正直、あの煽りが一番イラッときた。なぜなら事実だから。
大学卒業後、就職に失敗した俺は絶賛フリーター。手取り10万で毎月を食いしのいでいた。
それでも自由に使える金はすべて彼女にささげてきた。彼女が欲しいブランド品があれば貯金を崩したし、夜勤シフトを増やして死ぬ気で働いた。結婚も視野に入れていたから、定職に就くための資格勉強も必死で取り組んで、最近では地場の企業から内定も貰った。
こっちがどれだけ頑張っていたかも知らないで勝手なことを言って。さんざん金を吸い取った挙句、最後には浮気だって?
引っ込んだはずの怒りがまた湧き上がってきた。
そして俺は気が付いた。
(あのNTRビデオ、ネットにアップすれば金になるのでは……?)
正直、迷った。無断で他人の動画を投稿するなんて倫理的にアウトだ。そもそも犯罪じゃないのか? しかし悲しいかな。俺の脳はNTRの衝撃で壊れてしまっていた。
<<4K高画質>>【素人】彼女から送られてきたNTRビデオレターがやばすぎた……?【NTR】
とりあえず動画を某サイトにアップロードして俺は寝た。
翌日。投稿した動画を見てみると
「さ、再生数17万!?」
目を疑った。
1再生0.1円だと仮定しても17000円。俺にとっては大金だ。
調べてみると、どうやら登録者数が増えれば再生単価も上がるらしい。参入者の少ないこのサイトだと、人気になれば1再生0.4円という場合もあるらしい。
とはいえ投稿動画がなければ登録者は増えない。そこで俺は次の手を打つことにした。
「もしもし?」
『……なに?』
不機嫌そうな声。彼女だ。
正直声を聞くだけで辛いが、そうも言ってられない。俺は冷静に会話を続ける。
「いや、話したいことがあってさ」
『なに? もしかしてまだより戻せるとか考えてんの? キモッ』
「……」
うっさいバーカ!! そう叫びたかったが、俺はすんでのところで耐えた。
『あたし、もう彼氏くんに興味ないから』
「俺はあるんだ……」
『へぇー、うけるw あんな動画見せられても、まだそんなこと言えるんだ』
「あぁ。あんな加工動画、本物な訳が無いからな」
『うっわ。どこからどう見ても本物でしょ』
「……信じられないな。それじゃあ、もう一本送ってもらうことって出来るか?」
どうなる……?
『へぇーw。いいけど?』
よっっっっし!!!
それから半日もしないうちに動画が送られてきた。『ごめんね……』という文字と一緒に。絶対思ってないだろそれ。
『いぇーい彼氏クン見てるぅ~?』
お決まりの文句から始まる動画。一通り中身を確認し、俺はそれをサイトにアップした。
翌日、チャンネルの登録者は3万人から5万人に増えていた。
(いけるぞ……!)
そしてまた彼女に懇願し、動画を送ってもらう。それをアップする。ひたすらに繰り返した。
そこからチャンネルは順調に伸びていった。当たり前だ。NTRが嫌いな男はいない。
胸糞悪いとか脳が破壊されるとか、NTRを悪く言う連中は一定数存在する。けど、そんなのは「チ○ポになんて屈しない!」とかいう女騎士と一緒だ。本当はNTRが好きで好きでたまらないのに、無理して強がっているだけ。脳が破壊される? その感覚がクセになってくるんだよなぁ(みつを)。
しかし、転機は思いのほか早く訪れた。
「登録者が伸びない……」
チャンネル登録者が15万人を越え、投稿動画も安定して20万再生を稼げるようになったころ。チャンネルの成長ペースがぴたりと止まってしまったのだ。
このころ、俺の月収は既に100万に届こうとしていた。100万。大金だ。前の俺なら満足していたかもしれない。
しかし、俺の脳は破壊されているのだ。この程度で満足する? そんな訳あるか。
そこで俺は次の手を打つことにした。彼女から聞いた金髪男の電話番号をコールする。
「なぁ浮気男」
『んだよ、彼氏クン』
「お前の送ってくるビデオレター、光源の位置微妙じゃないか? もう少し天井側に設置した方がいいと思うんだが……」
『あ? ……確かにそうかもな。さんきゅ~、彼氏クン』
登録者は25万人を超えた。
「なぁ浮気男」
『んだよ、彼氏クン』
「BGM,版権もの使うのはマズくないか? 権利関係とか複雑だし……」
『あ? ……確かにそうかもな。さんきゅ~、彼氏クン』
50万を超えた。
「なぁ浮気男」
『んだよ、彼氏クン』
「彼女のアパートに高性能マイクとカメラ送っといたから、それ使ってくれないか?」
『あ? ……これ、SO○Y製じゃねぇか。いいのかよ、こんなもん送って』
「あぁ。その代わり、いい動画撮ってくれよ?」
『……へへっ! おうよ、任せとけ。さんきゅ~、彼氏クン』
75万を超えた。
「なぁ浮気男」
『んだよ、彼氏クン』
「お前、俺の元で働かないか?」
そして────
………
彼女は困惑していた。
というのも、別れた彼氏の様子がおかしいのだ。SNSには毎日高そうなディナーの写真をアップし、前に街中で見かけたときはハイブランドに身を包んで、隣に何人もの女を侍らせていた。あんなの、あいつの年収じゃありえない。
「ふざけんじゃないわよ……!」
失敗した、と思った。あそこまで金を持っているなら別れなかったのに。いや……
(あいつまだ私のこと好きらしいし、ちょっと誘えば元に戻れたりして)
そうだ、そうしよう。そして金を絞れるだけ搾り取ったら捨てればいいのだ、前みたいに。
欲に目がくらんだ彼女はスマホを取り出し、メッセージを送ろうとする。すると金髪男からメッセージが届いていた。
「ごめんな……」というメッセージと1つの動画ファイル。怪訝に思いながら、彼女は動画を開いた。
『いぇ~い彼女サン、見てるぅ~?』
金髪男がいた。しかし裸ではない。黒くツヤのある高級そうなスーツに身を包んでいる。
しかし、重要なのはそこではなかった。彼の隣に──同じくスーツに身を包んだ彼氏がいたのだ。
『見てるか? 彼女』
前みたいなオドオドした感じはない。人が変わったように凛々しい顔立ちの彼がそこにいた。
呆気にとられる彼女だったが、動画は止まらない。彼は語り始めた。
『俺はな。お前から送られてくる動画をすべてネットにアップしてたんだ』
『はじめは小銭稼ぎにしかならなかった。けど、続けるうちに規模が大きくなって……今じゃ、登録者は100万人だ』
『広告収入だけで月500万。案件とか商材込みなら800万ぐらいか? 年収1億ってとこだな』
『お前には感謝してる。お前があんあん犬みたいに喘いでる動画を甲斐甲斐しく送ってくれなければ、俺はフリーターのままだったよ』
『けどな、そんなことはどうでもいいんだよ。金なんてNTRの魅力に比べたらカスみたいなもんさ』
『それで、本題だけどな』
画面の中の彼氏は金髪男と顔を見合わせる。そして、小さく微笑んだ。
『俺、金髪男と事務所を立ち上げるんだ』
『へへっ……』
「は……?」
意味がわからなかった。年収1億? 事務所? そもそもなんで金髪男がそこにいるの?
ありえない。嫉妬と怒り、困惑で彼女の脳はおかしくなりかけていたが、そんなことお構いなしに動画は進む。
『オレぁ、カメラマンになるのが夢だったんだ。でも、才能がないって言われてよぉ……諦めてたんだ』
『でも、彼氏クンはそんなオレを認めてくれた。「お前の撮るビデオは凄い。俺の元で働かないか?」っってよ。……めっちゃ嬉しかったんだ』
『だからオレ、彼氏クンと働くよ。お前とは別れるわ』
照れくさそうな金髪男。そして彼氏が喋りだす。
『こいつのカメラの腕は凄い。眠らせておくには惜しい。これからはバンバン人を雇って金を注いで、世界中にNTRの魅力を伝えていくんだ』
『楽しみだな、彼氏クン』
『あぁ、俺たちで全人類の脳を破壊するんだ』
彼らは見つめあうと、固い握手を交わした。信頼の証。そこに彼女が入り込む余地はなかった。
『一応言っておくが、訴えても無駄だからな? ぼかし処理はしてるし、なによりアップロードには海外サーバーを経由してる。もちろん送金口座もな。……じゃあな、彼女。嫌いじゃなかったよ』
そこで動画は終わった。
「な、なんでよっ!!! くそ、くそ、ありえないありえないありえない────」
彼女の脳は破壊された。二度と戻らない。なぜなら、彼女を寝取ってくれる人はもうどこにもいないのだから。
最後までお付き合い頂きまして ありがとうございました。
少しでも良いなと感じて頂けたら、評価頂けると嬉しいです!
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