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Dr.ヘーゲルシュタイン編

生まれたのはたまたまだった。


ある娼婦が客との間に生まれた子供だった。


妊娠当初は商館のオーナーに堕胎するように執拗にいじめられ、何度も死にそうになりながらなんとか守り切った母は、赤子が生まれると命の火を消してしまった。


最初、生まれた赤子を放りだそうとしていたオーナーは赤子が女の子だったために、商館で育てることを決意する。


赤子の世話は、商館の女性がかわるがわる母として、そして姉として育てていった。


赤子が、3つになることには母親の容姿を引き継ぎ将来美人になると言わしめる見た目と、父親の血の影響なのか一度見聞きしたことを覚える頭脳を持ち合わせていた。


そして、この赤子と商館にとって、そしてこの国にとっても大きな転換点となる出来事が起こる。


それは客が忘れていった1冊の本であった。


革の表紙に紙に書かれた錬金術に関する本。


その本を少女が手にして読んだことそれがこの国を科学国家へと変える転換点となった。


その本に書かれていたことは錬金術としては特に価値はなく、無価値とされていた考えだったが、氷が水に代わり蒸気となりまた水に戻るなど科学の考えのもととなりえる記述がされていた。


その本を忘れていった者が二度と現れることはなかったが、そこに書かれている()()へ興味を持った少女は一つずつ商館の女性達の手を借りて試していった。


そしてこの国にとって初めての動力式機織機を開発する。


それは本を手に入れて1年足らずで起きた技術的転換点であった。

水を補充し、足踏みペダルを踏み続けるだけで稼働するこの画期的な機械は商会だけでなく、国へも大きな利益をもたらした。


それからの技術的な躍進はどんどん進み少女が15歳になり、商館を乗っ取り研究所兼販売店を手に入れるころには、この国は鉄製の船が飛び、鉄製の巨人が闊歩する他国から戦わずして併合を求められる鋼鉄の国と呼ばれるようになっていた。




少女の名前はDr.ヘーゲルシュタイン。

本当の母親の顔も、父親の顔も知らぬ少女は商館母や姉たちから受け取った名前を大事に胸にしまい、一度もあったことのない父とも師匠とも慕う本の著者の名前を名乗ることとした。

この名が世界に響かせいつか会えることを願いながら。


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