経験値
エピソード1
ここは中型船の甲板の上…
チョコとタロウの二人はドット団から奪取した船で、無人島から先ほど脱出してきたのであった…
「船の運転なんて、出来たんだな?」
タロウはチョコに対して尊敬の念を込めた。
「私じゃないの!」「その事なんだけど…新しい協力者がいるの!」
「その彼が今現在、船を操縦してくれてるの!」この船にはタロウとチョコ以外に乗船している人間がいたのであった。
「じゃあ」「紹介するわね」チョコが指差した操縦席に、一人の男性が立っていた。そう!協力者は吊り目のジルであった!
「あはは」「よろしくなタロウ」「これから宜しく」ジルは申し訳なそうな表情でタロウに挨拶した。
「お前」「オレをこき使ってた奴の一人だな!」
タロウは船を操縦しているジルを睨みつけた。
「ご…ごめんなさい」「君がこんなに強いとは知らなかったよ」
ジルは、タロウが大勢のドット団を一人で倒していた所を船の上から見ていたのだ。
「…」
「お前が謝るのなら…」「もう許すよ」タロウはあっさりジルの事を許してあげた。
「仲直りしたならよかったわ」「よかった!よかった」二人の関係が修復させチョコは安心した。
「ところで、二人はこれからどうするんだ?」ジルは、チョコとタロウに今後の目的を尋ねた。
「タロウくんは、私について来てくれるみたいだから。私の今後について語るね」チョコの言葉にタロウは軽く頷いた。
「一回、私の故郷でもあるバニラ大陸に戻るわ」「そして神童サイゼに会いに行くわ…」
「神童サイゼって、この世界の真実について知ってるって噂の奴か?」
「そうよ!」チョコは目の色が変わった…「一回会った事あるんだけど」「中途半端な情報を10万ゴールドで売られたの」
「その文句を言うついでに」「新しく聴きたい事が出来たから」「もう一度会いに行く事にしたの!」
「サイゼに関しては、あまり良い噂を聞かないな…」「みんなが知りたがている世界の秘密を金で取引してるって」
「自分しか知らない情報を」「金で売って、財を成してるって話だ」
「不思議なのは全部嘘じゃなかったの!」「所々、本当の話もあるから」「彼に真実を教えてもらいの」
「お前達の大体の要件は理解できたよ」「じゃあ俺の方は、さっき二人で話した通りだ」「バニラ大陸の玄関口の港まで送り届ければいいんだな?」
「そうね」「私たちが船を降りたら、約束通りこの船をあげるわ」チョコはニヤッと笑った。
ジルもつられてニヤッと笑った。「お前が頭のいいやつで良かったよ」
「ふふふ」二人は、互いにウィンウィンになる様にコッソリ話し合っていたのだった…
二人の笑い方が、タロウは不気味でしょうがなかった…
数時間後…
チョコが船長室に入りたいと、ジルに頼んだ。
「じゃあタロウ!」「俺が扉の鍵を開ける間、舵をかわってくれ」ジルとタロウが船の操縦をかわった。
「わかった」「やった事ないけど!」
「…」
一瞬、死を悟ったチョコだった。「すぐ終わるし」「ちょっとだけよ!」
ジルは神業のようなピッキングを今度はタロウの前でも披露した。
「カチャッ」
「相変わらず早いわね」チョコは悪い事だと、分かっていたが反射的に拍手をしてしまった。
チョコは船長室の扉を開けた瞬間…
ガタイの良い男が、チョコに突如襲いかかって来た…
『バッサッ』
「いいかお前たち」「一つでも変な行動とったら、この女の首をはねるぞ」
何と!船長室からドット団の団長であるドスが斧を携えて現れた…そしてドスはチョコを人質に取り、チョコに斧を向けジル達を脅迫した…
ドスは、顔の血管が浮き出るほどに怒りを露わにしていた。そして怒りで体が震えているのがチョコに伝わった。
「よくもこの俺をコケにしてくれたな」「お前たち3人は、一人にこらず殺してやる!」
男は斧をチョコの首に近づけ、ジルとタロウを威嚇した。
ドスは、ジルの顔を見ると…
「おい!ジル」「お前よく団長の俺を裏切ってくれたな!」「タダで死ねると思うなよ」
ジルは恐怖で腰が引けていた「すみませんー」「団長〜」「許してください」ジルは泣きべそをかきながら、恐怖に震えていた。
チョコは、思った…
ー もうダメだ。やっとここまで来たのに…私はお姉ちゃんの呪いを解かなくちゃいけないのに…ほんの少しこの世界の謎について触れることができたのに……
悔しい!悔しいよ!タロウ君!あの時みたいに助けてよ…
チョコは絶体絶命のこの状況に、ジャングルで初めてタロウに会った時の事を思い出していた…
すると時である…
「ドッカーン」「ぐしゃり」
何かと何かが衝突した!何かの衝撃で船が大きく横に揺れた。
『グラリッ』
「ごめん…」「やっちゃった…」
そこには船の舵を破損させて冷や汗をかいて、直立しているタロウがいた…
何と!船は大きな岩に衝突してしまったのであった…チョコ達に悲劇が起きている間に。
タロウは船を操作を全く理解出来ずに、ただただ立っていただけであった。そして、目の前に大きな岩が見えて来た…
タロウは岩を避けるつもりでいたが、舵を切らずに引っこ抜いてしまった…そして舵を破壊した結果。岩を避ける事が出来ずに、そのまま岩に船ごと突っ込んでしまったのだった…
そして今…岩とぶつかった衝撃で、船の大きく揺れ。その揺れでドスは捕まえていたチョコを離してしまった…
船は少しずつ傾き、少しずつ沈んでいった…
ジルとチョコは船から放り出され海に落ちてしまった…
沈みゆく船の上には、運よく船に捕まり。
海上へ落ちづに済んだ、タロウとドスの二人がいた…
「よくもこのガキ」「俺様の船をぶっ壊してくれたな」「ぶっ殺してやる!」
ドスは斧を振りかざすと。斜めに傾いてしまった船の上で、勢いよくタロウに突っ込んでいった…
「しねーーい」
斧を持ったドスがタロウに襲いかかる。
『キーーン』
ドスの斧に対してタロウは、しまっておいた角笛を出して攻撃を防いだ。タロウの角笛は、かなりの強度を持っていた。
「お前の笛がこんなに硬いとはな」
「でもよ」「最初に会った時より弱くなってるお前じゃ」「俺のパワーには敵わないぜ」ドスは筋骨隆々な体の持ち主なので、身長も体格も圧倒的にタロウが不利なのは明白である。
『キンッ!キンッ!』
タロウは、ドスの攻撃を防ぐので精一杯だった。
「流石に、時間を掛けるを今のオレには不利だな」「早いとこ倒さないと」「流石にマズイな」
「何ごちゃごちゃ言ってやがる」「作戦練っても無駄なんだよ」
ドスは斧を振り回しながら、タロウ目掛けて突っ込んで来る。
タロウは小柄な体格もあり、俊敏に動きドスの攻撃を避けている…
「はぁはぁ」
タロウは確かに弱くなった。突然出来た首の <鎖> によって本来の備わっていた力が、出せなくなっていた。
しかし…ジャングル育ちのタロウは生まれた時から、凶暴なジャングルの動物と生死をかけた戦いを繰り広げていた。
そんな今のタロウには、弱くなっていない所があった。それは、戦いの経験である…タロウは今の世界に生きる’戦士’たちよりも多くの戦闘経験がある。そして、戦いを生き抜いていた経験値があった。
その結果、今のドスとの戦闘中にドスの攻撃を避けながら。勝利のピースを集めていた…
タロウは、ドスには癖がある事を直感で理解した。
ドスの癖とは、斧を振り下ろす瞬間、相手の顔を見ず下を向くクセがあった。
タロウはドスの攻撃に対して一切ビビっていなかった…冷静に相手の動きを見て、自然とドスの動きを見極めていたのであった。
そして今まさにドスが斧を振り上げ、タロウに向かって全力で斧を振り下ろした…
その瞬間!一瞬の隙を見抜き、ジャンプしてドスの攻撃をかわした。ドスが振り下ろした斧は船の甲板に刺さり、チョットやそっとでは抜けない様になってしまった。
タロウは、決して高いとは言えないジャンプで。ドスと目線を合わす事に成功した。そして、ドスと目が瞬間。
『ドカン!!』
タロウは、思いっきり角笛でドスの頭をぶん殴った。するとドスの頭に角笛がめり込んでしまった。
かなりの衝撃がドスの頭から全身にかけて伝わった…この一撃でドスは完全にノックアウトしてしまった。
ドスは、意識を失い。沈みゆく船の上で大の字になって倒れていた。
ー タロウの角笛を使った直接攻撃は、相手からの攻撃を防ぐ時は相手にダメージを与えられない。
しかし、こちらからの攻撃は相手がどんなに硬くても。中に浸透するダメージを与える事ができるのである…
「はあ!はあ!」「何とか倒せたな…」「色んな動物と戦ってきたけど、人間と戦うは最高に楽しいな」
タロウはドスの猛攻を退け、何とかドスを倒す事ができた…しかし、海上で逸れてしまった仲間…沈みゆく船…
タロウはこの後、どうやってピンチを切り抜く事が出来るのであろうか…