もう一度
エピソード1
チョコは不気味な雰囲気を醸し出している、ドット団のボスの船長部屋へ侵入した。
中に入ると、薄気味悪い動物の剥製が3体ほどある。部屋自体は決して狭くはない。
けれど物が多く、散らかっている。圧迫感のある部屋に仕上がっていた。
そして日が当たっていないこの部屋は、ジメジメして居心地の悪いさが特徴的であった。
ー こんだけ散らかっていると『角笛』と『葉巻』を見つけるの苦労しそうだ。チョコは当たりを一周し、部屋を見渡した…
すると部屋の奥に、アンティーク調な縦長の机を見つけた。
ーもしかすると、この机の引き出しの中に探し物があるかもしれない…チョコは3つある引き出しを上から順に開けてみた。
一つ目の引き出し…何も入っていない。二つ目の引き出し…懐中時計が一つ。
そして最後の三つ目…
中には小さい木の箱が出てきた…その木の箱を開けると…葉巻が4本入っていた。
ー よし!一つ目のミッションはクリアっと。葉巻を一本頂戴した…チョコはちょこっと安心した。
ー あとは一番の目玉の『角笛』だ!何処にあるんだ?もう一度周りを見渡した。
そこには、着替え終わった洋服が山積みになっていた。チョコは山積みになった洋服に何か違和感を覚えた。洋服から漂う異臭を、何とか自分の鼻を摘み堪えた。山積みになった洋服をどかすと…埋もれていた宝箱を見つけた。
洋服をどかし宝箱を調べてみると…宝箱には南京錠がかけてあった。
ー きっとこの中だ。でも南京錠の鍵がないと無理だ。どうしよう…そうだ!もう一度ジルに頼もう。彼なら、こんな
鍵直ぐに外せるわ。
チョコは一旦。葉巻一本だけをパケットに入れ、部屋から出ようとした時…外から声が聞こえた。
「…ま…て…ま…ください」
ジルらしき男性の声が聞こえた。
チョコはジルの言葉を思い出した。
「いいか!もし外から声が聞こえたら、部屋の鍵を中から閉めろ…」「そしてすぐに隠れろ」「誰かが船に戻ってきたもしれないから」
チョコはすぐに扉の鍵を内から閉めた…
ー 早く隠れないと、まずいことになる…どうしよ…誰か来ちゃう…
『ガシャ!ガシャ!』外にいる誰かが、船長室の扉を開け始めた…『カチャ』
『ギィィ』扉が開き、ドット団のボスが船に戻って来たのであった。団長は、ジルと話しながら部屋に入ってきた。
「楽しい宴には、出し物が付き物なんだぜ!」「あの奴隷のガキから奪った笛を宴の景品にしよう」
団長は、部屋の中にある宝箱へ一直線に歩いて来た
「…」「モノの位置が少し違うか…」
「……」部屋の中に緊張感が走った。「そんな事どうでもいいか」「アッハハ」団長のドスは、すでに酔っ払っていた。
ドスは宝箱を開ける鍵をポケットから出し、宝箱に付いている南京錠の鍵を開いた…
『ゴソゴソ…』
ドスは宝箱の中から例の笛を持ち出した。「よし」「宴の景品を用意できた事だ」
「さっさと帰って、宴の続きた」ドスが用事を済ませて部屋から出ようした…その時!
『ガサガサ』
…部屋の中から物音がした。
ー まずい気づかれた。ベットに下に隠れていたチョコは、一気に緊張感が増した。
ー ここまで来たのに、こんな所で死ぬ訳にはいかないよー
「まさか泥棒ネズミでもいるのか?」「見つけて殺してやるかー」
ー まずい本当にヤバい!チョコはかなり焦った。すると…
『チューチュー』
動物の剥製の後ろから一匹のネズミが顔を出した…
「やっぱりお前か」「取り残した最後の一匹は」この汚い部屋には本当のネズミが入り込んでいたのだ…
ドスはネズミを捕まえ、手で握りつぶした。「さてゴミの掃除は済んだか」
「…」「宴に戻るかー」
ドスは握り潰したネズミの死体をその辺に放り投げた。ドスは、すぐに上機嫌に戻り部屋から立ち去っていった…
「…」「ふー」「なんとか助かった」チョコは何とかピンチを切り抜けた。
居心地の悪い船長部屋から出たチョコは、数メートル先のジルを見つけた。
「おーい」「ジル!何とか生きてるよー」チョコはジルの両手を握り、上下に振って生き残れた喜びを表現した。
「何とかなったな」「本当こっちもヒヤヒヤしたぞ」ジルは冷や汗をかいていた。
チョコはジルの目を見て質問した。「団長は何で戻ってきたの?」
「宴を盛りあげる為に、団員に特技を披露させよう考えたみたいだ」「一番宴を盛り上げた奴に景品をあげるって言ったたぞ」
「だから急に笛を取りに来たのかー」「宴の景品ってことは私にもチャンスがあるのかー」
「うーんどうしよ?」
するとジルがふと思い出した。「そういえば葉巻はどうした?」
「あー」「笛は持ってかれちゃったけど」「葉巻は最初に手に入れたよ」チョコはポケットに仕舞った葉巻を取り出した。
「これだよこれ〜」ジルはチョコと目が合い、一気に気まずくなった…
「あー悪かったよ」「葉巻をくれれば、俺が宴のサポートをするよ」
チョコは、ジルの提案を飲むことにした。「わかったわ」「はいこれ」
チョコは、苦労して手に入れた葉巻をジルに渡した。「よし!交渉成立だ」
「ボスは歌とダンスが好きなんだ」「お前が’イイもの’を持っていれば、優勝できるよ」
「歌とダンスかー?」「自信は無いけど、やるしかないよね」
チョコは他人の前で歌や踊りを披露した事がない。
しかし子供の頃から、家族の前だけでは歌っている姿を見せていた。
「よし決まりだ」「ちょうど交代の時間だ」タイミング良く島から二人の団員がこちらに向かってくるのが、船から見えた。
ー 今度こそ角笛を手に入れたやるぞ。私の手で未来を切り開くんだ…チョコは静かに闘志を燃やしていた。