潜入
エピソード1
海面を豪快に走る中型船が、とある無人島に訪れた。
「今日はこの無人島でキャンプをするでガス」
この細男はドット団のNo.2である。他の団員は、口癖から『ガス』と呼ばれている。
ドット団の目的の町まであと2日は要するので、この島で一泊のキャンプをする予定である。
船が無人島に上陸して直ぐに、この船で1番豪華な部屋から一人の男が肩を揺らしながら現れた…
「よし!お前ら」「よく聞け」「今からこの無人島で宴を開催する!」「奴隷のガキと、船の見張り2人をこの船に残し」「それ以外は、この島での宴の準備だ」「オレは船長室で今後の作戦を練る」「宴の準備がだできたら、呼びにこい」
この偉そうな男こそ、ドット団のボス『ドス』その人である。
チョコはその様子を他の団員と一緒に拝聴していた。するとチョコ目の前にドット団のNo.3で口癖が『ダス』の大男、ダスが船から降りようとしていた。
「あのー」「すみませんダスさん!」
「!?」
「何のようダス?」「新入り!」チョコの問いかけに、明らかにめんどくさそうな表情をしていた。
「聞きたいことがあるんですけど、お話宜しいですか?」チョコは、下手に出つつ会話の主導権を握ろうとしていた。
「お前のことは信用するなってボスに言われてる…」
「だから何も教えれる事は無いダス」ダスは口をへの字にし、チョコとの会話を拒んでしまった。
「そんなこと言わずに…話だけども」「あの…これダスさんの大好物のバナナです…」チョコは今日の昼ごはんに出たバナナをダスさんの為に残しておいたのだった。
チョコは何かあった時の為に、他の団員からダスの好物を聞いていたのであった。
「うまそうなバナナじゃないか」「……」ダスは、周りに他の人間がいないことを確認した。「何が聞きたいでダス?」
ダスはバナナに釣られてチョコの話に乗ってしまった…
「あのですねー」「謎の少年が持ってた」「棒みたいな物って」「今どこにあるんですかねー?」チョコは、謙りながらダスに問いかけた。
「あー」「あの汚い棒か?」「価値が無さそうだからって、吊り目のジルにあげた」「ってボスが言ってたダス」
「ちなみに何処にいるんですか?」「ジルは?」
「そこまで知るかダス」ダスはバナナをチョコからぶんどり、意気揚々と島へ降りていった。
チョコは、船から降りる団員を一人一人見定めていた…その時…吊り目の男がチョコの前に現れた。
ー きっとコイツが吊り目のジルだ。すぐに見つかった。ラッキー
「おい新入り!」「上からの命令だ」「一番下っ端の俺と、お前でこの船の見張りだ」「前は船の甲板」「俺は牢屋にいる、奴隷の見張り」「いいか!1時間したら交代だ」「1時間経ったらお前から呼びに来い」
「はい了解しました!」チョコは、ジルに命令され一旦持ち場についた。
…そして1時間後
チョコは、牢屋で仕事をしている筈の、ジルの所にやって来た。するとジル横になって仕事をサボっていた。
「あのー先輩」「交代の時間ですよー」
「もうそんな時間か?」ジルは気だるそうに起き上がった…
ー チョコはジルと交渉するなら今だと思い、話しかけた。
「先輩?」「ボスから貰った汚い棒って今持ってますか?」
「あーアレか?」「俺が色々と棒をいじっていたら」「音が出る笛だって気がついたんだ…」「そんな俺を見て、ボスは俺から笛を横取りしたんだ」「汚い棒じゃないって気が付いたからだよ」「意味わかんねーよな」「一回俺にあげたんだぜ」ジルは、悔しそうな表情でチョコに同情を求めた。
「じゃあ先輩はもう笛を持ってないんですね!?」
「あー持ってないぜ」
チョコは唇を噛み、とても悔しがった。
ー くそー。簡単に笛を手に入れられると思ったのに。
ジルは少し間をおいて答えた。「…」「そんなに欲しいのか?」「あの笛?」「何とかしようか?」
「え?」「何とかできるんですか?」チョコは食い気味に答えた。
「それなら船長室ある、葉巻を一本盗んで来てくれ」
「葉巻ですか?「しかも一本?」
「葉巻は良い値段がするし、中々手に入る品物じゃないんだ!」「俺は葉巻を吸う人に憧れてるんだ」「格好良くないか?」ジルは目を輝かしていた。
「あと、一本だけなら団長にバレないでしょ」「あの人頭悪そうだし」
ジルは周りに、他の人間が居ない事をいい事に言いたい放題だった。「あと、お前が欲しがってる笛も絶対に船長室にあるよ」
「でもどうやって船長室に侵入するの?」
「それなら大丈夫」「あと少しで、ボスを島にいる奴らが呼びに来るから」「団長の留守中に侵入すれば大丈夫だ」
「俺と協力して、お互いに欲しいもの盗んじゃおうぜ」
「うーーん」少し考えたが、答えは既に決まっていた。「分かったわ!」「あなたの作戦に乗るわ」チョコは腹を決めて、泥棒を演じる事を決断した。
「よし!交渉成立だ」
…30分後にボスから連絡があり、甲板まで呼び出された。「おい!お前たち」「俺はこれから島で宴に参加してくる」「お前たちはこの船の警備をしていろ!」
「はい!」「了解しました」チョコとジルは団長に敬礼した…
「……」「よし作戦開始だ!」
「そういえば部屋の鍵どうするの?」チョコは鍵のことをすっかり忘れていた。
ジルは、ニヤニヤしながら自分のポケットに手を掛けた。するとジルはポケットから針金を取り出した。「ポッキングだ!」「俺は元々泥棒だったんだ」「色々あってこのドット団に流れ着いたんだ…」
ジルは、取り出した針金を器量に使いこなし。船長室の扉の鍵に針金を入れた…
ー ジルは、あっという間に作業を終えた…ジルの手捌きはとても素早かった。
「よし!終わった」ジルは15秒ほどで、船長室の扉を開けた…
「あなた!すごいわね」「こんな特技隠し持っていたのね」けして褒められたものではないが、チョコはジルに感心してしまった。
「よし!これで第一関門突破だ」「俺が船の外で見張ってるから」「その隙に船長室に侵入しろ」ジルはとても頼もしく見えた。
「よし!やるわよー」チョコは気合を入れて、船長室の扉に手を掛けた…