強さの意味
エピシード5
タロウ達が、ドーナツ島にやって来て半年が経過したある日…
「やっと倒したぞー!」「三人がかりでやっとだけどな…」「やっと肉が食えるぞ!」
タロウ・ジロウ・サイゼの三人は力を合わせて、虎ガエルを仕留めたのである。
三人は命の大切さを心に刻み、虎ガエルの屍に手を合わせた…
「よし!帰るか」「カエルだけに!」タロウは、この半年でギャグも身に付けたのである。
「しょうもな!」「さっさと帰るぞ」「カエルだけに!」ジロウもタロウに負けじと『てんどん』をした。
「……」その様子をツッコまずに、静かに見守るサイゼであった…
時刻は夕方…三人の拠点である『塔 シーワン』に帰ってきたタロウ達。すると、塔の入り口から無性に食欲をそそる匂いがタロウ達の嗅覚を刺激してきた。
『バッタン』
「帰ったぞー」「やっと肉が取れたぞ」タロウが一番に塔の中に入ってきた。すると、塔の中には、一人の女性が料理をしていた。
「おかえりー」「あ!この島に来て、初めてのお肉ね」「今日はカエル肉のステーキにするね」タロウ達を出迎えてくれたのは、エプロン姿のチョコであった。
するとタロウの後ろから、怒鳴り声が聞こえた「おいタロウ!ふざけるな」「本当最後までこのカエル運ばなかったな」そこには、捕まえた巨大な虎ガエルをジロウとサイゼが二人がかりで運んでいた。
「別に良いだろ!」「トドメを刺したオレが手ぶらなのは当然だろ」
その言葉を聞き、ジロウは運んでいた虎ガエルをサイゼ一人に押し付けた。そして塔の入り口に立っていたタロウに飛びかかった『ボカ』『ボカボカ』二人は殴り合いの喧嘩してしまった。
「また始まった!」「この島に来て仲良くなった反面」「喧嘩もするようになっちゃったわよね」「きっと二人はライバル関係なのね」「まったくもう」
チョコは、このような光景を毎日目の当たりにしていた。「流石に見慣れちゃったわ」チョコはため息を漏らした…
時間が過ぎ…夜になった…
カーさん以外の五人は食事を食事を終え、談笑をしていた。
「意外と早く虎ガエルまで辿り着いたね」「けど、一人一体はAASを倒せないとね」「まだまだ道のりは厳しいよ」
「押忍」狩に出かけた三人は、一緒に食事をしていたゼントに叱咤激励を受けていた。
そこに、後片付けを終えたチョコが話に入ってきた…
「やっとこの島の動物を狩る事が出来たって事は」「この世界の事を色々と教えてくれるんでしょ?」
チョコは、タロウ達と一緒に勉強をしていたが。勉強に使用している本には、体の仕組みについて本や植物図鑑・動物図鑑などが殆どであった。ましてや世界の歴史などの文献は一切見つからなかった…
するとチョコは、真剣な表情でゼントに質問を投げ掛けた
「そろそろ<鎖>ついて教えて欲しいんだけど…」
チョコが思い切ってゼントに質問をした時…
上の階にいたカーさんが1階に降りてきた。「おー!お前達」「やっと生き物を狩る事に成功したのか?」
カーさんは、ニコニコした表情でタロウ達に近づいた。
「オレが最後の一撃を喰らわした事によって」「倒す事が出来たんだ」タロウが自慢げにカーさんに報告すると、またしてもジロウがキレ始めた。
「あはは」「お前ら相変わらずだな」「所で何の話をしていたんだ…」
カーさんの質問にチョコが答えた。「この世界の人間全てに存在する」「<鎖>について質問してたんです」
「この<鎖>って一体、何なんですか?」チョコが、カーさんに確信をつく質問を投げ掛けた…
「あれは『呪い』だ…」
「全ての人間を呪い」「身体能力・知能の活性を抑制する物だ」
チョコは、カーさんの言葉一つ一つを耳にする度に、表情が曇っていった…そして一つの疑問が頭を過った。
「あの…身体能力の抑制って、例えば…」「病気になりやすいとかですか?」「……」最後の質問中に、チョコに笑顔は無かった…
「ああそうだ」「怪我も治り難い・病気も治り難い」カーさんは、淡々と説明を続きた。
「何で!?」「何でそんな仕打ちを…」「私たちが何をしたって言うの?」
「…」「それは、全部国民の為だ」「そう!<鎖>を考えたのはワシだ」「そしてワシが人間全員に<鎖>を付けた…」
『!?!?』チョコが急に立ち上がった………
『ダダダダ』『…グッサリ』
『!!!』次の瞬間、カーさんがチョコにナイフで刺された…
『!1??!?』タロウ・ジロウ・サイゼは今起きた現実に、目を疑った。
「うーー」「貴方のせいで…」「貴方のせいで…」「私の家族は…」「私のお姉ちゃんは、貴方のせいで…」「死ぬかも知れないのよ」
チョコは泣きながら、仲間達に隠していた思いを吐露した。
そしてチョコは下を向いたまま、一人塔から飛び出してしまった…
「おい!チョコ!」「外は危険だ」「行くな!!」チョコの言動を目の当たりにした、タロウとジロウは夜の外に飛び出したチョコを追いかける為、同じく外に飛び出した…
「何でこんな事に?」「…ゼント?」「なんでカーさんを助けなかった?」「お前だったら助けれたはずなのに」
「……」ゼントはナイフが刺さったカーさんを抱き抱えると。無言で立ち尽くしていた…
「みんなバカだ…」サイゼも外に飛び出したチョコを追いかに外に飛び出した…
サイゼが島から出ている橋を渡り、行き止まりの壁までやってきた。するとそこにはチョコの名前を叫びながら、チョコを探すタロウとジロウの姿があった。
「チョコは?」ジロウはサイゼの質問に首を横に振り、今いる中央エリアにチョコがいない事をサイゼに伝えた。
「探そう!」「きっとチョコは、三つある出口のどれかから出てったんだ」「わかった探そう」
タロウ達は危険なジャングルに迷わず進んだ…三人は単独でそれぞれのルートへ猛進した…
チョコは探していた三人は、不思議な光景を目の当たりにした。タロウ達の目の前に、この島では滅多に居ないというお尻が発光した小型の昆虫が現れた。三人はなぜかその虫に導かれるように、足が動いていた。
「チョコ…無事でいてくれ」
すると、タロウ達の目の前に。見た事にない遺跡が現れた。そこには開けた空間があり、昔人間が住んでいた痕跡があった。
そこにはジャングルの動物の気配は無かった…
今日は満月であった…遺跡には広場がありそこには石でできた台座があった。その台座の上に、月明かりに照らされたいたチョコが。
泣きながら体育座りをしていた。
タロウ達はほぼ同時に、光る虫に案内され遺跡までやてくる事ができた。「あの虫は何だたんだ?」「一回もAASに会わずにここまで来れたぞ?」
タロウが泣いているチョコの前にやって来た。「家に帰るぞ」タロウはチョコを責める事なく、一緒に帰ろう!と促した。
「もう…あそこには帰れない」「きっとカーさんを殺しちゃったから?」「私はここで動物に食べられて死ぬわ」
チョコは気が動転したとはいえ、カーさんを刺した事を悔いていた。
すると、ジロウ・サイゼもやって来た。「死ぬ必要ないぜ」「多分カーは、わざと避けなかった」「ゼントはカーの指示で助ける事をしなかったんだ」
ジロウはあの場面で冷静に状況を把握していた。
するとそこに、たいまつを持ったゼントが遅れて現れた。そして遺跡にある柱にたいまつを置いた。
「みんなよくこの場所に辿り着いたね」「この場所は、遥か昔に人間が住んでいた集落があった場所だよ」
「そして今は、死んだ人間の魂が眠る場所なんだ」
すると突然ゼントの背中からナイフで刺された筈のカーさんが現れたのであった。
「カーちゃん?」「死んだはずじゃ?」タロウは先ほどナイフで腹を刺されたカーさんの存在に驚いた。
「死んでねーよ」「勝手に殺すな!」そこには、先ほどナイフで刺されて動けなくなっていたカーさんが何事もなかったかの様に喋り始めた。
「何で生きたんだ?」「カーお前何者だよ?」ジロウはカーさんの存在に恐怖した。
「俺は死なないよ」「いや!死ねないんだ」「だからチョコ!」「お前は人殺しでも何でもない」
「だからワシの事は気にするな」
「……」
「この体は…」「俺の罰なんだ…」
カーさんの発言にチョコは、言葉を失った。
「チョコ…」「お前の気持ちはよく分かる」「そして俺を許さなくていい」「けど、お前はお前自身を許してやれ」
「これは命令だ」カーさんはニコッと笑い。チョコの前に現れ、小さい体でチョコを抱きしめた…
「ここは危険だ」「一旦家に帰るぞ!」「話の続きはその後だ!」
カーさんがそう告げると。泣いているチョコをゼントがおぶり、全員で『塔』に帰った…
「本当にすみませんでした…」「何も考えずに攻撃して」チョコはやっと泣き止み、冷静さを取り戻した。
「じゃあ話の続きをするか?…」「この<鎖>はある目的のために作られた」「それは’敵’を封印するためだ…」
「敵?」「封印?」タロウ達は、謎の登場人物に驚いた。
「ヤツはこの世界の人間の1番の敵だ!」「そして当時の人間は、ヤツに殺され」「人口は⅓まで減ってしまった」
「そして俺は、当時の仲間と共に」「ヤツを封印した」「そして、封印を維持するために」「この<鎖>を作った」
「そして、結果的に俺はお前達を苦しめてしまった…」
この話の途中で、ずっとカーさんの事について無言を貫いていたゼントが話し始めた。
「どうか、カーさんを責めないで欲しい」「それしか方法がなかったんだ。」
「ゼント!ワシを擁護しなくいい」「ワシはあの時からワシに対する恨みを全て受け入れると誓ったんだ」
「理由は何であれ<鎖>で人間に縛り付けたワシは罰を受けた…」「そう…もうシワもう人間ではない」「ましてや動物でもない」「ワシはただの死ねない人形なんだ…」
「うあわーーん」「ごめんなさい」「何も知らずにカーさんに、あんな事を!」チョコはかーさんの話を聞きまた泣きだしてしまった…
ー また泣いてしまったチョコを、全員は泣きあむまで待ってあげた。
泣き止んだチョコは、深呼吸をした。気持ちが落ち着いた時、カーさんに質問をした
「敵を封印するための、<鎖>なのは理解できたんだけど」「何でみんなに黙っているの?」「<鎖>の意味を知ればみんな理解してくれるはずよ」
チョコは、何故秘密を隠していたか気になった。
「それは、<鎖>が謎だから意味があるんだ」「この<鎖>は呪いだ」「それは人間にとっても、敵にとってもだ」
「人間は自分に何が起きているかが」「解らなく、なればなるほど不安になり」「結果<鎖>の効果が強くなるんだ」
「そして俺たちは、世界の歴史を隠した」「人間達の不安・怒り・恐怖を使い」「ヤツを動けなくした」
「<鎖>のもう一つの意味は…」「チョコに説明した、人間の能力をセーブする力だ」
「<鎖>のある人間、一人一人の能力低下を生贄に封印を強くしている」
「人間が強くなったり、賢くなると」「<鎖>の形が変化する」「そして変化する度に封印の力が衰える」「だから、この世界には一般人に勉強を教える場所や本・強くなるための施設がないのだ」
「選ばれ者にしか<鎖>を緩めさせてはならないんだ」
「国民に秘密にしている事は申し訳ないと思っている」「しかし、ワシらはヤツに滅ぼされてはいないにのだ」
「この世界を守るためにも…」「奴に反撃をするその時まで…」
「だから、ワシは人間に恨まれてもいい…」「ワシの知恵や弟子達の力で人間を守ることが出来るのであれば…」
カーさんは、タロウ達が考えている以上の罪の十字架を背負って生きていたのだ…
タロウ達はこの日を境に、強くなる意味・賢くなる理由を胸に。この島での成長を誓ったのである。
つづく…




