船旅にはご用心
エピソード5
ここは何処かの砂浜…一定のリズムで波が寄せては返す…寄せては返す。
一人の少年が、きめ細かい砂が一面に広がる砂浜に打ち上げられていた…
彼の周りには、様々な漂流物も流れ着いていた。その漂流物に中に一際目立つゴム素材で出来た、黄色い破片が落ちていた…
『ざぶーーん』『ざぶん』『……』ある日の朝…小波が浜辺に打ち寄せる波音が、一人の少年の眠りを覚まさせた。
「いてぃてぃてぃてぃ…」倒れ込んでいた少年が、目を覚まし、ゆっくりと起きあがった。
「こ…ここわ」「どこだ…」少年は、今自分が置かれている現状を理解出来ずにいた。
立ち上がった少年は、直ぐに我に返った。
「そう言えば、アイツらはどこ行った?」少年は周りを見渡して見たが、海岸には人の気配が無かった…あるのは見知らぬ小型のボートだけであった。
少年はふと目を閉じ、自分に起きた出来事を思い出してみた…
一隻のボートが海上を勢いよく進んでいた。そのボートには5人の若者が乗船していた。
エンジンで走るその船は、海の上を滑るように進み。時には大きく揺れながら、水しぶき飛ばしながら進んでもいた。
するとグレーの髪色の少年『ジロウ』が船外機を操作している青年?『ゼント』に声をかけた。
「そう言えば」「目的地の島までどれくらい掛かるんだ?」
「何もトラブルが無ければ」「6時間かな」「日が落ちるまでには着けると思うよ」
ジロウは、ゼントの『トラブル』という言葉に多少の疑問を抱きつつも、特に気にせず目的地の方角を見据えた…
船が海岸を出港して4時間ほど経った経過した時…ボートに乗船していた女の子のチョコが、ボートの違和感に気が付いた。
「なんかこの船…沈んでない?」
「そんなわけないだろ?」チョコの発言を軽く流すその他の乗客。
その会話の3秒後…乗客の一人『サイゼ』が自分座っている席の足元にある違和感に気づいた。
「……」「…水だ」「水が漏れてる」『!!!』サイゼの発言にボートの持ち主であるゼントが焦った。
「やっぱりダメだったか?」「ごめん!すっかり忘れていたよ」「このボートは…」「四人乗りなんだ」「しかも船自体が30年前のものなんだ」
ゼントの解説中には、ゆっくりと船に海水が侵入して来ていた…
「君たち!何でもいいから」「ボートに侵入してくる水を」「外にスクイ出してくれ!」たまらず焦り出したゼント。
チョコは、ゼントが自分を島に招き入れる想定に入っていなかった事がしっくりきた。
チョコは、自分の履いていた靴をバケツがわりにして船の中に侵入してくる海水を船外へ捨て出した…
しかしその努力も虚しく、ボートに侵入してくる海水は増える一方であった。
その様を見ていたゼントは、船外機の操縦をやめ…ボートに備え付けてあったオールを二つ持ち出した…
「こうなったら」「ボートが沈む前に」「目的地の島まで移動するよ」
チョコはゼントの言っている意味が理解出来なかった
するとゼントは『スーーー』っと深呼吸をし。集中力を高めた。
『はっ』ゼントが気合を入れた瞬間…ゼントはオールをとてつもないスピードとパワーで漕ぎ始めた。
『ドドドド』
ボートに搭載してるエンジンよりもスピードとパワーが出ていた。しかも船には5人の人間が乗っているのにも関わらずだ…
チョコは、数時間前にコロッセから近くの海岸まで4人を担ぎ。超スピードで移動した時のことを思い出した。
その時は、ゼントの周りからオーラの様なものが溢れ出し。担いでいた4人の周りに包み込むように流れ込んでいた。
今回もそのオーラがゼントの頭の先からオールの先まで纏っていた。
チョコはこの人について来れて本当に良かったし、運が良かったと心の底から思った…
が!その数分後には、またしても事件が起きた…
物凄いスピードで移動していたため、船が沈む前に目的地の島が見えてきたのである…
今現在、全員が乗っている船は。ゼントが漕いでいる場所が海面に着き、前方向に行くにつれ海面から浮いていた。
島が見えて来た事を伝えられたゼントは気が緩んでしまった…そして次の瞬間…チョコの悲鳴が聞こえた。
「きゃーー」「ぶつかるーー」何と!全速力で直進していたボートの目の前に。ボートの四角になる様に、目の前に鋭い岩が立ち塞がっていた。
『ドッカーーーン』そして、気づいた頃には岩とボートは物凄い勢いで正面衝突していた。
チョコとタロウは、前にもあったな同じ事!と思い出していた。そしてチョコは涙を流しながら、タロウ・ジロウ・サイゼ・ゼントと共に空の彼方に飛んで行ったのであった…
そして、日を跨いだ朝…タロウは一人。現在の島に漂流していたのであった…
「みんなとはバラバラになっちゃったな」「どうするかな…」『グーーー』
タロウは12時間以上何も口にしていなかったので、とにかく腹が減っていた。
「食べれる物でも探すかな?」タロウは周りを見渡してみると、何処までも続く砂浜…奥には危険の香りがプンプンするジャングルがあった。何よりも、目の前に人間が乗って来たであろう船が視界に入った。
「オレの他に人間がいるみたいだな?この島は?」「あと、この森の中はジャングルっぽいから」「絶対オレが有利だろこれ」タロウは人間が未開拓だったジャングルに13年も住んでいたのだ。そのため自分が住んでいないジャングルでも生きて行ける自信があった。
「ジャングル探索の前に、腹ごしらえだな?」タロウは近くにヤシの木を見つけ、俊敏に木に登り。ヤシの木から実をもぎ取ると、その場で自分の人差し指をヤシの実にブッ刺し。飲み口を作った。
そして、上を向き。大きく開いた口に実の中に詰まった液体を流し込んだ。
「プッハー」「甘くてうまいなこれ」タロウは疲れた体に糖分を摂取し、ジャングル探検の前にコンディションを整えた。
「そう言えば」「角笛!チョコに預けたままだったな?」「今のオレなら角笛がなくても大丈夫なくらい…」「強くなったから」「このジャングルくらい何とかなるだろ…」
タロウは、明らかにこの島のジャングルの事を軽視していた…
タロウは知らない…この島の異名を…
この島の名前はドーナツ島…この島の異名は、『人間を滅ぼした生き物の楽園』である…
タロウはこの島を攻略し、逸れた仲間と再会できるのであろうか…




