モブは自分を呑み込んだ!
◇◇◇
(ッええい!! 悩んでいても仕方ない!!)
俺は自らの尾の先を、自らの口元へと持っていく。
ピロピロと舌で舐めてみる。
う〜ん、くすぐったい。
俺はその感覚に、やはりこれは自分の身体なんだと理解する。
(いや、これは……もしかしなくても噛んだら痛いよな……)
勢いで牙を突き立てなくてよかった。
歯……立てんなよ? ってやつだ。
蛇様の尾っぽは丁重に扱わないとね。ふふふ。
これは、“丸呑み”一択ですな。
……パクリ。
俺は、自分の尾の先を口で咥えた。
……ちゅるる。
そして、恐る恐る飲み込んでいく。
(別に美味くはない。美味くはないが……)
……ジュルルルルル。
(お……? おお……)
自分でも気がつかないうちに、よほど腹が減っていたのだろうか? 喉の奥へ奥へと自然に身体が吸い込まれていく……
(すごい。なんかものすごくしっくりくる……と、いうか)
ズロロロロロロロ……
(止まらん。 これがやめられない止まらないッてやつか……ん?)
その時、俺は自分の身体に生じている違和感に気がついた。
ミチミチミチミチ……
(あれ? なんか呑み込んだ端から、逆に身体大きくなってない??)
そう、自分の身体を呑み込んでも、普通ならプラマイゼロ。体積値としてはイコールのはずだ。だが……
ミチミチミチミチミチイィッ!!
俺の身体はどんどんと卵の中いっぱいに膨らんでいく。
(あ、ヤバい。そろそろ……)
ズロロロロロロロロロロロロ……
(狭い……)
ズロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ……
ギチギチギチギチギチギチギチギチッ……
(狭い狭い狭い狭い狭い狭い狭い狭いぃいいいい!!!!!!)
ミシッ……ミシミシミシッ……
(ッ痛い!! いまなんか骨から変な音したし!!)
ベキッ!! バキボキボキベキッ!!
(ッちょ!! 痛い痛い痛い痛いぃいいいい!!!!)
ぐぐぐぐ……ゴリゴリゴリッ!!
骨が折れた端から繋がっていく、みるみると身体が再構築されていくのを感じる。その間も、俺の身体はどんどん卵の中で大きくなっている。
正直俺は、頭の中ではこれ以上“自分”を呑み込み続けるのは危険だと思っている。
だが、邪竜としての……ウロボロスとしての本能が、身体を呑み込むのを止めようとしない。
ミチミチミチミチミチミチミチミチミチミチイイイイッ!!!!
(おおお……!! もう……これはッ!!)
このままでは“圧死”してしまう!! そう俺が思った次の瞬間──
──ピシッ
メキメキメキ……
ズガァァアアアン!!!!
もの凄い音を立てて、俺の卵は弾け飛んだ
◇◇◇




