表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブ転生〜ザコで影薄くてトラブル体質だけど、種族値ボーナスと鑑定あるから何とかなるかもしれん〜  作者: やご八郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/62

激闘の後で……

 ◇◇◇


 デュモスを退けた俺は、隣で虚空を見つめるアシェルを見遣る。アシェルは満身創痍ではあったが意識を失うことなく、ただその場に仰向けに倒れ込んでいた。そして、その視線はアシェルとの戦いで俺が呑み込んだ、祠のあった場所へと真っ直ぐに向けられている。


「アシェル……何を思っている?」


 俺はその横顔に向かって問いかける。


「……妻と息子のこと。そして、俺が自分勝手に殺めた数々の罪なき人間のことだ。俺は……随分と人を殺めてしまったようだ……。デュモスに洗脳されていた時の記憶を、いまならしっかりと思い出せる。この少女を含めて、お前の仲間たちにも酷いことをしたな……すまなかった」


 そう言ってアシェルは起き上がろうとするが、上手く力が入らないようだ。それもそのはずである。サンディの身体は、デュモスの魔力によって限界以上に酷使されていた。身体中の筋繊維がボロボロになっているはずで、普通なら激痛で話すことさえできないだろう。


「いや、別に俺はその娘の仲間じゃない。ただの通りすがりだ。だから許すとは言えないが……お前が今もその身体に憑依しているのは、その娘、サンディに痛みを感じさせないためだろう? 流石は英雄だな」


 もはや、指先さえ動かせない身体に憑依を続けても、アシェルにとっては苦痛を感じるだけで何のメリットもない。


 だが、アシェルはサンディの身体に留まっている。


 これは、サンディに対するアシェルなりの謝罪なのだろう。


「はは……英雄なんて評価は少々重すぎるな。俺は単なる賊だ。好きに生きて、そして、結局は何も果たせず死んだ。妻と子のために……魂を悪魔に委ねた愚か者だよ。そう言うお前こそ……ああ、まだ名前を聞いていなかったな。名は何というのだ?」


 アシェルは時折苦痛に顔を歪めつつ、しかしそれを感じさせないほど穏やかな口調で話す。


「俺は名をトモエという。アシェル、傷に障るからもう喋らなくていい。これからまず、その子を治療する。そのまましばらく憑依しておいてくれないか?」


「……わかった……元よりこの身体が癒えるまではそうしているつもりだった。お前……トモエは見たことのない術を使っていたが、やはり聖職者なのか? まさか癒しの奇跡(ヒーリング)まで扱えるとはな……」


 アシェルは眼差しだけで頷くと、そう言って目を閉じた。


 俺はスキルを使い、アシェルごとサンディの身体を異空間に取り込んでいく。その間も、アシェルは何ら抵抗することはなかった。


 サンディの身体の状態を確認するが、再構築は問題なくできそうである。


 それに……どうにか()()も間に合いそうだ。


 俺は目を閉じ、ゆっくりと()()()()()の中へと潜り込んでいく。


 ◇◇◇

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] モブお疲れ様でしたー! 無事勝てたので安心しました! 最初は悪と思っていたファムザがこんなに優しい人だったとは…泣けるぜ……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ