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モブ転生〜ザコで影薄くてトラブル体質だけど、種族値ボーナスと鑑定あるから何とかなるかもしれん〜  作者: やご八郎


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モブは天使に教えてもらう(その2)

 ◇◇◇


(そっちの説明は後だ、まずはいま飲み込んだ獣人の治療を優先したい。ウロボロスには呑み込んだものの傷を癒すチカラがある筈だ。その方法を俺に教えてくれ、ラブリエル)


 俺は脳内でラブリエルに懇願する。


『ぇえ……ッ!? なんでそれを……あ、鑑定ですね!? も〜〜、本当にチートだなあ。確かにウロボロスは呑み込んだ対象を再構築……治療して吐き出すチカラを有していますけれど、萌文様のレベルではまだ使えませんよ?』


(……ッ!! そうか……)


 ラブリエルの解答に、俺は落胆を隠せない。


「トモエ……大丈夫? 何とかなりそう?」


 コブという獣人の少年を呑み込んでから黙り込んだ俺を心配して、セレーネが声を掛けてきた。


 俺は小さく微笑んで首を横に振る。その様子を見たセレーネも、悲痛な顔で肩を落とした。


 続けてラブリエルは俺に告げる。


『ええ、ご期待に沿えず申し訳ないですが……どうやらせっかく吸収した苔ウサギ達も吐き出されてしまったようですし……レベルが下がったのはそのためですね?』


(そうだ。ここにいる友を得るために、苔ウサギ達は解放した)


『わかります。そちらのはぐれ苔ウサギは萌文様をとても信頼しているようですから、その選択が間違っているとは思っておりません。ただ……』


 思念上の会話ではあるが、そこまで言葉にしたラブリエルが難しい表情をしていることはよくわかった。


 躊躇いがちに彼女は続ける。


『萌文様は龍種としては間違いなく“弱者”です。より弱き者たちは無数におりますが、そのような事ばかりしていてはいつか()()()()()に命を奪われてしまいますよ? その優しさ故に萌文様は転生の機会を得ましたが、前世で命を失ったのもまた、その優しさ故です。努努(ゆめゆめ)お忘れなきよう』


 ラブリエルの忠言は尤もだった。

 だとしても、俺は自分の言葉を違えたくない。俺を信じて、今も必死に友の回復を祈っている少年がいる。


 この世界に祈りで叶う奇跡があるかどうかなんて知らないし、俺は神じゃない。魔女を名乗っている弱い龍でしかない。


(わかっているさ、ラブリエル。心配してくれてありがとう)


 でも、俺にできることであれば叶えてやりたい。いまは、この小さな命を救うためにチカラを尽くしたい。


『はぁ。三つ子の魂はなんとやらと申しますが……頑固ですねぇ。まあ、そんな性格を知って萌文様を転生させたのも私ですからね……わかりました。知恵をお貸ししましょう』


(本当か!? 感謝するぜラブリエル、じゃあ教えてくれ。そのスキルを覚えるのに必要なことと、一番の近道はなんだ?)


『具体的にはレベルを8以上まで上げる必要があります。近道はもちろん、魔物を倒すか飲み込むことです。もっと言えば、そちらのはぐれ苔ウサギを一呑みにすることが一番の近道でしょうね』


(……ッな!? それは無理だ)


 ラブリエルの答えは、到底俺が呑める条件とは言えなかった。

 俺は無い肩をガクリと落とす。


『てへッ! なぁ〜んて、冗談に決まっているじゃないですか〜! 真に受けちゃいました?? ……あ、やめてやめて、中空を睨むのはやめて!!』


(こちらは真剣なんだ、頼むぜラブリエル……)


『ゴホンッ! さて、もうそろそろ私も時間がありません。まだ萌文様には早いかと思っていましたが……じゃあ、とっておきの“裏技”をお教えしちゃいましょうかね〜』


(裏技があるのか!?)


『ええ、要は()()()()()()()()()()()()()()()のです!! 萌文様はもう、どうすれば良いか心当たりがあるはずですよ?』


 ラブリエルの言葉に俺は混乱する。

 どういう意味だ? 一瞬だけレベルアップする方法?


 ……



『あれ……お忘れですか? 萌文様はもうこの方法を使って、一度窮地を脱しておりますけれども?』


 窮地を……俺がこの世界で死にかけた時なんてあったっけ……?


 俺はこの世界に転生してからの記憶を振り返る。転生してからというもの、割と楽しく生きてきたつもりでいる。ここ最近では思いあたる記憶がない。となると……


 そうか、俺が死にかけた時……わかったぞ!!


 卵から出られない事件だな!?


 つまり……


()()()()()()()()()()のか!!)


『大当たり〜〜! さっすが萌文様、大正解です!』


 俺が正解に至ったことにラブリエルの声は満足そうだったが、少しの間を開けた後、今度は少し声のトーンを下げて話し始めた。


『では最後に一つだけ。一度レベルが8まで到達したら、必ず尾を“吐き出して”ください。決して()()()()()()はいけませんよ。いまの萌文様では、きっと“戻れなく”なってしまいますから……』


 ラブリエルは不気味な警告を俺に残してその存在を消していく。


『まあ、今回は私がアシストするので大丈夫です。覚悟が決まったら尾を呑み込んでく──』


 実に中途半端なタイミングでラブリエルとの会話は途切れた。


(……くださいだな。わかったよ。ありがとう)


 いつにも増して役立つ情報を授けてくれた天使に心の中で感謝を述べつつ、俺は傍らの相棒に語りかける。


「見つけたぞ、コブを救う方法」


「本当!?」


「ああ、ちょっとグロいだろうから、あんまり見せたくはないけどな!」


「ッぇえ!? 何するの!?」


「いや、それは見ての……いや、見ないで期待しててくれると嬉しいかな」


 親友とはいえ、そう何度も口からモノを吐き出すところを見られたくはない。だって俺……いまとなっては女子高生(龍)だしな!


 ◇◇◇

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