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モブ転生〜ザコで影薄くてトラブル体質だけど、種族値ボーナスと鑑定あるから何とかなるかもしれん〜  作者: やご八郎


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強さとは何か

 ◇◇◇


「……いや、やめておく」


 セレーネの悲痛な顔を見て、俺は彼女の提案を否定した。


「え……なんで……?」


 セレーネはホッとした様な、しかしやはり納得していない様な顔をしている。


「私だって知ってる。いえ、この世界に生きてるものは皆んな知ってるわ。龍って、何より強さを重んじるんでしょう?」


 セレーネは続けてそう言った。


「はは。そういうことか……」


 ここで俺は、セレーネの提案の意味をようやく理解した。

 俺が寝込んでいる間に、彼女は色々と悩んでくれたのだろう。

 「仲間をもう一度食べろ」だなんて唐突な発言のように思えたが、これは彼女なりに龍を理解し、友達になるために歩み寄ろうとした上での結論だったのだ。


「セレーネ……確かに俺は、落ちこぼれなんて言われて、強くなりたいって気持ちは人一倍あるさ。せっかく龍に産まれてきたんだ。強くなって、色んなものを見返してやりたいって気持ちはあるよ。けどね……」


 俺はセレーネの目をしっかりと見つめながらこう告げた。


「初めてできた友人にそんな顔をさせてまで、強くなりたいわけじゃない」


「…………!!」


「セレーネ、俺を見くびらないで欲しい。俺は龍だ。お前達を食べ物として見ないと言った以上、俺は自分の言葉を曲げない。俺は苔ウサギ達を食べない」


 セレーネは目を見開いたまま固まっている。


「龍が一度した約束を違えることはない。それを守る強さがあるから、龍なんだ」


 ()()とは、レベルやステータスのことを指すのではない。


 自らの決断を、夢を、信念を、約束を、現実に変えるチカラのことだ。


 何より強さを重んじる龍が、その約束を違えることがあってはならないのだ。


「セレーネは俺の友達だ」


 俺は牙の裏に隠していた首飾りを取り出すと、ゆっくりとセレーネの首元にかけてやる。


「俺は、友達を傷つけるようなことはしない」


 俺がそう言うと、セレーネの大きな目からポロリと涙が溢れる。


 その雫は、彼女の胸元で光る紫の宝石と同じくらい美しかった。


 そして彼女は、ニッコリと微笑みながら言った。


「……うん!!」


 ◇◇◇

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