モブは鑑定を使ってみた
◇◇◇
チチチチチチ……
キーキーキー……
鳥のさえずりのようなものが聞こえる。
(ん〜〜、……お、もう朝か?)
俺は目を開け、空を見上げる。異世界の空は地球と同じで青かった。とりあえず、何事もなく夜を越せたようだ。
グギュルル〜〜……
(なんだか、お腹減ったなぁ)
考えてみれば、この世界に来てからどれくらい経過したのかあまり判然としないが、自分の尾以外にはまだ何も口にしていない。
実際、尾の方は吐き出してしまった(?)から、何も食べていないというのは間違っていないだろう。
(さて、何処かに何か食べられるものは……)
俺は谷底をスルスルと滑るようにして進んでいく。
◇◇◇
(……お? 何かいるな?)
岩影の向こうに、他よりも暗くて苔が沢山生えている場所がある。こちらに背を向けてむしゃむしゃと食事をしているのは、ウサギのような長い耳を持った生き物だ。背中には同じく苔が生えており、なんだか汚らしく見える。
(おお……なんだ? ウサギか?)
俺は目の前の生き物を注意深く観察する。
キュィン……ポワン
そんな音と共に、ウサギの周りにロックオン表示の様な輪っかがついたと思えば、俺の視界にウィンドウが立ち上がる。
(っひえ!)
思わず驚いてビクリと震えた俺に気がつくと、ウサギは一目散に逃げていった。
(……ああ、俺の初めての食事が……)
俺はとほほと肩を落とす。まあ、肩なんてないけどね! 蛇だし!
(さてさて、なんだこれは?)
ウィンドウの上部には《鑑定結果.Lv1》と表示されている。
俺は続けて、そこに書いてある情報を読む。
《鑑定結果.Lv1》
種族:獣種
名前:──
強さ:とても弱い
(情報量少なッ!! びっくりするくらい要らない情報ばっかりじゃねーか!!)
俺は余りに意味のない情報に呆れつつ、書かれているLv1の文字に注目する。
(これは……もしかしなくてもアレだよな? ラブリエルもあるって言っていたし……)
そう、コレはおそらくレベルだ。
それも、所謂スキルレベルというやつだ。使用回数やら何かに応じて上がっていくものなのだろう。
と、いうことは……。
(使いまくるしかねぇッ!! よくわからないけど、もしかしたら経験値貯まって強くなれる可能性があるからな!!)
ひとまず、今後の方針が決まった。
(とはいえ、アレだな。まずは何か食べたいね)
俺は引き続き、さっきのウサギを探すのであった。
◇◇◇




