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戦闘狂世界を渡る。  作者: 南十字
最終章 [安らかな日々に]
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六十七話 戦闘狂、世界を眺める

今回が最終回です!

ここまで読んでくださり、ありがとうございます!

「お別れですか」


 朝、お姉さんが起きてすぐに俺に話しかける。


「絶対に顔は出してくださいね」


「一年に一度は必ず出すよ」


「半年でも良いですよ」


「じゃあお姉さんにとことん甘えようかな」


「そうしてください」


 昨日まとめておいた荷物を手に取ってドアを開ける。

 外に出ると、清々しい秋の風が肌を撫でる。


「もう一年が終わるのか」


「気がつけばってかんじね」


 年々早まる時間に侘しさを覚える。


「最近は平和だからね。余計早く感じるよ」


 まだ息は白くならないが、肌寒いと思わず息を強く吐いてしまう。



 あっという間に街門に着いてしまう。

 街門には知人や信者、顔も知らない人達が溢れていた。


「いっぱいだな」


「当たり前ですよ。英雄の旅立ちですから」


「これからするのは隠居ですけどね」


 人の群れからルークが駆け寄ってくる。


「凄い人っスね」


「祭りみたいだな」


「雰囲気は葬式ですけどね」


 英雄、女神である俺が居なくなるため、心の拠り所が居なくなるのだ。

 不安も募ることだろう。



 何か一言あっても良いかもな。



 俺は群衆に向かって声を上げる。


「皆さん。私は今、旅立ちます。しかし、決してこの街を見捨てる訳ではありません。この街に女神の加護を授けましょう」


 もう何度やったか分からない炎の花弁を散らしてやる。


「ありがたやありがたや」


「やはり尊い」


「美しい」


 コイツらチョロすぎだろ。

 詐欺とかすぐに信じちゃいそう。


「では、またいつか会える事を願います」


 そう言い残し、俺は空に飛び立つ。


「エンジさん!お元気で〜」


「エンジさ〜ん!偶には帰ってきてくださぁぁぁぁい!」


 お姉さんとルークの声が響き渡る。


「女神様!」


「お達者で!」


「尊い!」


 しかし、すぐに信者の声によってかき消されてしまった。


「さようなら!さようならー!」


 空中で振り返り、手を振りながら別れを告げる。



 すぐに街は地平線に吸い込まれて見えなくなり、自然豊かな地が広がる。


「よし!新しい生活の幕開けだ!」


 目まぐるしく変わる景色の中、ウィールデン王国が見えた。

 この距離だと豆粒程度だが、人々の姿が見える。

 例え俺の事が見えて無くても、ジェール達に手を振ってやろう。


「バイバーイ」


 うん!分からねぇ



 そんな事をしていると、ウィールデン王国の上空に大きな鯨が現れ、潮を一つ吹いた。



 あれはエールだな。

 なかなか粋な事をしやがって。



 大きな砂鯨に見送られ、俺はグングンとスピードを上げた。



――――――――――――――


「ふぅ、やっと着いた」


 俺は三日飛び続け、念願の城に辿り着いた。

 直接行くのは面白く無いので、少し手前から地上で行くことにした。



 歩く事数分、茂る薮を抜けた先には見上げる程の美しい白い城がどっしりと構えていた。


「すげぇ…」


 思わず言葉が出てしまう程に美しい城の足元には庭園があり、紅に色付く紅葉や黄金に輝く銀杏の木が生えていた。

 どの世界でも、木々の紅葉は美しい。



 庭園を散策すると、見覚えのある一本の桜の大木があった。


「アイツら…」


 その大木の根元には、質素な墓が一基あった。

 その墓にはボロボロの刀が供えてあった。

 墓には文字が刻まれており、それを見た瞬間に懐かしい思い出が脳裏に浮かんだ。


『女神様の仲間達。ルージュ•カーディナル クロウ•サーバット ホムラ 此処に眠る』


 その文字には、何処か優しさが感じられた。


「待たせたな。お前ら。これからはずっと側に居てやれる。安心しろ」


 両手を合わせて拝み、俺は城の中に行く事にした。


『エンジ、何で私の名前も刻まれてるの?』


「あぁ、あそこにはお前の肉体が埋められているからな。間違っては無いだろ?」


『ふ〜ん』


 ホムラさん、自分から聞いてきたのに何で興味無さげなんですかね。



 城の入り口が近づいてきた。

 城の入り口の左右には炎を形取った石が鈍く光っており、松明の代わりになっていた。



 城の入り口をくぐると中はかなり広くなっており、正面のカーペットの先には大きな階段があり、二階に行ける様になっていた。


「コレを一人で維持するのか…」


 起こりうる未来に背筋が凍る。



 しかし、先の事を考えていては城の中を散策出来ないので一旦考えるのをやめた。



 一階には大きな広間、客間、厨房、温泉があった。

 二階には小さな…と言っても一LDKは軽くあるような個室があり、最上部の三階には大きな一つの部屋があった。

 その部屋からベランダにでると辺りを一望でき、世界の雄大さを感じられた。


「此処で俺は暮らすのか。なんかワクワクするな」


 この先の暮らしは山あり谷あり困難ありだろう。

 その全てを受け入れ、俺はのんびりと暮らすんだ!


――――――――――――――――――


 パチパチと爆ぜる薪の音、安楽椅子に座って本を読む少女は、少女らしからぬ落ち着いた雰囲気を醸し出していた。



 少女は本をテーブルに置き、立ち上がってベランダに出る。


「この世界に来てもう幾ら経ったんだ?相変わらず少女のままで、退屈だな」


 少女は誰かに話しかける様に言葉を口に出す。



 すると、一陣の風が吹き、いつの間にかもう一人の女性がベランダのフェンスに立っていた。


「貴方は実質的な不老よぉ」


「前も聞いたわ。ホムラのお陰で不老だが、ほんっとにゆっくり成長してるんだぞ」


「でもそれも止まってるわねぇ」


「マジ?」


 少女は驚いた様な困惑した様な声を上げる。


「マジかよ。もう少し胸が欲しかったな」


 少女は自身の胸を見つめながら言う。

 すると、フェンスの上に立っていた女性がベランダに降りた。

 その際に、凶暴なモノが激しく揺れた。


「あまり大きくても不便よぉ。むしろその大きさが丁度良いわぁ」


「自分のを揺らしまくって何を言う」


「あらぁ」


 女性は妖しい笑顔を少女に向ける。


「そんなに気になるのぉ?」


「そりゃ、精神は男だからな」


「可愛いわぁ」


 女性は少女に抱きつく。



 少女は息ができない様で、苦しそうにもがいていた。


「可愛いわぁ。食べちゃいたい」


 少女は何とか脱出し、女性を睨みながら息を整える。


「てか、天様日に日にスキンシップが激しくなってないか?」


「だってエンジが可愛いんだものぉ」


「俺は男だ!それに今はレイカだ!」


 霊華は声を荒らげ、不機嫌そうに部屋に戻る。


「それじゃぁ、バイバイ」


 天様はそう言って手を振ると、風と共に消えてしまった。


「全く、静かに暮らせると思ったのに、何で毎日のように来るんだよ」


 霊華は愚痴を言いながら安楽椅子に座り、本を読み始めた。

 彼の頬は紅く染まっており、言葉に反して笑みを浮かべていた。


「ま、皆死んじまったから有難いんだけどな」


 霊華がこの城に来てから数百年は軽く経過していた。



 彼は鎬を削る戦いを好み、後悔し、悪を滅ぼした。

 彼のお陰で平和になった世界は、徐々に破滅に向かっているのだが、それは別のお話。






 昔々、とある少年がこの世界にやってきた物語は、フィナーレを迎えた…


「王…か、家臣の居ない王ってどうなんだ?」


 昔の仲間の言葉を思い出し、安楽椅子に揺られながら意識が揺蕩う。

 さぁ、今日はもう寝よう。

 ここまで読んで頂きありがとうございます。

小説を書くのはコレが初めてで、右も左もわからない状態でした。

 最初と最後で物語の構想が変わったり、内容が薄い場所があったり、今でも一話二千文字程度と少なく、出来は正直悪いです。

 それでも最後までやり遂げる事が出来、コレまで読んで来てくれた沢山の方々には感謝しかありません。

 次回作はある程度考えております。

 この物語は序章とし、更に良いものを作り上げたいと思っております!

誤字脱字などがありましたら教えて頂ければ幸いです。

評価や感想などもお待ちしてます!

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