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戦闘狂世界を渡る。  作者: 南十字
5章 [復讐の一歩]
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五十六話 懐かしい、見知らぬ景色

 重い瓦礫がのしかかり、息がしずらい。

 また俺は負けてしまうのか、力が戻っただけで何故勝てると思ったのか。

 愚か者だ…とんでもない愚か者だ俺は。



 暗闇の中で懺悔する。

 肋骨が砕けて肺に刺さっているのか、呼吸をいくらしても苦しく、呼吸をするたびに痛い。

 酸欠で視界が歪む。


(ハァ…死ぬ…のか…)


 死期を悟り、このまま身体を委ねても良い気がしてきた。

 目を瞑り、後は待つだけだ。

 思考がゆっくりと減速してゆく。



 ふと目を開くと、視界に強烈な光が差し込んできた。


(なんだ?この光は…強烈だが懐かしい…まるで真夏の光のよう…)


 光に目が慣れ、辺りを見回す。

 辺り一面の田んぼ。

 ここは農道の様な場所だろうか?

 俺の横にはバス停があり、後ろには待機所がある。


(取り敢えず…座ってみるか…)


 まるで吸い寄せられら様に待機所のベンチに座る。

 夏の様な暑さで、日陰に入った途端に涼しくなる。


(夏か…暑いの…好きなんだよな)


 聞き慣れた蝉の唄とその風に暫し癒される。



 暫くすると、人影が見える。


「お隣…いいですか?」


 その凛とした声は、とても聞き覚えのある声だった。



 驚き、顔を上げると、そこには死んだ筈のホムラが白いワンピースを見に纏い、麦わら帽子を被って立っていた。


「何で…死んだ筈…」


 声が震える。


「俺のせいで…何で…」


 涙が溢れ出す。


「俺が馬鹿で我儘で…」


 ホムラは俺の横に腰を下ろす。


「そうやって自分を責めないで。私は好きな人が好きなことをやっているのを見たかっただけ。好きな人の笑顔を見たいのはエンジも同じでしょ?」


 まさにそのとおりだが、それで死んでしまっては元も子もない。


「私が良いって言ってるの、だから…今は勝つことだけ考えて」


 ホムラが真面目な顔で言う。



 そういえば、ホムラはこんなにも自論を話すタイプだったかな?


「私は貴方の事が好き。貴方が壁にあたって挫けそうになってるのを見て、黙っている訳ないでしょ?貴方が楽しそうにしていれば静かに、一瞬に笑うの」


 ホムラは立ち上がって日向に出てゆく。


「貴方が悲しそうにしていれば隣で静かに、一瞬に泣くの」


 日に照らされるホムラはこの世のものでは無いような、美しさがあった。

 まるで木漏れ日の様な、まるで燻る炎のような


「そして、貴方が挫けた時には、私が貴方を支えるの。それが、私が貴方へ送る愛の形」


 気がつけば日が傾き、茜色の光が山際からこちらを覗く。


「そろそろお帰りの時間ね。ひぐらしの鳴き声は綺麗ね」


 ホムラは笑う。



 日はどんどん沈む。


「さ、貴方も現世に帰って、私は見ている。そこに居る」


 日が沈みきり、闇に包まれる。

 読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字などがありましたら教えて頂ければ幸いです。

評価や感想などもお待ちしてます。

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