四十三話 紅血の貴族
この頃投稿が遅くなってしまっておりすみません。
余り時間が取れず、一話一話が短くなってしまいますが、何卒ご理解願います。
冷たく、硬い物質が身体に触れる。
目を開けると、薄暗いくぼんやりと辺りが見える。
均一に敷き詰められた石畳の上、目の前に構えるは厳かな王座。
冷たく威圧的な視線をこちらによこす男。
それは、まるで皇帝の様だった。
「愚者に諂う最も愚かな王女よ。チャンスをやろう。貴様らが我が友人を脅かさないと言うのなら、見逃してやる」
低く重圧の伴うその声は、ルージュに恐怖を覚えさせた。
ルージュは視線を離さずにゆっくり立ち上がる。
「お…愚かなのは…貴方よ…私の王に手を…出したのだから…チャンスなんていらないわ!」
辺りに静寂が生まれる。
「そうか…貴様は死を望むのだな…」
男はしばし俯く。しかし、覚悟を決めた様に、殺気を放ちながら顔を上げる。
「同族を…手にかけたくは無いが、それでは無礼だ。
吸血鬼の帝王 ドラキュラ•ブラルーグルいざ参らん」
「血の女王 ルージュ・カーディナルが貴方を倒す!」
視界が紅色に染まる。
ドラキュラからおどろおどろしい紅の魔力が放たれる。
「集え。赤色の・兵軍」
血液が固まり、人の形に成る。
強固な鎧に身を包み、その両碗には鋭い剣と大きな盾を構えている。
「全軍…突撃!」
命令に従い、幾千の兵が進軍する。
「そんなもの…いくらいても無駄よ!」
腕を薙ぐと、真っ赤な波が生まれる。
巨大な波が石畳を削りながら兵に襲い掛かる。
「無駄なのは貴様だ。この兵は誰の魔力で出来ている…全軍…集合!守れ!」
血の兵が一箇所に集い、大楯を前に構える。
それはまるで壁の様。
波が到達し、兵が飲み込まれる。
「な!どうして!」
ルージュの驚きの声が漏れる。
それもそのはず、収まった波から幾千の兵が現れる。
一体も欠けず、それどころか全く傷が付いていない。
「ハァ…これが吸血鬼の女王か…興醒めだ。死ね」
幾千の兵が溶け、地面に血が広がる。
「我が血の広がる領域。それは誰も我に逆らう事の出来ない領域だ。帝王の御前だ。蹲え」
ドラキュラが腕を前に突き出す。
その途端、ルージュが蹲る。
「グッ…ウウッ…身体が…重い…」
「我に逆らったのだ」
ドラキュラの右手に血液が集まる。
その血液は剣と化す。
「有罪、判決、死刑」
その剣を両手に持ち、頭上に持ち上げる。
「さらば」
剣がルージュの頸に吸い込まれる。
(あぁ…死ぬんだ…ごめんなさい…エンジ様…)
ルージュは一筋の涙を流した。
それは死に対する恐怖、愛し、尊敬する者との永遠の別れ。
そして…たった一手だけで負けてしまった悔しさ…
刃がルージュの頸を切り裂き、ルージュの頭が宙を舞う。
「悲しいものだな。いくら歳を食っても同族を手にかけるのは…」
ドラキュラの目にも涙が浮かんでいた。
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