四十二話 彷徨う霊と誘う少女
遅くなってすみません!
GWではしゃいでいたら時間が過ぎてしまいました。
今後はなるべく週一以内に投稿するので、ご了承願います。
延治が砂漠に飛ばされる少し前、ホムラ達も同じように飛ばされていた。
「うぅ…」
ホムラが呻きながら体を起こす。
周囲は暗く、不気味な雰囲気を放っている。
炎を出して辺りを照らす。
ここは何かの建物の様だ。
古びてあちこち傷んでおり、蜘蛛の巣が張っている。
「ここ…どこ?」
ホムラは立ち上がり、周囲を探索しようと歩き出す。
周囲を照らした際、扉が見えたのでそこに向かってゆく。
「ご主人様…ううん、大丈夫!今はここを出る事を考えないと」
不安を振り払い、ゆっくりとドアノブに手を伸ばす。
建て付けが悪く、少し力が必要だった。
耳障りな音を立てて扉が開く。
その先には廊下と階段があり、改めて大きな建物だと分かる。
ホムラは階段を一段ずつ降りる。
相変わらず軋む音が響く。
何事もなく階段を降りられた。
階段の前には赤いカーペットと大きな扉があるので、玄関か何かなのだろう。
広い空間の真ん中に、何か台座の様な物が鎮座している。
台座の上には、十字架の刺さった水晶で出来た髑髏が置かれていた。
ホムラが触れようと手を伸ばすと、コツコツと足音が聞こえてきた。
暗がりから少女が現れる。
深々と白いローブを被っているので顔は見えない。
身体のあちこちに十字架のアクセサリーを身につけて、首にかけたネックレスの十字架をしっかりと握っている。
聖職者の様な服だが、裾が破れており、神聖なものとはかけ離れていた。
ホムラが警戒して見ていると、少女が囁く様に話す。
「貴方がそうなのね…お兄ちゃん…」
ホムラはその言葉を聞き、何か引っかかる所があった。
少し記憶を探ると、その心当たりがあった。
(前にご主人様を襲ったヒットマン…ジョンが妹によろしくと言ってた)
ホムラは彼女に話しかける。
「ねえ、お兄さんはヒットマンとして襲ってきたでしょ…?」
少女は無言で頷く。
「死に際に『妹によろしく』って言ってた。その前後はわからなかったけど…」
そこまで言うと、少女がクスクスと笑う。
「貴方が…ふふふ…あはははは!ありがとう!貴方のお陰で私達は一緒になれた!」
顔を上げた際にローブが剥がれる。
炎の紅い光に晒された顔は、濃い隈と夥しい細かい傷が刻まれていた。
狂気的な悦びを孕んだ目が天を指す。
すると、彼女の背後に煙の様な透けた人影が現れる。
『お嬢さん、また会ったな。こりゃぁ運命的な何かじゃ無えか?』
ホムラは目を大きく見開く。
それは、殺したはずの人間がそこに居たからだ。
『ハハハ!驚いたか?そりゃぁ死んだ奴が現れたらびっくりするわなぁ!だけどなぁ、俺の妹の力「私の従霊の力があれば、霊を付き従えさせる事が出来るの!」』
少女は静かに手を広げる。
広げた手の中に、薄い煙の様な物が集まりだす。
そして、抱きしめる様に身体を縮こませ、水を掬うように手を重ねる。
重ねた手の中には、白く輝く珠が出来ていた。
「最初から飛ばしていくわ!」
その珠を宙に放り投げると、ジョンがそれを掴み取る。
すると、ジョンの色が濃くハッキリとする。
ジョンはニヤリと笑い、銃口を前に突き出す。
次の瞬間、人差し指で形作った銃口から無数の弾丸が放たれる。
曲線を描きながらホムラ目がけて吸い込まれる。
「何度も通用すると思ったら大違い」
ホムラは右手を前に突き出す。
すると、ホムラの周囲に炎の竜巻が生まれる。
弾丸を全て弾くと、竜巻が弾けて消える。
少女はそれを見てもなお、ニヤリと笑った。
「!?」
ホムラが急に自分を殴り出す。
ホムラは必死に抵抗しようとするが、全く制御が効かない。
打撃音と少女の笑い声が響く。
「あはははは!滑稽ね!私は霊を従えさせられる。霊の中には憑依して物体を操る事の出来る者がいるわ。貴方が防いだ時、こっそりと背後に霊をまわしてたのよ!アハハハハ!」
ホムラは目を見開く。
必死に思考するが、自らを襲う衝撃のせいで思考がまとまらない。
(どうすれば…うっ…痛っ!…もう!鬱陶しい!)
ホムラの怒りが溜まる。
その怒りによって無意識に身体に力が入る。
(うぅぅ…イライラするなぁっ!全部燃えろ!)
ホムラが炎を全方向に放つ。
炎は、全てを燃やす。即ち、混じりの無い純粋なものである。
霊は、邪な心によるもの。
炎は、その邪な心すらも燃やし尽くす。
結果、霊は燃え尽き浄化される。
ホムラに憑いていた霊が燃え尽き、ホムラが解放される。
ホムラは怒りの篭った笑顔を少女に向ける。
「こんなにイライラしたのは初めて」
「中々面白かったわよ」
二つの殺気がぶつかり合う。
それによって弱い霊が霧散する。
「全部燃やして綺麗にしてあげる!」
「私とお兄ちゃんは永遠に一緒。それを阻む者はお兄ちゃんと私で殺しちゃうかもね」
今、清き炎の獣と邪な霊を従える者が衝突する。
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