三話 利刀・春風と新たな仲間
盗賊の頭を倒した俺は、盗賊が持っていた盗品を漁ることにした。
盗品の中には銀貨や金貨などの硬貨、宝石やアクセサリーなどがあったり、村を襲って手に入れた農作物なのか、沢山の食料があった。
沢山の盗品の中に一つの手鏡があったので試しに覗いてみると、そこには昔よりも若々しい顔が映っていた。
髪の毛は後ろに向かって刺々しく生えており、色も赤黒い。目は睨む様なつり目で髪の毛と同じように赤い色だった。口の中にはギザギザとした歯が並んでいて、如何にも狂暴そうな見た目だ。
歳は十七歳くらいだろうか、若くピチピチとした綺麗な肌をしている。
まるで別人な見た目にビックリしてしまった。
だが、昔よりも確実にイケメンになっていた。やったぜ。
自分の見た目を確認し、盗品漁りを再開した。
すると、一つの細長い木箱があった。
木箱を手に取り、ピタリと合わさった蓋を開けると艶のある黒い棒の様な物が現れた。下の方にはピンク色の桜の花びらが幾つか描かれていた。
棒の四分の一辺りに切れ込みがあった。よく見ると、それは黒い鞘の鍔のない日本刀だった。
鞘から刃を引き抜くと、僅かに紫がかった桜の花びらの様な色の刃があった。
細く鋭い刀身には、川の流れとそれに流される桜の花びらのような刃紋があり、芸術品の様な美しさと言葉に出来ない恐ろしさが感じられた。
その刀を分解すると、利刀・春風という銘が彫ってあった。名は体を表すという言葉がピッタリな刀だ。
その刀が気に入ったので腰に差して、入手した盗品を同じく盗品のバックに入れて先に進む。
バックはバック本体の大きさよりも明らかに容量があった。何故かは分からないが便利なので気にせず使う。
空間魔法か何かがかかっているのだろう。
道に戻りまた歩く。かなり先に街らしき物が見える。
「やっと街に行ける!ヤッター!」
喜びのあまり大きな声を出してしまった。その声のせいなのか、森の方からガサガサという音が鳴り大きな影が跳びかかってきた。
後ろに大きく跳んで避ける。
「グルルルル…」
大きな白い狼が目の前で唸っている。口からはチロチロと炎が漏れている。カッコいい。
狼が全身に炎を纏い突進してきた。横に跳んで避けるが凄まじいスピードで少しヒヤッとした。だが問題は無い。
狼がカッコよく、気に入ったのでどうにか仲間にしたい。
とりあえず此方も炎を出して牽制する。しかし、炎は効かないのか構わず襲いかかってくる。
今度は避けずに狼を迎え討つ。片手で口を掴んで閉じ、開かないようにする。同時に空いている方の片手で地面に体を押さえ込む。
狼は暴れるが押さえ込まれているので動けない。しかし、かなり力が強いので油断すると拘束が解けてしまう。
「お前俺の仲間にならないか?」
「一匹って言う事は仲間が居ないって言う事だろ?」
本来、狼は群れで行動する生物だ。恐らくだが、一匹なのははぐれてしまったからなのだろう。
そう言葉を掛けると抵抗が弱くなっていく。かなり頭が良いのだろう。
「グルルルル…」
そう唸りながらも全く抵抗しなくなった狼を離してやる。すぐさま襲いかかってくるということもなく、俺の目の前に座る。
「俺の仲間になってくれるのか!?」
そう言うと狼は少し警戒しながら「ワン」と一つ返事をした。
一匹で心寂しいかったのかはわからないが仲間になってくれた。新たな仲間が出来た。
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