三十七話 九尾
俺達は妖狐族の里に到着した。
俺の炎について何かあるらしく、九尾の下に連れてかれる。
九尾と言えば、狐火を使ったり、人に化けてその美貌で人を虜にする。そんな印象だ。
和風な建物に何処か懐かしい気持ちになりながら歩くと、気づけば大きな城の前に来ていた。
水の張った掘りに囲まれており、どっしりとした石垣の基礎を構える、これまた和風の城であった。
「ご主人様、このお城不思議」
ホムラが呟く。
確かに、ホムラ達は西洋風な城しか知らないから不思議に見えるんだな。
「確かにホムラの知らない城だな。俺の故郷に、似たような城があるから、俺としては懐かしい気持ちだな」
「私もご主人様の故郷見てみたい」
ホムラがそう答える。
「ああ、見せてせりたいよ。いつか」
ここに来て故郷が少し恋しくなった。
魔王と殺り合った後に、日本に戻る手立てを探してみてもいいな。
城の中に入って行く。
城の中はthe城と言う感じで、襖や障子、畳までもがある。
城の急な階段を登り、少し雰囲気の違う部屋の前に来た。
部屋の中からは妖艶で吸い寄せられる様な、しかし本能が立ち入る事を拒む様な雰囲気が伝わって来る。
「九尾様、例の爆発音の関係者を連れて来ました」
すると、中から艶かしい声が聞こえてきた。
「御入り、その者を通しなさいね」
「では…」
襖が開けられる。
そこには、美しく恐ろしい女性が居た。
これでもかと存在感を放つ九つの尻尾は、黄金色に輝いて見える。
ウェーブのかかった髪を肩の辺りで切り揃えており、大胆に開けられた胸元には、凶器にもなりうる程の物が鎮座していた。
「あらぁ?その子、人間?妖力が凄いわねぇ」
そう言いながらこちらに這い寄って来た。
俺の顔と九尾の顔がくっつきそうになる程近づく。
「試しに妖術使ってみてぇ」
顔が近いのにドギマギしながら、手の上に炎を出してみる。
「ふふふ…そこらの妖狐よりも凄いわねぇ」
九尾が褒めてくる。
何故褒めたのか疑問に思っていると九尾が言った。
「貴方の炎には普通よりも多く妖力がこめられているのよ。だから普通は大きな炎になってしまう。だけど貴方はしっかり制御をしている。素晴らしいわぁ」
そうなのか。しかしそこまで意識していないが…。
しかし、炎以外にも妖術はあるのだろうか?
「九尾様」
「天と呼びなんし」
九尾…天がそう遮る。
「天様、炎の他に妖術はありますか?」
「あるよぉ。魔法より種類は少ないけど、炎の他に氷や雷、風みたいなのがねぇ。妖術は物質より、触らないものの方が得意みたいねぇ」
「ありがとうございます」
成程、妖術は触れないものが得意なのか。
氷は触れられるけど、恐らく氷は副産物で冷気がメインなのだろう。
「ご主人様から離れて」
俺が考え込んでいると、天様と俺の間にホムラが割って入ってきた。
考えていたから気になって無かったが、天様はかなり近い距離で俺を見ていた。
ホムラは何やらイラついている。
「ホムラ、あまりイラつくな。嫉妬するのは分かるが、天様が俺を好くなんて無いぞ」
そう言い聞かせてなだめる。
「第一、俺はホムラ一筋だ」
そう言ってやると、何やら天様がニヤついている。
「あらぁ。若いわねぇ。でも、貴方のこと好きよぉ」
「なっ!?」
この九尾爆弾を投下しやがった!
「ご主人様はホムラの!」
ホムラが顔を真っ赤にして訴える。
「九尾様!場をかき乱さないで下さい!」
狐太郎が天様を叱る。
「あらぁ、ふふふふ…」
天様は微笑む。
混沌ここに極まれり。
あれから一時間、ずっと騒いでいた。
ホムラは俺にがっしりと抱きつき、離さないと言う意思表示をしている。
俺はそれをなだめる。
天様は微笑む。
狐太郎は天様を叱るが、疲れて諦めかけている。
妖狐の里はこんなんで大丈夫なのか…?
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