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戦闘狂世界を渡る。  作者: 南十字
3章 [魔王を探して]
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三十七話 九尾

 俺達は妖狐族の里に到着した。



 俺の炎について何かあるらしく、九尾の下に連れてかれる。


  

 九尾と言えば、狐火を使ったり、人に化けてその美貌で人を虜にする。そんな印象だ。



 和風な建物に何処か懐かしい気持ちになりながら歩くと、気づけば大きな城の前に来ていた。



 水の張った掘りに囲まれており、どっしりとした石垣の基礎を構える、これまた和風の城であった。


「ご主人様、このお城不思議」


 ホムラが呟く。



 確かに、ホムラ達は西洋風な城しか知らないから不思議に見えるんだな。


「確かにホムラの知らない城だな。俺の故郷に、似たような城があるから、俺としては懐かしい気持ちだな」


「私もご主人様の故郷見てみたい」


 ホムラがそう答える。


「ああ、見せてせりたいよ。いつか」


 ここに来て故郷が少し恋しくなった。



 魔王と殺り合った後(やりあったあと)に、日本に戻る手立てを探してみてもいいな。


 

 城の中に入って行く。



 城の中はthe城と言う感じで、襖や障子、畳までもがある。



 城の急な階段を登り、少し雰囲気の違う部屋の前に来た。


 

 部屋の中からは妖艶で吸い寄せられる様な、しかし本能が立ち入る事を拒む様な雰囲気が伝わって来る。


「九尾様、例の爆発音の関係者を連れて来ました」


 すると、中から艶かしい声が聞こえてきた。


「御入り、その者を通しなさいね」


「では…」


 襖が開けられる。



 そこには、美しく恐ろしい女性が居た。



 これでもかと存在感を放つ九つの尻尾は、黄金色に輝いて見える。



 ウェーブのかかった髪を肩の辺りで切り揃えており、大胆に開けられた胸元には、凶器にもなりうる程の物が鎮座していた。


「あらぁ?その子、人間?妖力が凄いわねぇ」


 そう言いながらこちらに這い寄って来た。


 

 俺の顔と九尾の顔がくっつきそうになる程近づく。


「試しに妖術使ってみてぇ」


 顔が近いのにドギマギしながら、手の上に炎を出してみる。


「ふふふ…そこらの妖狐よりも凄いわねぇ」


 九尾が褒めてくる。



 何故褒めたのか疑問に思っていると九尾が言った。


「貴方の炎には普通よりも多く妖力がこめられているのよ。だから普通は大きな炎になってしまう。だけど貴方はしっかり制御をしている。素晴らしいわぁ」


 そうなのか。しかしそこまで意識していないが…。



 しかし、炎以外にも妖術はあるのだろうか?


「九尾様」


(てん)と呼びなんし」


 九尾…天がそう遮る。


「天様、炎の他に妖術はありますか?」


「あるよぉ。魔法より種類は少ないけど、炎の他に氷や雷、風みたいなのがねぇ。妖術は物質より、触らないものの方が得意みたいねぇ」


「ありがとうございます」


 成程、妖術は触れないものが得意なのか。

 氷は触れられるけど、恐らく氷は副産物で冷気がメインなのだろう。


「ご主人様から離れて」


 俺が考え込んでいると、天様と俺の間にホムラが割って入ってきた。



 考えていたから気になって無かったが、天様はかなり近い距離で俺を見ていた。



 ホムラは何やらイラついている。


「ホムラ、あまりイラつくな。嫉妬するのは分かるが、天様が俺を好くなんて無いぞ」


 そう言い聞かせてなだめる。


「第一、俺はホムラ一筋(ひとすじ)だ」


 そう言ってやると、何やら天様がニヤついている。


「あらぁ。若いわねぇ。でも、貴方のこと好きよぉ」


「なっ!?」


 この九尾爆弾を投下しやがった!


「ご主人様はホムラの!」


 ホムラが顔を真っ赤にして訴える。


「九尾様!場をかき乱さないで下さい!」


 狐太郎が天様を叱る。


「あらぁ、ふふふふ…」


 天様は微笑む。



 混沌ここに極まれり。










 あれから一時間、ずっと騒いでいた。



 ホムラは俺にがっしりと抱きつき、離さないと言う意思表示をしている。



 俺はそれをなだめる。



 天様は微笑む。



 狐太郎は天様を叱るが、疲れて諦めかけている。



 妖狐の里はこんなんで大丈夫なのか…?

 読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字などありましたら教えていただければ幸いです。

 感想や評価などお待ちしてます。

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