三十五話 氷炎
ぶつかり合う武器の間で爆発が起きる。
「きゃっ!」
「ぐあっ!」
いてぇ。
何だあの衝撃は?
高温の武器と低温の武器…
そうか!武器に付いている氷が俺の炎によって一瞬で水蒸気と化し、体積の急激な増加で水蒸気爆発したのか!
「これは…耐久勝負ですか!良いですね!」
彼女も原理はともかく武器をぶつけると爆発すると分かったのだろう。
武器喰いが踏み込んでくる。
武器同士がぶつかる毎に武器が弾かれ仰反る。
「オラァ!」
弾かれる。
「まだまだ!」
弾かれる。
「この!」
弾かれる…
何度弾かれただろうか、爆発の衝撃でダメージが蓄積され、疲労も溜まっている。
打ち付けた事により熱移動が起こり武器の温度が常温に近づいている。
「ふう…武器の温度も戻り始めた。この一撃で決めるぞ!」
そう宣言し、武器を納刀する。
能力は使わずに居合いの構えをとる。
俺の意図が伝わったのか、彼女も構える。
空気が鎮まる。
雨が地面に落ちる。
見えたのか、聞こえたのかは分からないが、二人が交差する。
相手に全力で肉薄し、自らの持てる最高速度で武器を振るう。
(速く!もっと速く!)
互いに残心する。
静けさが戻ってくる。
「貴方の…勝ちです…」
武器喰いが血を流して倒れる。
「強かったよ」
そう言い残して仲間の元に帰る。
ホムラ達はほっとした様にしていた。
「エンジ様、やはりお強いです」
ルージュが褒めてくれた。
「褒めても何も出ないぞ」
「いえ、ただ思った事を言っただけです」
「そうか」
褒めてもらえるのは嬉しいな。
「ご主人様、彼女の死体はどうする?」
ホムラがそう聞いてきた。
「取り敢えず、彼女は埋めよう。武器は墓標にしてやろう。それ以外の武器は自然に還らないから頂いて行こう」
彼女を埋め、使っていた武器を突き刺して墓標にする。
「それじゃあ、次に行くぞ。次の街は恐らく魔王に最も近い街だ。まあ、壊滅しているがな」
そう、壊滅しているのだ。
東の国はほぼ全て壊滅しているのだ。
もし残っているのだったら小さな村か隠れ里くらいだろう。
獣人の多くはひっそりと暮らしているから、もしかしたら獣人と会えるかも知れない。
俺達は霧の中を歩き始める。
side???
森の中に爆発音が響く。
それを聞いた彼女は、その音の方を警戒する。
「何なんだあの音は?里が危ないかも知れない!」
彼女は走り出す。
白い和服に身を包み、ふさふさとした尻尾を揺らして…
彼女の後に青い炎の球がついて行く。
「この事を九尾様のお耳に入れないと!」
走りながらそう呟いた彼女は霧の中に消える…
後には静けさだけが残った。
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