三十四話 弁慶
俺達は今、街道を歩いている。
魔王を嗅ぎ回って歩いていると、いつの間にか東の方に来ていた。
確か、東の街道には武器を奪う奴が居るんだっけ?
出てきてくれると嬉しいな。
街道を何日も歩いていると、霧が濃くなって来た。
濃い霧の中を歩いていくと、前方に薄っすらと人影が見えてきた。
霧のせいでぼやけているが、その人影がこちらに歩いて来た。
近づいてきた事により、はっきりと見えるようになった。
その人影は女性だった。
腰と背中に剣を差し、太もものホルスターには大量の短剣が入っている。
右手には棒状の武器を持っている。
「やあ、旅諸君!我は武器喰い、一対一の決闘をしたい!」
大声でそう言ってきた。
「成程、君が武器喰いか、噂には聞いていたが本当にいたのか。その決闘、受けて立とう。」
俺が前に出る。
「では一人ずつお願いします。最悪殺してしまっても良いですね?」
「ああ、良いぞ」
そう言って同時に構える。
棒状の武器を右手と腋に挟み込み、先端を下に下げている。
「行きます!」
武器喰いが肉薄してくる。
武器を縦に回転させ、連続で攻撃をしてくる。
それを刀で受け流す。
甲高い金属音が鳴り響く。
「中々強いですね。では、能力を解放しますかね」
武器喰いが後ろに退き、武器に魔力を込める。
すると、武器の先端から冷気が溢れ出す。
「この武器は、魔力を込める事で冷気が放たれるのです。この冷気で氷の刃を作る事も出来るんです!」
武器喰いが嬉しそうに武器を撫でながら言う。
「ああ、すみません!私武器マニアなのでこう言う話をすると盛り上がっちゃって…」
申し訳無さそうに頭を掻いている。
「早く続きをやるぞ」
俺が戦いを再開する事を促す。
今度は俺から先制攻撃をする。
「桜火乱舞・散り桜」
刀を上から切り下ろす。
「桜火乱舞・還り咲き」
すぐさま刀を切り上げる。
一度目の切り下ろしは防がれたが、二度目の切り上げで武器喰いの体制が崩れた。
武器を上に弾かれ、胴体がガラ空きになる。
「終わりだ!」
刀を真横に一閃する。
しかし、手応えは硬かった。
武器喰いの胴体には、氷が張り付いていた。
「ふふふ…少しヒヤッとしたよ」
棒の根元を掴んで振り下ろしてきた。
サイドステップで避ける。
避ける際に切り付けてみたが、横にもしっかりと氷が張り付いていた。
だが、俺は炎を使える。
最高火力なら奴の氷も余裕で溶かせる筈だ。
距離をとり、刀に纏った炎を圧縮させる。
真っ赤だった炎はやがて白くなり、刀の周りの炎もすっかり無くなっていた。
まるで蛍光灯の様に真っ白に光る刀を構える。
「まだまだこれからだよなぁ!」
そう言い放つ。
お互いに肉薄し、真っ白な冷気と真っ白な熱気がぶつかり合う。
読んで頂きありがとうございます。誤字脱字などがありましたら教えて頂ければ幸いです。
感想や評価などもお待ちしてます。




