三十三話 類似
俺達は今、魔王軍の侵攻により滅びた街にやって来ている。
当然人は居らず、建物も破壊され燃やされている。
焦げ臭さと腐敗臭が鼻をつく。
俺達はもう何度も滅びた街を見ている。
魔王の情報を探して行くと、必然的に侵攻した街の情報も入ってくる。
この滅ぼされた街を新しい順に遡って行くと、恐らくだが魔王の城に近くなると思い、今は滅ぼされた街巡りをしているのだ。
「はぁ、魔王も人間も、同じですね」
クロウがそう言う。
クロウは奴隷として売られていたのだから、人間の悪い面もよく知っているのだろう。
「本質的には変わらない。人間も魔族も自己中心で、異なる者が居たらすぐに排除…本能では無く理性で動いているからその分残酷…私達も人の事は言えないが…」
ルージュが真剣な顔で言う。
人間も利益目的で戦争をしているのだ。魔族と何ら変わりない。
姿形が違うだけで特段悪いとされているが、そこも人間の悪い所だろう。
すえた匂いの中を歩いていると、上空から炎の球が降ってきた。
炎を放ち相殺する。
その直後空から大きな影が降りてきた。
真っ黒な鱗に身を包み、大きな顎門に鋭い牙を並べており、背中には立派な翼膜がある。
それは、正真正銘のドラゴンだった。
『グルルルル…』
低く唸り声をあげ、こちらを睨んでいる。
こちらに走って迫ってきた。
翼で左右から切り裂く様に攻撃をしてきた。
その攻撃をジャンプで避け、頭のてっぺん目がけて踵落としを食らわせた。
怯んだ所でルージュが血で拘束をした。
次にクロウがドラゴンの足元から闇を爆破させる。
上に吹き飛ぶが、ルージュの拘束がそうさせない。
僅かに地面から浮いたところを刀で切り上げる。
腹から赤い血が滴る。
その血はすぐさま棘に変化してドラゴンの体を突き刺す。
弱って動きが鈍くなった。
クロウが影でゆっくりとドラゴンを包み込んでいく。
影がボコボコと波打ち、影が剥がれると中から見るも無惨なドラゴンの死体が出てきた。
「弱かったな」
「あれは下級のドラゴンでしたね」
ルージュがそう言う。
下級という事はもっと強いドラゴンもいるのか。
「それにしても、あの影は何なんだ?滅茶苦茶強いじゃないか」
クロウの影が気になったので聞いてみた。
「あれは私の闇魔法です。影でドラゴンを飲み込んで全方位から攻撃、圧縮して倒しました。」
そんな事も出来るのか、便利だな。
「闇魔法は魔力消費と機動力に難ありですから、工夫して使っているのです」
クロウがそう付け足す。
確かに包み込む時ゆっくりだったな。
取り敢えず、ドラゴンの素材を剥ぎ取る。
旅は結構金がかかるからな。
身体が大きいので、かなり時間が掛かってしまった。
ギルドで素材を売ってみたら、金貨三十枚になった。
思わぬ大金に冷や汗が流れた。
読んで頂きありがとうございます。
誤字脱字などがありましたら教えて頂ければ幸いです。
感想や評価などを聞かせて頂ければ嬉しいです。
昨日一昨日と投稿出来ずすみません。色々リアルでごたついていました。
今後もそういう事があると思いますが、何卒ご理解願います。




