三十一話 同郷の者
まるで、時が止まったかの様に静まりかえる。
「まさか私以外にも転移者がいたとは…」
佐藤が驚いた様に言った。
転移者?俺は転生してこっちに来た。佐藤とは少し違う。
「俺は転生してこっちに来た。お前とは少し違う様だな」
「そうですか…という事は、貴方は一度死んでいると言う事ですね」
佐藤が考えながらそう言う。
「貴様等何の話をしているのだ?」
王が困惑しながら言う。
「ああ…すみませんねほったらかしにしてしまい。私達は同郷の者だったのですよ」
「そう言う事だ」
佐藤が説明し、俺が肯定する。
「成程、わかった。が、しかし!何故貴様は我が家臣を殺したのだ!」
王が激昂する。
「ああ、そうでしたね。私は魔王に命令されて貴方を殺しに来ました。」
王が俯く。身体に力が入り、震えいる。
「ぶっ殺してやるよ!テメェも魔王もよぉ!」
王が佐藤に襲いかかる。
まるで獣の様に爪を立てて引っ掻く。
しかし、その爪は空を切る。
佐藤が王の後ろに立っている。
その動きは全く見えず、まるで瞬間移動をしたかの様だった。
そして、佐藤は王の首に手刀を当てる。
王は耐久力があるのか全く痛がらずに、振り向きながら裏拳を振る。
しかし、またしても空を切る。
佐藤は王の真横に瞬間移動していた。
佐藤が王の腹に膝蹴りを加える。
流石の王も僅かに怯む。
その隙に、佐藤が王の真正面に瞬間移動し、王の顎にアッパーカットを叩き込む。
佐藤が連続して攻撃する。その攻撃は一つ一つ別の場所から加えられ、まるで佐藤が分身してるかの様だった。
的確に急所を狙った攻撃を前に、流石の王も倒れてしまった。
「ふぅ…背後から刃物で刺してしまえば一発でしたが、それではつまらないですからね」
倒れた王を見ながら佐藤が言う。
「貴方に圧倒的な強さを見せつければ、今後有利になりそうですし」
そう言って佐藤は踵を返し、扉に向かって歩き出す。
「テメェ待ちやがれ!」
後ろから佐藤に斬りかかる。
王の時と同じく刀は空を切る。
「テメェ!何処に行きやがった!」
辺りを見回しながら叫ぶ。
しかし、佐藤は何処にも居なかった。
納刀し、王の生存を確認する。
王は呼吸をしておらず、脈も無かった。
俺はひたすら心臓マッサージをした。
しかし、王は息を吹き返さなかった。
「チッ、クソが」
悪態を吐き、城を後にする。
死体は放置した。
変に手をつけると、俺がやったと逆に疑われる可能性もある。
それに俺は善人では無い。
今は早くこの街を出たい。
折角楽しく戦っていたのに邪魔をしやがった。
戦闘自体は終わっていたが、最終的には王を倒したかった。
その楽しみを潰したのだ。今はイライラが止まらない。
だが、佐藤と言う強者を見つけられたのだ。
ここで、俺の次の目的地が決まった。
魔王のいる場所だ。
そこに行くために複数の街に行き、情報を得て準備を整える。
今から出発しよう。
思い立ったが吉日だ。
早速俺は宿にいる仲間に相談しに行った。
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