二十八話 ルージュのストレス
ここ、シュルルーシは砂漠の中にある街だ。
砂漠の中なので、当然気温が高く乾燥している。
そのため、普通だったらあまり外で運動したくない。
だが、俺とホムラは炎を使えるため暑さに耐性がある。
むしろ心地いいくらいだ。
そのため、軽装でギルドの依頼をこなせる。
しかし、ルージュは暑さに耐性があるが、照りつける太陽を遮る物が少ないため、ここのところ少し不機嫌なようだ。
「ルージュ、今日は依頼どうする?」
「勿論行きます」
「そうか、無理はするなよ」
「無理などしてません」
イラつきを抑えながら答えている様な気がする。
「じゃあ今日は、砂漠の外側にあるサバンナの洞窟の調査をするか」
洞窟なら太陽の光が無いため、いつも通りに動けるだろう。
「わかりました。準備してすぐに行きましょう」
ルージュがせっせか準備を進める。
嬉しいならそう言えばいいのに。
「あそこに洞窟があります!」
ルージュが指を指して言う。
そこには崖があり、その下にポッカリと黒い穴が空いていた。
「多分あれが目的の洞窟だろう。依頼のデザートセンチピードの甲殻をとって帰ろう」
「ゆっくりでも大丈夫ですよ」
ルージュがそう返してきた。
どんだけストレスだったんだ…
デザートセンチピードはムカデの魔物らしい。気持ち悪かったらどうしよ。
洞窟の中に入っていく。
入口は人一人くらいの大きさだったが、中が広くなっており、明かりをつけても天井が暗くて見えなくなってるくらいだ。
「あらかじめ言っておくが、この中ではあまり炎を使うなよ」
「なんで?」
「密閉空間で炎を使うと有毒な空気が出てくるからだ。他にもガスが溜まってたらヤバいだろ?だからあまり使わない方がいいんだ」
「なるほど」
この世界の人が一酸化炭素を知っているか分からないので大体で言ったが、解ってくれた様だ。
「エンジ様、前方に蠢くものが」
ルージュに言われて前を見ると、何か蠢くものがいた。
その蠢くものの正体は、目的のムカデだった。
何かを貪っており、不快な音が発されている。
ルージュが足元から血を地面に広げる。
その血はムカデのいる場所までに及んだ。
ルージュが手を前に出す。
指先を上げると、それに呼応して血液が剣山の様に尖り、ムカデに突き刺さる。
身体中を貫かれ、身動きの取れないムカデは、それでもなお体をくねらせていた。
だが、いくら生命力が高くても所詮はムカデなので、数分で力尽きた。
「じゃあ、剥ぎ取るか」
「いえっさー」
そうして俺たちは剝ぎ取り作業に移った。のだが、
「ご主人様、これ貫かれすぎて完全な甲殻が少ない」
そうなのである。
ルージュが身体中をズタズタに刺してしまったので、完全な甲殻が全然無い。
ムカデの身体は節が繋がった作りになっているので、身体の大きさの割には一枚一枚が小さくなってしまう。
依頼では、この甲殻が三十枚欲しいとのことなのだが、この一匹から採れたのは六枚。全然足りないのだ。
本来であったら一匹で十分なのだが…
「あー甲殻が足りないなーコレじゃ依頼達成できないなー(棒)」
ルージュさん、あからさますぎやしませんかね…
「しょうがねぇ。もっと探して採取するぞ」
「おー」
ホムラがそれに応える。
ルージュは影でガッツポーズをしていた。
そんな訳で今日は一日中洞窟に篭っていた。
外に出る頃には空には星が瞬く時間になっていた。
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