二十五話 噂
旅に出るこの日、俺達は一応挨拶をしにギルドにやってきていた。
無事挨拶も終わり、これから旅に出ようとした時、ギルドの受付から面白そうな話を聞いた。
「エンジさん、もし、今後の旅で東にいく時は、武器喰いと言う人に気を付けてください。なんでも、街道脇に潜み、そこを通る強者に一対一の勝負を挑むらしいです。負けた場合、武器を奪われるらしいです。」
とのこと、何とも面白そうな話だ。まるで弁慶みたいじゃないか。
「あのギルドの受付の話、本当何ですかね?」
「さあ?行って確かめてみるか?」
「でもご主人様、詳しい場所は言ってなかったよ」
「あ、そうだった。じゃあ、適当に旅して会えたらラッキーくらいに思ってようか」
「そうですね。あ!相乗りの荷馬車が来ましたよ」
俺達は、相乗りの荷馬車に乗せてもらう。
この荷馬車は商人のもので、護衛する代わりに、途中まで乗せてもらうと言うものだ。
今回向かうのは砂と戦いの街、シュルルーシだ。
その街は、砂漠の中のオアシスに造られた街で、勝負で勝った者が領主に成れるという異質な街だ。
大元の国も、その街だけは勝負で領主を決めて良いといっている。
街の特徴にもある通り、勝負の街なので血気盛んな者が集まっているのだ。
更に、街の外にある砂漠には大きな鯨の様な魔物がいるらしく、それも見てみたい。
街へは二週間もかかるらしい。かなり長い旅になりそうだ。
「それでは、出発しますよ」
御者の声が掛かる。
ゆっくりと荷馬車が動き出す。
荷馬車には、俺達以外に四人の乗客がいる。
その内三人は俺達と同じようにパーティーで、テンションが高い。
先への希望と不安を乗せて、馬車は進み始めた……
旅が始まって三日、トラブルが起こってしまった。
「おい!何で俺が悪い事になってんだよ!」
「実際あんたが悪いんでしょ!」
「お、おい!喧嘩はよせ!他にも乗客がいるんだから!」
テンションの高いパーティーの男女が喧嘩をしているようだ。
同じパーティーの人が止めようとしているが、一向に止まる雰囲気は無い。
うーん、うるさい。耳がつんざくんじゃぁ。
ルージュとホムラは喧嘩なんか歯牙にもかけない様子だ。
大人やな、ほっとけば直に治まるだろうから、放置放置。
あれから三時間が経った。
丁度昼食時なので、馬車を止めて各々で休憩を取るようだ。
お腹もへったので昼食の準備をする。
「あーもう!イライラするわね!あんたなんかこうよ!」
また喧嘩が始まった。
今度はかなり白熱しそうだ。
女性の方が魔法で小石を放っている。
対する男性は、飛んでくる小石を双剣で弾きながら声を張り上げている。
もう一人は相変わらずアワアワしている。
「バカ!バカ!バカ!バカーッ!」
女性が土を固めて放つ。
男性に向かって放たれた土は、男性避けて後方に飛んでいく。
ちょ、待て待て待て待て!後ろには俺達がいるんだぞ!
俺達の方に向かってきた土の一部は、一人旅の元に向かって行く。
危ない!そう思って土を止めに行こうとする。
すると、ぶつかる前にその人が消え、土は地面に着弾した。
そして、喧嘩を見るとそこには、一人旅の方が男女に向かって刃の付いた篭手の様な者を突き付けていた。
「黙れ、今後それ以上騒いで迷惑をかけたら殺す」
威圧感のこもったハスキーな声が響く。それを聞いた男女は縮みあがっていた。
残されたもう一人は、「スミマセン!スミマセン!」と連呼していた。
空気が重くなったが、無事休憩を終えて旅が再開した。
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