二十二話 英雄
踵を返して歩き出すと、ホムラとルージュが走ってくるのが見えた。
「倒した…ぞ…」
足元がふらつき、倒れそうになる。
「ご主人様!」
「エンジ様!」
二人が倒れそうになった俺を支えてくれた。
「俺は…大丈夫…だ。ちと…疲れた…だけだから…」
「大丈夫な訳ない!」
「そうです。そんなにふらふらなのですから」
「そうか…じゃあ…甘えさせて…貰う…ぞ…」
そこで俺の意識は途切れた。
意識がうっすらと覚醒する。覚醒してはいるが、夢と現実の狭間の様な夢うつつな状態だ。
暖かい。それが今の感想だ。
優しい暖かさに包まれており、安心感のある落ち着く感覚だ。
徐々に意識がはっきりとしてきた。
赤い日の光が顔を照らし、眩しい。
身体を起こすと、ベッドの上で寝ていた事が分かった。
ベッドの横では、ホムラがベッドに寄りかかって寝ていた。
「エンジ様、起きたのですね」
扉の所にルージュが立っていた。手には果物の乗った皿があった。
「ルージュか、おはよう」
「おはようございます。まあ、今は夕方なのですがね」
「そんなに寝ていたのか」
「ええ、あれから三日間ほど寝ていらっしゃいました。なかなか目を覚まさないのでホムラ様が心配していましたのですよ」
「そうか、すまない」
謝罪の言葉を口に出した。だが、俺の意識はあることを考えていた。
あの暖かさはきっと、ホムラとルージュの親愛の感情なのだろう。
俺の事を深く思い、心配してくれている。
何だか胸が熱くなった気がする。
この世界に来て、心の拠り所を見つけられたと思う。仲間という大切なものを。
「ん…ご主人様?」
ホムラが寝惚け眼を擦りながら声を出す。
「ホムラ、おはよう」
「ご主人様!」
ホムラが驚いた様な安心した様な表情で俺に抱きついてくる。
「いだ、いだだだだだだ」
「ホムラ様、嬉しいのは分かりますが、エンジ様が痛がってます」
ホムラはすぐに俺を解放して、シュンとした顔で謝る。
「ご主人様、ごめんなさい」
「いや、大丈夫だ。俺こそ迷惑をかけてすまんかった。だから、抱きついても良いぞ」
その言葉を聞くとすぐに嬉しそうな顔になり、今度はゆっくりと抱きついてきた。
ホムラはあまり感情の起伏が無く、おとなしめの女の子のようだ。だが、本当に嬉しい時や悲しい時は表に、より感情が出てくる。
だから、俺に対して本当に心配してくれていたのだな。と、嬉しくて少し涙が出てきた。
「ご主人様、痛かった?」
「いや、お前達が心配してくれて嬉しかったんだ。」
「あら、エンジ様を心配するのは当たり前の事ですよ。なんたって仲間なのですから」
そうだな、仲間、良い言葉だ。
「そうだ、ルージュ、あの後街はどうなった?」
「あの後、エンジ様が倒れた後は、街の人達があなた様の事を英雄と讃えて治療をしてくれました。街は復興にむけて作業を続けている所です」
「そうか、ありがとう」
「あと、ご主人様にむけて城から手紙が届いてた」
「手紙?」
「ええ、エンジ様が魔王の幹部を倒したので褒美を与えたいとのことです」
「そうか、じゃあ明日は城に出向くとするか」
「そうしましょう」
その日はゆっくりと身体を休め、次の日の朝が来た。
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