二十一話 全てを燃やす
山吹と紅の魔力がぶつかり合う。
ロンディエールが走りながら魔力弾を飛ばす。魔力弾がカーブしながら襲ってくる。
一つ一つ軌道を読むのが面倒なので炎を大きく横に薙いで防ぐ。
炎の中から飛び出しロンディエールに斬りかかる。鞘から飛び出した刃は、炎の軌跡を残しながらロンディエールの頭上に襲いかかる。
ロンディエールは魔力を両手で伸ばし防ぐ。さらに、伸ばした魔力から魔力弾を連射してくる。
咄嗟に炎で防ぐが全ては防ぎきれず、顔面に衝撃が走る。
後方に吹き飛ぶが、回転して勢いを殺し着地する。
顔から血が出るので素早く拭う。
ロンディエールは両手を前に出してトランプをシャッフルしている。
次にロンディエールがトランプをジャグリングする。
ロンディエールが右手を前に突き出すと、それに伴ってトランプの群れが俺を襲う。
炎を前に出してロンディエールに当てるつもりでトランプを焼き消す。
ロンディエールは軽快に避け、横に跳びながらトランプを五枚程、扇状に放ってくる。
それを後ろに飛んで避ける。
ロンディエールが両手にトランプを携えて姿勢を低くしながら向かってくる。
トランプを指の間に挟んで斬りつけてくる。
着地と同時にロンディエールの攻撃を受け流す。
その衝撃でロンディエールの腕が大きく開かれたので、がら空きの胴体を袈裟斬りにする。
しかし、ロンディエールが後方に跳んで避けたので致命傷にはなっていない。
それに加え俺の頬をトランプがカスった。
避けると同時に攻撃してきたようだ。
「チッ、器用な奴だ」
『道化師ナノデネ』
炎を纏った刀を下段から切り上げる。すると、地面を炎が一直線に走りロンディエールに襲いかかる。
ロンディエールが横っ跳びに避けたので、偏差打ちで炎を放つ。
ロンディエールは手を振って炎をかき消す。
その隙にロンディエールに斬りかかる。
ロンディエールは横一文字に襲ってくる刃をしゃがんで避ける。
しゃがんだ状態で思い切り身体を伸ばして俺の鳩尾に掌底を叩き込んできた。
その攻撃で斜め上に吹き飛ばされる。衝撃で内臓が傷付いたのか、血液が口腔にこみ上げてくる。
空中で体勢を立て直そうとしたが、追撃にきたロンディエールに踵落としをされて地面に叩きつけられる。
咄嗟に刀で防いだが、地面に叩きつけられた衝撃で口から血液がこぼれる。
起き上がりながら後ろに跳ぶと、元いた場所にロンディエールのトランプが突き刺さっていた。
『チョコマカト逃ゲマスネェ』
「当たり前だろ。死にたくないんだから」
軽口を叩くが、内心少し焦っていた。
なんだこいつ、動きが洗礼させられて速い。おかげで炎を溜める時間がねえ。
炎で加速しようにも溜めてねえから速度が出ねえ。
『デハ、トットト終ワラセマショウカネ』
「!?」
ロンディエールが手で円をかき、お辞儀をする。そして、閉じた拳を開く。
そこには、途轍もない存在感のある、小さな光る玉があった。
ロンディエールは上空に飛び立ち静止したあと、小さな玉を落とす。
その玉は、地面に着弾すると、猛烈な光りと衝撃を周囲に放ちながら大きくなる。
家は吹き飛び、地は抉れる。その衝撃げ風が吹き荒ぶ。
光りが治まるとそこには、抉れた地面だけが残っていた。
『フフフ……ナカナカニオ強カッタデスヨ』
ロンディエールは消滅した挑戦者に敬意を表して地面を見下ろす。
『サテ、魔王様ノ元ニ帰リマスカ』
ロンディエールが帰ろうと空中で踵を返す。
すると、上空から何か襲ってきた。
『!!』
ロンディエールの左腕が切り落とされ傷口が燃える。
ロンディエールの背後には残心した俺がいた。
『ナ、ナニィー!ナゼニ貴方ハ生キテイルノデス!』
「そんなの簡単だ。上空に逃げたからだよ」
そう、俺は上空に逃げたのだ。
ロンディエールがあのヤバい玉を造り出した瞬間から急いで炎を圧縮し、玉が爆発する直前に炎を解放して逃げたのだ。
圧縮された炎は一点から噴き出したので、玉の爆発の勢いも相まって予想よりも高く吹き飛ばされたのだ。
『ア、アア…ワタシノ左腕ガ…コレデハ道化師トシテ芸ガ出来ナイジャナイデスカ!貴様ハ殺ス!絶対ニダ!』
ロンディエールから魔力が吹き出る。
魔力は刃となって俺を襲う。刃の群れが炎が俺を切り刻む。
しかし、そのどれもが浅く、致命傷にはならなかった。
『殺ス気デ放ッタノニナゼ!』
「フフフ…ハハハハッ!なぜ致命傷じゃないかって?そりゃあお前の左腕の傷口を焼く炎が魔力を燃やしているからだよ!!だから俺はあえて当たったのだよ!」
ロンディエールは驚愕し震えている。
「それと、炎は酸素を取り込み燃える…俺の炎は魔力で燃える…どう言うことか判るか?お前の魔力を燃やした炎は大きくなる!」
ロンディエールの左腕を燃やす炎が大きくなりロンディエールを包み込む。
『ギャァァァァァァァァァァ!!熱イ熱イ熱イ熱イ熱イ熱イ熱イ熱イ熱イ熱イ熱イ熱イ!魔力ガ燃エ尽キルー!』
ロンディエールは絶叫し、上空からのたうちながら落下する。
地面に倒れて燃えるロンディエールを見下ろす。
「どうだ?人間に殺される気持ちは。じっくり焼かれて後悔して死ぬと良いよ……
今のテメエは、道化師として最高に面白いなぁ!ヒャハハハハハハハハハハハハ!!!」
俺の笑いが辺りを支配する。
『く…狂って…る…』
ロンディエールがそう呟き事切れる。
「そりゃあお前もだろ」
そう返して踵を返して立ち去る。
そこには黒焦げたものが残っているだけだった。
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