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戦闘狂世界を渡る。  作者: 南十字
2章 [強敵探し]
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二十話 襲撃と悦び

 ルージュと出会い、街に帰って来てから五日経った。



 その五日間は依頼をこなして生活してきた。

 棘を飛ばす蜥蜴やオークをぶち殺がしまくった。



 今日は久々に休んで買い物をしていた。


「ねえエンジ、お肉いっぱい食べたい」


「おい、さっきまで串焼き貪ってただろ。何本食うつもりだ」


 肉を買い込みながら言う。


「エンジ様、お肉を買いながら言うということは肯定ということじゃないですか」


「え?当たり前だろ?」


「ご主人様マジ感謝」


 俺達はのんびり休日を謳歌していた。



 そんな時、街の外壁から爆発音が響き渡った。



 外壁の方を見ると、土煙とパニックになっている人々が見えた。



『ヤアヤアヤアヤア、人間君達。キサマラハコレカラ滅ビルウンメイナンダ。魔王様ノ元ニ大人シク滅ビタマエ』



 不気味で嘲笑する様な恐怖の象徴の様な声が街中に響く。



 俺達は人波を掻き分けて現場に向かう。

 


 そこには、紫色の肌をした人形の生物がいた。

 その生物の背中にはコウモリの様な羽が生えており、身体は細身だが、しっかりと筋肉が付いている。

 顔の右半分には白いピエロの仮面がついている。仮面の付いていない左半分も、仮面と同じように不気味な笑みが張り付いている。

 


 その生物の前に兵士達が立ちはだかる。


『オヤ?抵抗スルノデスネ?マア、抵抗シタカラトイッテ何カカワル事モ無イデスガネ。強イテイウナラ死期ガハヤマルコトデスカネ。ハハハッ』


 その生物はそう言いながら両手を開き空を仰ぐ。



 すると兵士達が突然倒れる。

 兵士達の目は虚ろで焦点が合っていない。どこか快感を感じているようで、まるで薬中の瞳だ。やがて瞳孔も開き痙攣しながら死に至った。


『取リ敢エズ一番近イノヲ殺シマスカネェ』


 より歪んだ笑みを浮かべてこちらを睨み付ける。完全に俺と視線が合う。


「殺す?お前が殺されるの間違いじゃねえのか?」


『オヤァ~実ニ不快デスネェ~ヒャハハハハハ………………舐めてんちゃうぞ…』



 鋭い視線をビシビシと肌に感じる。


 

 俺達は戦闘体勢に入る。俺は炎を鞘に圧縮し、ホムラは手足に炎を纏い、ルージュは自身の血液を辺りに漂わせている。



 謎の生物がこちらに空を仰ぎながら歩いてくる。


 

 奴と三メートル程の距離になった途端、視界がボヤけ足元がふらつき倒れる。やがて視界が暗くなる。

 その時奴の呟きが聞こえた…


『オヤ?貴方達、ナカナカニオ強イ…』


 



 視界が晴れる。その視界は歪み、捻れ、ボヤけ、脳が揺れる。

 空が七色に光り、地面は黒く陰る。 

 


 地平線のところに大きなピエロが扇状になりながら回転している。

 ピエロはその大きさのまま近付いてくる。遠近法も関係なく()()()()()()()()()

 


 俺の周りをピエロが円状に囲む。


『ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ……』


 醜い笑いが響く。



 狂気と快感が頭の中を駆け巡る。

 

「は、ははは…」


 無意識に笑みが漏れる。


 ダメだ!狂気に呑まれるな!このままだと()()()()()()()ラリって死んでしまう!


 

 どうにか自分を平常に保ちそう言い聞かせる。



 耐えろ、耐えるんだ!俺は死なない!ホムラに、仲間に会うんだ!


 

 無意識に炎が溢れだす。すると、ピエロが燃えて消え、地平線の方から燃焼していく。やがて全てが燃えて無くなった。



 






 脳内が正常に戻る。それに伴って意識が覚醒する。


 

 瞳を開く。


 

 目の前には、自分と同様に倒れているホムラがいた。


「大丈夫か!ホムラ!目を覚ませ!」 


 ホムラを揺らすが、唸るだけだ。額に汗をかいている。


「ルージュ!大丈夫か!」


 隣に倒れているルージュにも安否を確認するが、ホムラと同じように唸るだけだ。


 

 どうしたらいい?どうすればこの魔法を解ける!俺はどうやって戻ってきた!?どうやって?記憶が朧気だ。

 どうやって!どうやって!!二人を助ける!!!

 気持ちが昂り、自然と炎が溢れる。


 

 溢れる?あの時もそうだった……



 炎がホムラを包む


「う、ううん…」


 ホムラが呻き声をあげ、瞼が震える。


「ホムラ!大丈夫か!?俺が判るか!?」


「エンジ……暖かい……」


 よかった。まだ意識が朧気の様だが生きている。


 

 ルージュも同様に炎で包む。ルージュには炎の耐性が無さそうなので、なるべく優しく、繊細に、暖かく。


「う、うう…」


「ルージュ!」


「あ、暖かい…」


 よかった。よかった…本当によかった!


 

 安心で腰が抜ける。空を仰ぎ座り込む。


「…ありがとうエンジ。愛してる」


「俺もだ」


「ふふふ…」


 ああ、良かった…誰も死んでない。

 だが、あの野郎は許さん。ぶち殺す。


「なあ、ホムラ、ルージュ。俺はあの野郎を殺す。その間は戦いを見ててくれ、離れたとこで。今回は俺の失態だ。俺一人でやる」


「わかった」


「でも大丈夫なのですか?」


「大丈夫だ。俺なら、俺の炎なら奴の()()焼き尽くせる」


 

 俺は今、奴の元に向かっている。

 あの野郎、本当に後悔させてやる!



 奴が目の前に見えてきた。


「お"い"!テメエいて込ますぞゴラァ」


 奴にそう怒鳴る。


『!?オヤオヤオヤオヤァー?ナゼニ貴方ハ生キテイルノデスー!?』


 奴がこちらに振り返り取り乱した様に声をあげる。


『イヤシッケイ。貴方ヲ強者ト見マスヨ。エエ、見直シマシタヨ』


「テメエに見直されてもちっとも嬉しく無い」


『辛辣デスネェー』


 奴がケタケタと笑う。


「テメエの対処方はある。覚悟しろ」


 今度は鞘に炎を圧縮すると同時に炎を全身に纏う。



 これで大丈夫なはずだ。


『ワタシが幻覚ダケダトオ思イデ?』


 奴は己の周辺に黄色のボールの様な物を出す。


『デハ、敬意ヲ持ッテ名乗リマショウ。ワタシハ、魔王幹部ガ一人、ロンディエール・ピエトロ、ト申シマス。ヨロシク』


「俺は焔木延治だ。あの世への土産に持っていけ」


 互いに名乗り戦闘の構えを取る。


『デハイキマスヨ』


「バッチこーい」


 二人の魔力がぶつかり合った。

読んでいただき有り難うごさいます。誤字脱字などがありましたら指摘していただければ有り難いです。

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