十三話 旅立ち
大変長らくお待たせしました。今日から復活です。
今日、この街と別れる。
この街には少しの期間しか滞在していなかったが、この世界に来てからの初めての街だ。
この街を見つけたとき、無意識に感じていた不安が和らぎ、入っていた力が抜けたものだ。
まあ、そんな感じでこの街には思い入れがある。なので、少し名残惜しいと言うか寂しいと言うか、そんな後ろ髪を引かれる気持ちになる。
宿をチェックアウトし、ギルドに向かう。
お姉さんには旅立つことを伝えているが、ギルドにはまだ伝えていないから旅立つ事を伝えに行くのだ。
それに、Cランクに昇格してもらえるらしいので、それもついでに。
ギルドに着くと、一人の青年がこちらに走ってくる。
「エンジさあぁぁぁぁぁぁん!旅に出るって本当ですか!」
どこから聞きつけたのだろうか。旅立つ事をまだ言っていないのにルークが旅立つ事についての真偽を確認しに来た。
「ああ、本当だ」
「何でですかぁ!」
旅に出る事を肯定すると、矢継ぎ早に次の質問が飛んで来た。
声がでかくて耳がキーンってした。
「より強い奴を探しに行くんだよ。ここら辺の魔物は弱いからな。」
「おぉう。戦闘狂」
ルーク君、唖然としながら軽くディスるのは止めなさい。俺だから良かったものの。
「まあ、また戻ってくるかも知れないし、そう落ち込むな。取り敢えずギルドに旅立つ事を報告するからちょっと退いてくれ」
未だに唖然としているルークを退かして受付に行く。
そこにはいつも通り、お姉さんが立っていた。
「お姉さん、旅立つ事を伝えに来ました。」
「ええ、知っています。お別れですね。」
「暫しの別れです。また会えるかもしれません。」
「私は、この街は、貴方の帰りを何時でも歓迎しますのでたまには帰ってきて下さい。」
「はい」
「それと、私の事はこれからリアと読んでください」
「分かりました。リアさん」
「それと、ランクについてですが、エンジさんとホムラさんは無事にCランクに昇格する事ができましたので、カードの変更を致します」
無事にランクが上がるとの事なので、ギルドカードの変更をするために俺達はカードを渡す。
リアさんがカードに手続きをしてから返してくれた。
帰ってきたカードには金色の小さなひし形のマークが三つついていた。
Fランクの時には無かったので、これでランクを判断するのだろう。
「今からギルド長を呼んできますね」
カードを見ていた俺達にリアさんがそう言った。
「そこまでしなくても……ああ、森での異変があったからですか」
「ええ、一応最後に何かあるかも知れませんし」
この街には出ない強力な魔物が出現したから調査をしていた。
そんな時に俺達が馬鹿でかい狼を倒した。その狼が原因なのか、と言う話になったのだ。
そんな重要参考人の俺達だから、旅立つ前にギルド長に確認に行ったのだ。
少ししてリアさんがギルド長を連れてギルドの奥から出てきた。
「よお、旅に出るんだってな」
「はい」
「じゃあその前に渡したい物があるんだ。」
そう言ってギルド長は袋を渡してきた。ずっしりと重い袋の中身を見ると金色に光る物があった。
「それはこの前のデケエ狼の報酬だ。金貨五枚だ。」
きんか?
金貨五枚!?
金貨一枚で百万円くらいだから五百万!?
ほえーびっくり
「あの狼はBランクのストームウルフらしい。あの狼が街に入ってきていたら街は壊滅的な被害を受けていただろう。
そこも考慮してその報酬の量だ。」
成る程。それならこの量でも頷ける。これからはBランク狩りをしようかな?
「まあ旅の資金としてなら十分な量だろう。頑張れよ」
「ああ、頑張る」
「エンジさん、くれぐれも体調を崩さないように。それと、ホムラさんは大切にしてくださいね。」
「分かりました」
ホムラはその言葉を聞いて何か考えているようだった。少し考えた後
「エンジ様が私のご主人様だから大切にしないといけないのはエンジ様では?」
と言った。
「ホムラさんはエンジさんの大切な仲間なんですから、ホムラさんも大切にされないといけないんですよ。」
「そうなの?」
「そうだな。ホムラは俺にとって大切だからな。」
その言葉を聞くとホムラは頬を赤らめて嬉しそうにしながら俯いた。
「こほん。ウィールデン国の周りの魔物はここよりも強いので気をつけてくださいね」
「はい」
「では、いってらっしゃい」
「「行って来ます」」
ギルドの人達に見送られながら旅に出発する。どんな人達と出会えるのだろうか、どんな強敵がいるのだろうか。
期待を胸に俺とホムラは新しい地に向かって歩き始めた。
読んでいただき有り難うごさいます。誤字脱字などがありましたら指摘していただければ有り難いです。
これで一章は終わりです。2章の前に登場人物や設定を少し書きたいと思います。