第七話〜Reprisal 前編
「なんで私が貴女達と組まないといけないの? それに、貴女達にメリットはないでしょ」
「いんや、あるさ! まず三美華ちゃんは人気者だから、アタシらも自然と贔屓にされる! 三美華ちゃんにもメリットはあるはずだ」
八生は自慢げに語る。
要するに、手駒が欲しいから手っ取り早く人気者からゲットして……なんてことか、ほんと怖いな女子の人間関係って。
「私が人気なのは永遠じゃないと思うけどなぁ……。子供達が新しいおもちゃ好むのと同じ原理じゃない?」
「三美華ちゃん、意外と頭脳派なんだ……」
「沙良……三美華来てからまだ2日なのに知ったようなこと言うなし」
麗蘭の言う通りだぞ、沙良。
「まっ、アタシらに楯突くよりは賢明だと思うぜ? 愛海みたいにボコられたり、吊るされたくないだろ?」
八生は、脅すように煌星に迫る。
「うーん……。あっ! ちょっとトイレ行ってきてもいいですか?」
「えっ!? 別にいいけど……」
おかしなこと言うな三美華。
逃げたいならそう言えばいいのに。
「ありがとうございます! すぐに戻ります!」
煌星は廃工場から一目散で走った。
「愛海ちゃんのお仲間さん逃げちゃったねーw」
「沙良、やめてあげなよ、お仲間さんじゃないかもよw」
「愛海、三美華が助けてくれるとか、そんなのに期待したのなら、期待外れだな。結局みんなは自己中。お前みたいなやつを助けるバカなんてどこにもいねぇんだよ!」
「わかってます……。彼女と話したことは1時間にも満たないので……」
知ってた。三美華ちゃんも助けてくれないって、親ですら子を捨てたり、痛みつけるのに、赤の他人が助けてくれるなんて、私の都合の良い幻想。
それなのに、積極的に私に話しかけてくれたってだけで、私は!
「さて、愛海。てめぇの体液。醜いおっさんどもに売りつけたらいくら儲かるんだろうなぁ? もしくはてめぇを性奴隷として貸し付ければもっと儲かるよなぁ? あっ、こんな汚くて暗い性奴隷いらねぇか、じゃ、殺すわ」
八生が愛海を落とそうと歩いた瞬間。
「言ったはずだ。『すぐに戻ります』ってさ」
煌星は、いつもの格好に着替え、いつものナイフを持って、戻ってきていた。
「おいおい、三美華ちゃんさぁ、わかってんのか? 愛海はいつでも殺せる。それに華奢で身体弱いお前が、アタシらに勝てると思ってんのか?! 虚勢張ってんじゃねーよ!!!」
煌星が近づくと、沙良と麗蘭はビビリ、八生の後ろに隠れた。
「おい! なに下がってんだよ! あんな雑魚に虚勢張られたくらいでびびってんじゃねーよ!!」
「で、でも……あのナイフ怖いよ……」
「沙良の言う通りだよ、八生ちゃん……! 三美華ちゃんというより、あのナイフにビビってるの」
はぁ? あのナイフが怖い? ただ赤が混じった刃ってだけでそこまで怖がるかよ。
どう見ても虚勢張ってるだけだろ、バカか?
「その子達がビビるのも無理ないと思うよ。だって俺、人肉調理師にして、虚虐教の四琴だしさ。ここには依頼があって来てるわけ。君たちもターゲットだから食卓に並ぶね」
虚虐教だと? 確かふざけた福祉活動とかに協力したり、自殺者を減らしたりしたあの……!?
「ざけんな! アタシらが何したって言うんだよ!? ただ人殺しがしたいだけのサイコパス連中が!」
「惚けるの? 君たちいじめしたじゃん。それにサイコパスは君らの方だよ」
「はぁ!? アタシらはサイコパスじゃねぇし、いじめは悪いことじゃねぇ! いじめられる側が悪いんだ!」
煌星はため息を吐き、愛海の元へ駆ける。
麗蘭が止めようとしたが、煌星に肩を切られ、簡単に突破された。
「痛い!!! 嫌だ!! 死にたくない!」
「それ、愛海の方が何十回も願っていたことだと思うよ」
煌星は愛海の縄を切って降ろし、そう言った。
「三美華ちゃん! なんで私を助けて……」
「死んで欲しくないから!」
煌星は沙良に切りかかり、八生が煌星に脚をかけて転ばせる。
「おいサイコパス。調子に乗るなよ! なんで愛海を助けて、アタシらを殺そうとする? ふざけんな! ふざけんな!」
「あのね、『調子に乗るな』って言ってる奴が、1番調子に乗ってるんだよ。だって自分が相手より完全に上だって思ってないと出ない台詞だよね?ソレ」
煌星は再び沙良を切ろうとする。
すると八生は、彼に飛び蹴りをした。
「痛っ! お腹は狙うなよ……。流産したら責任取ってくれるのかな?」
「てめぇ、男だろ。流産するわけねぇだろ」
「バレちゃった? この外見でゴスロリ姿なのになんでバレたんだろ」
「口調でなんとなくに決まってんだろ!」
「野生の感って怖いね、今度は睾丸狙うのかな?」
「当たりめぇだろ、特殊性癖の殺人鬼……!」
煌星が沙良を切ろうとし、八生が打撃で妨害する。それを避け、攻撃を繰り返す煌星。
沙良は恐怖で立ち尽くし、愛海はどうすればいいか悩んでいた。
「君さ、脳筋ってやつなの? ひたすら睾丸狙うじゃん。痴女かよ」
「脳筋だったらアタシから攻めてるさ。変態はてめぇだろ。女装性癖が」
「生憎だけど、俺はゴスロリ以外の女物は基本的に着ないんだよ」
さぁ、どうするか、沙良を先に潰したいが、妨害される。むしろカウンター間隔で睾丸を狙ってくる。
八生を先に潰すか? でも沙良が逃げたり、助けを求める危険性がある。持久戦は避けたい……ならやるべきはーー
「えっ……? う"……!」
投げて心臓を狙うことだ。
近づくと近接格闘ができる八生に止められる。だから遠距離で狙えば、足が速くないと辿り着けない。
「バカかよ? 今のてめぇは丸腰だ。ナイフは沙良に突き刺さったまんまだ」
「愛海ちゃん! そのナイフ俺に投げろ!」
「ふえっ!? でも! 三美華ちゃんが怪我する……」
「俺を信じろ! それとも2人揃ってこいつらに遊ばれたいか?」
「わかった! 信じるよ! えい!」
人肉調理器具、通称『レイジ・クトー』は使用者の血液などを材料とし、使用者本人以外が使うと威力が激落ちする。
原理は本人認証システムと同じ。
そのため、愛海の投げナイフは、赤ん坊ですら怪我しない威力になっている。
「サンキュー! さよならだ八生。なかなか骨があったぜ?」
煌星のナイフは、八生の心臓を貫いた。
「三美華ちゃん! やったね!」
「お前……、この惨状みてそんなこと……」
「なんかスッキリしちゃって……、三美華ちゃん…私ね、ずっと助けが来ることを疑ってたの……。それで、なんか……幸せな夢みたいに感じちゃって……」
愛海は泣きながら煌星に抱きついた。
虚虐教は福祉活動や、食料の無償提供だけでなく、3話や今回のように依頼の仕事もあります。
依頼の仕組みは、被害者か、その関係者が国を通して彼らに用件を述べ、被害者の命に関わるレベル、被害者が自殺を考えるレベルだと判断した場合、依頼成立となります。
大体は海外での容疑者の銃殺の許可や、死刑と似たような感じです。