第六話〜奴隷
煌星が教室に着くまでの間、藍美と桃が話している。
「ここに3本の棒があるだろう?」
「うん、あるねぇ」
「1本だと簡単に折れる」
「折れたねぇ…」
「3本にしても………ん?2本しかないな」
「1本は今藍美が折ったよ」
「あっ…ああ…」
「相変わらずバカねえ…」
藍美はすぐに、紙で棒複数作り…
「ここに9本の棒があるだろう?」
「増やしすぎでしょ」
「だが、折れる」
「そりゃ、紙だからね…」
「つまり雑魚がいくら束になろうが無駄なことだ! 皆の衆! FPSゲームで我には勝てん!」
相変わらずバカねえ…藍美は、なんかずれてるというか…。まぁ、そこが面白いんだけどね。
「ふっ、我の完全勝利! わかったか、雑魚がいくら束になろうと無駄だと」
「藍美さん強い…」
「ただの頭おかしい人だと思ってたけど…一瞬で…」
「スコープ無し、大ジャンプしながらヘッドショットできるなんて…」
「我を崇めよ! 讃えよ!」
藍美が調子に乗っていると煌星が教室に入ってきた。
そして、煌星は見なかったことにしようと、扉を一度閉めて、また入った。
「おはようみんな!」
「「おはようございます! 三美華様!」」
おい、俺が様付けされてるんだが!? どういうことだ!?
「ああ、みんなに我が頼んだのだ。『三美華姫は魔王に囚われていて、我が助けたのだ』とな!」
「お…私はまず捕まるようなヘマはしない! それに姫は恥ずかしいから…」
「はいはい、みんな席について。朝のホームルーム始まるよ」
「ふぅー! やっとお昼!」
「藍美ちゃん! 桃ちゃん! 一緒に食べよ?」
「姫の御指名とあらば、喜んで」
「三美華ちゃん、なんか昨日よりも可愛くなってる…?」
「私が!? 昨日より!? ないない、どこが可愛くなってるの?」
「んー…口調が甘々系になってる」
うっ…! 小枝先生か、それともここの生活が楽しいからか…どっちが原因だ!?
「そ、そうなんだ… へぇー…」
「ん? 愛海と沙良に…麗蘭と八生がつるんでる? 沙良と麗蘭と八生は仲良いからいいとして…愛海とは絶対に絡まなそうなのに…」
「桃ちゃん!!」
「えっ? あっ…通知来た」
俺は八生達に悟られないように、トークで『詳しく、だけどバレないようにトークにしよう』と送った。
【八生達は不良というか、問題児で、いじめをやってたの。現に何人かの生徒が、自殺してる。だから、愛海とつるんでるってことは、仲間かターゲットかってこと。】
【なるほど。愛海はそんなことするような子じゃないから、ターゲットだろうね…自殺に追い込ませなんてさせない!】
【三美華ちゃんは愛海と知り合いなの?】
【この学校に来るときに、キラキラした笑顔で案内してくれたよ】
【そういうことね、あの子も笑うんだね】
「オラ! アタシの足舐めろ奴隷!」
人気のない空き教室で愛海は、いつもの3人にいじめられている。
「はい…舐めます…女王様……」
「ついでに手錠と首輪も付けてあげよーよ! 奴隷って感じするじゃん!」
「いいなっ! 沙良、早速やってくれ! こいつが授業出れなくなって退学したら面白いしな!」
愛海は手錠と首輪を付けられ、ロッカーに閉じ込められた。
「ハハッ、可哀想だね。机置いて出られなくしちゃえ」
「喉乾くと思うしロッカーの中、浸水させよーぜ!」
「「さんせー!」」
「あれ? 愛坂はどこだ?」
俺と桃は八生の仕業だと疑ってやまなかった。
遂に授業に出られなくするほどにエスカレートしてしまった。
「体調悪いって帰りましたよ」
八生が詐欺師のように伝え、煌星と桃は確信したようだった。
「そうか…常に顔色悪いもんな…」
【ねぇ、桃ちゃん、やっぱり八生達が…】
【私も同感。最悪殺されて…】
【愛海ちゃんを探してくる!】
【バカ! 危険だよ!】
「って言っても遅いかぁ…、三美華ちゃん…無事でいてね」
俺は愛海の名前を呼びながら校内を回った。
全ての階、屋上、空き教室。全て回ったが、愛海の姿はなかった。
「愛海…どこにいるんだよ…」
ん? さっきの空き教室の机の配置おかしくないか? まるでロッカーに蓋をしているような…、まさか!
「愛海! ここにいたのか! 心配したんだよ!」
俺は愛海をロッカーから出し、手錠を椅子の足で千切ろうとした瞬間。
後頭部を誰かに殴打され、視界が真っ暗になった。
「愛海のせいで転校生までお仕置きしないといけなくなったなぁ?」
「せっかく人気だったのに可哀想だねぇ」
「今どんな気持ちかな? 奴隷ちゃん」
目が覚めると俺は廃工場とみられる場所にいた。
拘束はされてないが、愛海が縄で縛られ、吊るされている。下には尖った木材……なるほど、そう来たか。
「お目覚めか、転校生」
八生…わかりやすく金髪ギャル…こいつが主犯か。
「なんでこんなこと…」
「決まってるだろ? 楽しいからさ! みんなだって娯楽があるだろ? それと同じさ! アタシはこういう根暗を絶望させて、殺すのが娯楽!!」
「流石八生様!」
「麗蘭…それ私が言おうとしてた…」
沙良は清楚って感じで、麗蘭はアイドルにいそう…、なんでこんな奴らまでいじめなんか…
「なんで愛海は吊るしてるのに私には何もしない…? 逃げたり加害を加えられることは想定していないのか?」
「してるからあの奴隷をいつでも始末できるようにしてるの。それに逃げてくれるなら美味しいし、加害なんて加えられやしないよ。アタシ、中学の時はレスリングやってたしな。それと転校生…いや、三美華ちゃんーー」
八生は捨て猫を扱うように
「私たちと組まない?」
煌星を勧誘した。
藍美のFPSゲームの上手さはプロ級で、中学生限定大会では優勝、高校生以下の大会でも優勝を飾っている。