第三話〜飛び割る斧と狂気の針
今回は主人公出ません
俺は千歳蒼羅。『虚虐教』の『四琴』の一人だ。
「わお、すげぇ人集りだなオイ」
『アパートの立て篭もり犯が五十人以上を転落死させて、警察からそいつを調理するようにと依頼が来た。頼んだ』って叶夢が言ってたが…
「えっ…なにこれ…死体?」
「危険です! 近づかないでください!」
転落死させられた被害者の遺体がぐちゃぐちゃになっている。しかし蒼羅は何も感じなかった。
「あっ、どーも、依頼された蒼羅です」
「君が人肉調理師の…噂は聞いております。中へどうぞ」
「いや、中じゃなくて上に行かせてくれ」
警官は首を傾げた。そりゃそうだ、だが俺の道具的には上の方が適任だ。
「待ってください! 中にはまだ人質にされてる方が! 最低でも女子供を先に解放されてからにっ!」
「人質には被害が及ばないようにするし、それにーー」
蒼羅は侮蔑の眼差しで警官を睨み。
「俺は女子供優先が善と思ってるやつが一番嫌いだ。そんな考えのやつがいるから自殺者出るんだよ、わかんないか?」
警官は震えて、ただただ、頭を下げていた。
6階建てのアパートの5階、502号室に立て篭もり犯はいた。小太りの中年男、人質は八歳の男児、六歳の女児、そして、その二人の両親だ。
「怖いよ…助けて…」
立て篭もり犯は女児を蹴飛ばし
「うるせぇ! 助けなんてこねぇよ、見せしめに何人殺したと思ってるんだガキ!」
「さ…紗夜を泣かせるな! おっさん!」
「あ? おっさん呼ばわりかい? 坊や。お仕置きが必要みたいだね?」
立て篭もり犯が包丁を持った瞬間、天井が裂けた。
「だらっしゃぁぁぁぁ!!!! あれ? 外したか?」
蒼羅が斧で上から天井を粉砕したのだ。斧は立て篭もり犯の足を直撃し、骨を砕いた。
「いっでぇぇぇ!!! あ、足が…足の感覚が…!」
立て篭もり犯は泣き叫ぶ。気が動転しすぎて何が何かわかっていないようだ。
「ちゃんと脳天割れたと思ったんだけどなー…まっいっか、今仕留めると鮮度落ちるし、このまま回収しておさらばするか」
蒼羅が立て篭もり犯を引っ張っていき、警察が部屋に辿り着く。彼らが人質の縄を切ると、男児が
「ありがとう! お兄さん! いつか! お兄さんみたいなカッコいいヒーローになるよ!」
いや、それは人肉調理師の俺じゃなくて警察に言えよ。だけど……
「悪くないと思うぜ、妹のために勇気を出せたお前なら、なれるさ」
蒼羅は笑って言った。
私は藤川奈々。手頃な頭蓋骨を探してるの。ジャストタイミングでお仕事が入ったの!
『奈々は羽田空港に現れたテロリスト二十人の対処に当たってくれ。肉にはするなと政府から指示があるが、主犯以外の頭蓋骨は貰えそうだ』
しかもね! この水色のドレス可愛いの! 背中にリボンがあってね!
「妙なことしたら撃つからな!」
「サツを呼んでも悪化するだけだぜぇ!」
私がドレスに惚れてる最中なのに…テロリストはうるさいなぁ……!
「……君たち……静かにしてよね……! 私の幸せな時間を……よくも……!」
テロリスト達は奈々を頭のおかしいやつだと判断し、銃を向けた。
「……なに? やる気? いいね、そういうの……」
奈々はショルダーバックから頭蓋骨と数本の注射針を用意して戦闘形態に入った。
「な、なんだこのガキ、も、持ってるの、頭蓋骨だ……」
「馬鹿野郎ビビるな! どうせおもちゃだ!」
今いるテロリストは二人…他のところにもいるのかな……
「……貴方達は主犯? 下っ端?」
「俺達のリーダーは乗車口に…ぐはっ!」
奈々は頭蓋骨をテロリストの顔面に投げつけた。テロリストの顔は歪み、血で染まる。
「えっ……? 相棒……?」
もう一方は油断し……そのまま頭蓋骨を回収した奈々が顔面を殴打した。
「撃ちまくれ! 俺ら七人ならあのガキぐらい殺せる!」
「「イエッサー!」」
だが全て当たらない、正確に言うと全て頭蓋骨でガードされている。奈々は注射針を人数分用意して、投げると、全て命中し、テロリスト達は苦しんだ。
「な、なんだこれ……吐き気が……オロロロロロ!」
「全身が……蜂に刺されたように痛い……!」
「……私の自作のお薬……やっぱり殺傷能力に欠けるなぁ……」
奈々はそう言ったが全て放っておけば確定で死亡する代物である。治療すれば別だが、同じ効果の物は彼女は作らない。故に、治療方法を導きにくいのだ。更に相手はテロリスト、治す人などいない。
「動くなお嬢ちゃん」
奈々は背中に銃を突きつけられて、ダッシュをやめた。生き残りのテロリスト達が集合し、主犯と見られる男が続ける。
「なかなか強いんだな、お嬢ちゃん。それに可愛いね、愛玩用としてついてきてくれるなら見逃してあげるよ?」
キモ。下心丸出し。私に話しかけてきた女達みたい……イライラする……!
「……貴方が主犯……でいいの?」
「ああ、それを知ったところでお嬢ちゃんは何もできないし、教えてやるよ。さぁ! 俺達の性欲を満たしたくr……」
奈々は注射針を主犯以外のテロリストへ、頭蓋骨を主犯へ投げつけた。
「痒い! 全身が痒い!」
「なんか……意識が朦朧として……」
「歯が抜けて……なんでだよ!? たしゅけ……」
主犯は頭蓋骨を投げつけられたにも関わらず直立している。そして、落ち着いた様子で
「ほう? 面白いことをするお嬢ちゃんだ、まさかお嬢ちゃん……人肉調理師かい? 流石に強すぎるよね? 武器が」
「……貴方は生かすように頼まれた……なのになんで……なんで立ってるの? それに……なんで知ってるの?」
奈々は少し動揺している。
「ふふ、お嬢ちゃん可愛いねぇ! 俺を生かす? 難しいんじゃない? 殺しちゃうか、君がペットになるかしかないと思うんだけどなぁー? 人肉調理師なんて今や殆どの人が知ってるよ? 『自衛隊の攻撃特化版』とか言ってる人もいたなぁw」
私が近くに倒れているテロリストの頭を、持っていた頭蓋骨で切り離すと、主犯は驚いて震えた。
「お……お嬢ちゃん? まさか……そうやるのが趣味なのかい?」
「やっと気づいたの? でも、遅いよお馬鹿さん! おやすみ♡」
主犯は首を蹴られて気絶した。
「……ふぅ……疲れちゃった……。この人の頭取っちゃったけど……前より掴み心地良さそう!」
奈々は上機嫌で帰り、駆けつけた警察がテロリストを確保した。
奈々の薬は自分で材料を集めていて、どれも最終的には死ぬようにトリカブトを薄めて入れている。