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獣肉が禁止になったなら人肉を食べればいい  作者: 翠水晶
第二章 見回り仕事編
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第十一話〜交差する炎刃

「い、インフェルノって……あの死体を灰にする殺し屋の……」


 令嬢が怯えていると、殺し屋は『俺も有名になったものだな』と感心し、刃物で胴を真っ二つに切った。

 彼女は激痛に発狂しながら、腕で這い、部屋の出口を目指した。


「どこに行くんだ? っていうか、血残すのやめろよ、燃やさないといけないモノ増えるだろうが」


 彼は刃物を2つに分け、それらを使って火を起こし、その部屋には灰のみが残った。



「……今の音どこからですか?」


 奈那は廊下で、客人と思われる紳士に話しかける。


「かなり上の方だと思うけど、お嬢ちゃんどうしたの? もう遅いし、寝た方が……」


 このホテルは二十階建てで、上位5階がスイートルーム。

 音の出どころはスイートルームと考えるのが妥当……?!

 十五階まではエレベーター。そこからはどうやって上がるのかはわからないけど、私の想像だと、嫌な予感しかしない……!



 殺し屋は十八階に降りた。

 今度のターゲットは、ヤクザの組長。


「誰だてめぇは! 若造が何の真似だ!」

朱鳥(あかみとり)組の、朱鳥 木吉。お前も暗殺しに来た」


 殺し屋は、まるでターゲットがスイートルームに泊まるのを知っているような口振りだった。


「ふっ、はっはっはっはっは! 若造は夢を見過ぎだ! 現実を見ろ! ワシら、裏社会の人間はな! 銃を持ってるんだ!」


 木吉の弾丸は、巨刃に簡単に弾かれた。


「少しは頭が回るようじゃないか。君みたいな若造も最近は減ってきているな」


 木吉は焦る。

 あまりにも刃物が大きい。拳銃は防がれて終わりだ。

 組の人間はみんな下の階で寝ている。


「どうした? 前より威勢がないぞ?」

「若造。朱鳥組に入らないか?」

「断る。ヤクザよりも殺し屋の方が向いてるんだ」


 考えている隙を突くという、木吉の作戦は見事に失敗し、切断され、焼かれた。



 煌星は風呂から上がり、服を室内の洗濯機に入れたことを思い出し、『どうせすぐ寝るし、朝には乾くだろ』と考え、浴衣を着た。


「あれ? 奈那はどこ行った? おーい! 奈那?」


 奈那のことが心配になったが、前の仕事の疲労により、強化された眠気が襲ってくる。

 彼はベッドに入った途端に熟睡した。



「やっと十五階! ここから螺旋階段を通って、十六、十七、十八!」


 奈那は十八階に辿り着き、殺し屋と鉢合わせした。


「ん? お嬢ちゃんどうした?」

「……あなた? さっきの音の原因」

「さっきの音? どういう音かな?」


 煌星は、睡魔のおかげで聞こえなかったが、奈那には聞こえていたのだ。


「……金属と金属がぶつかり合う音よ、火が出るくらいのね。もちろん、今のも聞こえた」


 殺し屋は『こいつすごいな』と思い、フードを上げた。

 彼の顔には切り傷の跡があった。


「君は、人肉調理師かい?」

「……そうだよ。虚虐教の四琴」


 殺し屋はニヤけた。

 ついに、人肉調理師の実力者と一戦交える! そう思ったのだ。


「決めた! 1つ勝負をしよう」

「……勝負? どんな?」

「俺のターゲットは全員スイートルームにいる。こいつらが死んだら、俺と戦え、守り切って俺が退散したらハッピーエンドだ」

「……別にその人たちが助かろうと知ったことないんだけど」

「そういうことじゃない。俺は死骸を灰にするんだ。人肉調理師(お前ら)からしたら食品ロスだろ?」

「……確かに。でも無闇に狩っちゃいけないんだよね」

「そうか。じゃあ勝手に勝負開始と行こうか! スイートルームが終わったら、このホテルの奴ら全員殺してやってもいいんだぞ?」


 奈那は煌星を想い、彼に続いて、十七階の部屋に向かった。



「君もアクロバットで移動するのか。よくそんなフリフリでできるな。邪魔だろ」

「……慣れてるからどうでもいい」


 1分も経たない内に、2人は十七階スイートルームに突入した。

 中にいたのは大手IT企業の副社長だった。


「なんだい君たちは!?」


 副社長は尻餅をついた。


「富川栄一郎。お前がターゲットだ!」

「……させない!」


 殺し屋が刃物でターゲットの腰を切断しようとしたが、奈那が頭蓋骨で彼の腕を殴打したため、上手くいかなかった。


「……邪魔だから失せて。このままだと灰にされるから」

「あ、ありがとうございます! お嬢ちゃん、夜更かしはダメだよ」


 富川が慌てて外へ逃げると同時に、殺し屋が螺旋階段を目指す、続く奈那。

 別に彼女には正義感もないし、ターゲット達が可哀想だとも思わない。

 煌星が狙われることだけを気にかけているのだ。


「ひいっ! もうダメだ!」


 殺し屋の腕に麻酔薬入りの注射針が刺さる。


「麻酔か……、だが、俺の片腕を封じるには濃度が弱かったようだな」


 奈那が用意したのはほとんどが薄く、トリカブトも入れていない、見回り仕事用の薬だったのだ。

 頭蓋骨以外は殺傷能力がないので、これは二つ名に針が入っている彼女にとっては、苦しいハンデであった。


「……阻害できるなら、それでもいい」

「読めないな、調理師。だけど、そこが気に入った!」


 このぶつかり合いをしている間に十六階のスイートルームに到達した。

 中には新婚夫婦がいた。

 いくら奈那でも2人を守るのは厳しい上に、富川は逃げ惑っている。

 

「俺は3人殺せばゲームクリアだぜ? なんならホテルにいる虫どもを1匹残さ……ず」


 奈那が注射針を投げるも、全て弾かれてしまった。


「……煌星お兄ちゃんは! 虫じゃない! 他の輩と一緒にしないで!」


 彼女は、煌星に対する侮辱を感じ、憤っていた。

奈那の頭蓋骨は人肉調理器具(レイジ・クトー)ではありませんが、普通に鈍器として使える上に、毒薬入りの注射針を何本か持参しているので、実質的には、人肉調理器具(レイジ・クトー)を持っている煌星と同等の強さです

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