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獣肉が禁止になったなら人肉を食べればいい  作者: 翠水晶
第二章 見回り仕事編
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第十話〜男女で高級ホテル

今回から本編新章

 私は藤川奈那。

 今、隣にいる煌星お兄ちゃんと一緒に見回りしてるの。


「なぁ、奈那。どうしていきなり積極的になってくれたんだ? 前までガン無視だっただろ」

「……実は、煌星お兄ちゃんのことを、女だって思ってたから」


 仕方ないじゃん。顔立ちとか、体格とか、どう見ても女だったし! 蒼羅さんの話で7割信じてたけど、夜な夜なアレを確認して確信したよ。


「ああ……。そういえば女の子苦手なんだっけ?」

「……おかしい? 女なのに女が苦手って」

「いや、おかしくないし、俺も歳近い男苦手なんだよね」


 やっぱり煌星お兄ちゃんは優しい。

 私が変人だと思われないように、しかも私が頭蓋骨を掴める時間を作れるように、頭蓋骨が入る大きさのリュックを買ってくれたし、今のだって……



 女子校での依頼仕事から2日休みを挟んで、俺と奈那ちゃんは見回りを頼まれた。

 なんで虚虐教の中でも戦闘力がある四琴の半数をそんなことに使うのかわからない。

 ただ、これも意味があることに変わりはないし、他の戦闘力のない人だと、自衛ができないというリスクもある。

 バランスって難しいよな。


「すっかり暗くなったな。どこか泊まるか?」

「……うん。叶夢お兄様のお家から数キロ離れてるし、近くのホテルで泊まりたい」


 現在地から1番近いホテルは高級ホテル。

 俺の所持金は五十万だが、2人で一泊するとなると……

 残高が2桁以下になる自信がある。


「……ここにする? 煌星お兄ちゃんはいつものゴスロリ姿だし、私も前のお仕事のときに着たドレスだし」


 服装のこと心配してるんじゃねぇんだけど?

 

「えっ、それ着て戦ったの?」

「……えっ、うん。私こういう服結構あるから」


 女の子のナチュラルなファッションセンスの高さ怖い!

 とりあえず俺たちはこの高級ホテルに泊まることにした。



「「いらっしゃいませ」」


 夜の7時だというのに、ロビーはお金持ちの人がららほら見える。

 私が受付の人を警戒していると、煌星お兄ちゃんは手を繋いで、安心させてくれた。


「2人で一泊したいんですけど、おいくらですかね?」

「身分証の掲示をお願いします」

「あっ、はい。奈那。身分証ある?」


 私が無言で渡すと、煌星お兄ちゃんは私を妹を見る目で笑いかけて、受付の人に渡した。


「はいっ、スイートルームだと二百万、ノーマルルームは五十五万円になります」


 煌星お兄ちゃんは焦ってる。

 スイートルームじゃなくていいのに……


「すみません。所持金が五十万しかないんですけど。この子だけは泊めてあげられませんか?」


 えっ? 煌星お兄ちゃん!? なんで!?


「え? そこのお嬢さんお一人だと、二十五万円になります」


「……待ってよ煌星お兄ちゃん!! 煌星お兄ちゃんはどうするの!?」

「俺は野宿するよ。昔のことで慣れてるんだ」

「……だめ! そんなのに慣れちゃ……!」


 言い合っていると、受付の人が『あのー』と話しかける。


「なんですか?」

「お2人共、林叶夢様の関係者ですよね? それなら五万くらいは引けますよ」

「本当ですか! ありがとうございます!」


 

 この二十階建てのホテルの上位5階がスイートルーム。

 私たちが泊まるのは六百八号室。


「はぁ〜! 一時はどうなるかと思った〜!」

「……私八万持ってるから、割り勘できたのに……」

「大丈夫! 一応男女で来ているんだから、歳下の女の子に割り勘してもらうのは白い目で見られると思うし」


 さっきのやり取りの方が白い目で見られると思うのは私だけなのかな?

 えっ? 男女で…高級ホテル……!?

 どうしよう! 深く考えてなかった! 見回りも人通り多いところ通ったし……

 き、今日のお仕事ってデート!?


「どうした奈那? 先にお風呂入るか?」

「……! 一緒に入る!」

「えっ? えぇぇぇぇ!? 流石に付き合ってもない男女で混浴は……」

「……でも、同じ部屋だよ? 煌星お兄ちゃんは女子校でお仕事していたんだよね? それに比べたらハードル低いと思うよ?」

「こっちの方が高いわっ! 入浴は裸! 学校は着衣! 変なこと言ってると、俺が先に入るからなっ!」

 

 煌星お兄ちゃんは、照れながら怒って、乱暴にお風呂の扉を閉めた。



 奈那ってあんな惑わせキャラだったか? 

 なんか俺と混浴するとか馬鹿かよ。セクハラされたらどうするんだよ! しねぇけど。

 シャワーでシャーして湯船でくつろいで落ち着こう……

 流石高級ホテル。ボディーソープも、シャンプーも、リンスも、高品質な物だ。

 あれ? シャンプーとリンスってどっちがどっちだったっけか?

 とりあえず混ぜればいいのか? それとも交互に使えばいいのか? 

 やっべぇ……。わかんねぇ……



 私。煌星お兄ちゃんに変なこと言っちゃったかな……

 そうだよね。煌星お兄ちゃんからしたら、私は妹みたいな存在で、彼女とは違うもんね。


 私がリビングで頭蓋骨を掴めんで、心を落ち着かせようとしていると、上の方から何かが聞こえた気がする。

 でも、私は心に余裕がないから、無視した。



 同刻、ホテル十九階。スイートルームでは、巨大な刃物を持った、グレーの服を着た青年が、室内の三十代令嬢に刃を向けた。


「あ……貴方。何者なの!?」


 怯える令嬢に、青年はねっとりと答える。


「俺か? 殺し屋と簡単に言うのは俺の趣味じゃない。俺に殺された奴らが勝手に名付けた二つ名でも教えてやるよ」


 人に一度踏み潰された蟻のように怯え惑う令嬢に軽蔑の目を向け、こう言った。


「俺は『交差する炎刃(クロス・インフェルノ)』らしいぜ」

見回り仕事は、虚虐教には社会的信用があるため、警察の負担軽減のために、パトロールをします。

依頼仕事と異なるのは、特別なケースを除いては、殺害をしてはいけないという点。

特別なケースは

・正当防衛

・凶悪犯罪者と遭遇した時

・他の調理師の依頼ターゲットと遭遇した時


後、もし殺してしまった or 殺す前でも、虚虐教の依頼仕事にすることで、合法になります。

しかし、これらのケースは珍しいので、基本的には、戦えない調理師、人を調理するだけならできるけど、人を殺すのに躊躇ってしまう調理師が担当します。

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