プロローグ〜人肉調理師
ある日突然……
「動物愛護法改正により、牛肉等の獣肉の販売を禁止することを表明致します!」
獣肉が禁止になった。
「なぁー? 坊ちゃんさぁ? 俺らのこと舐めてんの?」
「い、いえっ……舐めてません!」
「オレッチ達をジロジロ見て置いて、『舐めてない』は信憑性がねぇんだよ! 締めるぞコラ」
大人しそうな男子中学生に絡んでいる2人組の不良
中学生が号泣し出したその時。
「2人がかりで弱いモノいじめする奴らは舐められて当然じゃね?」
サバイバルナイフを持った灰色のフードを着た、18歳の少女がーー家畜を見るような目で不良を見下していた。
「なんだてめぇ、メスが如何んな!」
うわー、こいつ俺のこと女だと思ってる……やっぱり髪長いとそうなるのか……
「俺達優しいからさ? 女の子は逃げた方がいいぞ」
「そっか、俺は優しくないから、人肉調理師として、切ってあげるよ」
ーー人肉調理師は人を殺害・調理することを国に特別に認められた、いわば殺人鬼のサイコパスがなるような職業である。
「ち……調理……!? オレッチ達を!?」
不良2人の笑い声が廃工場に響く
「お嬢ちゃんのような華奢な子が、俺達のような不良を切れるわけがっ……!?」
調理師のナイフは不良の右手を、まさに肉を切るようにすんなり……
「いっでぇー!!!!!!!」
「ゆ、雄二……手……手が……」
切断した。
「ごめん、腹減ってるから、切っちゃった」
えっ……何この人強すぎ……人肉調理師って凄い。
「た、頼む! 俺達を……いや、せめて雄二だけでも! 見逃してください!!」
「俺にメリットは?」
「めっ、メリット……!?」
「ないよね? さよなら」
彼は無慈悲にも、不良達の心臓を刺した。
「君ーー」
次は僕を切るのかな……えっ、僕死ぬの!?
「これから調理するけど、一緒に食べる?」
「えっ?」
俺は毛深い奴が嫌いだ、なぜならーー
「あー!! 下処理めんどくせー!! 普通にステーキでいいや!!」
皮膚剥がしが大変になるからだ。一方で、ステーキ等のように、焼くと皮膚剥がしはいらない。だが俺の得意分野は『切ること』だから、普通に悲しい。
「あの……なんで泣いて……」
気遣われた、さらに悲しい。これでも『虚虐教』の幹部の中でも上位の『四琴』なのに……
「俺ってそんな女の子に見えるかな〜ってさ」
とりあえず逸らす、中学生は慌てふためいたが、どこか納得したようだ。いや、待て、何に納得した!?
「お強い男の娘なんですね? すごいです!」
あー、女の子が不良を余裕で切れるわけがないって思ってたのか……俺も素の力じゃすぐ負けてただろうけどなぁ……
「おっ、焼けた焼けた、じゃ、いただきまーす」
「いっ……いただきます!」
塩加減ミスった、牛肉ステーキに近づけるはずが……これだと……
「ポテトみたいで美味しいですねっ!」
「あっ……ポテトか……うん……ポテトだね、あはは」
ポテト言うな、焼く料理は得意じゃないんだよ……
「そういえばお兄さんってどういう人なんですか?」
食後に少年が尋ねる。
「おっ、俺!? 俺はーー『虚虐教』の霧咲 煌星 18歳だ。」
少年は目を輝かせる。
「き……虚虐教の方……!? すごい! 日本の自殺率が8割低下した要因と言われる……あの……」
「へぇ〜、知ってるんだ、俺らも有名になったんだなぁ〜」
肯定されて笑みが溢れる。気分が良い……優越感に浸っていると電話が鳴る。俺のだ。
「はい、もしもし煌星です」
「煌星、これから四琴メンバーで俺の家に集まるが、来れるか?」
電話の相手は、林 叶夢、虚虐教のリーダーであり、創設者だ。
「はいっ! 行きます! 何時に行けば良いですか?」
叶夢のお家で集合……! 最高すぎるだろ……!
「夜の7時半だ、夕食は俺が出すから、腹空かせておけよ」
ボスの料理!? 最高すぎるだろ!?
「わかりました!」
「あのー……」
やべっ……この子忘れてた……」
「ああ、ごめんごめん、俺帰るから……! じゃっ!」
煌星は手を振りながら帰り、救われた少年は感謝の言葉を呟き、帰った。