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「人外歓迎!異世界宿屋  作者: deke
第二章 リザードマン
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第六話 エルフ姉妹の温泉事情 すれ違い②

第6話 エルフ姉妹の温泉事情 すれ違い②


『はいー、お姉ちゃんのカンナだよ。やっぱりナズナにはお花が似合うね。』


 にっこりと笑い、肩には先程呼び出した小人達が乗って姉と共に微笑んでいる。頭の上に乗せられた何かに触る。馴染みのあるそれ、小さいときは良く冠を作ったりしたのだが最近では触れる機会すらないシロツメクサの花冠だった。


『ちょっと、姉さんこれ一体どういう事!?説明してよ!』


『そんなに目くじら立てないで。折角の美人が台無しよ。そんなにシロツメクサの花冠は嫌いだった?』


『そうじゃなくて!叫び声が聞こえたから姉さんが魔物に襲われたのかと思って飛んできたんだよ!なのに、何してるの?』


『あら、そうだったの?ナズナが不機嫌だったから元気付けようと思って、何が良いかと探していたらシロツメクサの花畑があったの。それで叫んだって訳。小さい時からお母さんに怒られてもわたしが編んだ冠を被ると元気になるから今回もなるかなって思って。色々誤解させちゃってごめんなさい。でも、少し嬉しいでしょ?』


 満更でもなかったのか表情は少しだけ柔らかくなり、はにかんでいる。


『何歳の時の話してるの?まぁ、嬉しいけど...でも、本当にお姉ちゃんがおそわれたんだとおもったんだからね!?』


『この辺りは魔物だって少ないし平気よー。それに、魔物ぐらいどうって事無いし』


 近くの石を拾い上げて拳を握る。その手を開くと粉々になった石がサラサラと地面へと還って行き、小人達は血相を変えて葉っぱに戻ってしまう。


『あ、うん、だよ...ね』


 悲しげに呟き妹のナズナは再び俯いてしまった。



『ねぇ?ねぇってば...』


『ん?ああ...ごめん姉さん...どうかした?』


『さっきから呼びかけてるのに元気無いけど大丈夫?やっぱりシロツメクサの花冠は嫌だった?』


『違うの!その、なんて言うか少し考え事...』


 川に戻り、辺りにあった木の枝と持っていた釣り糸や釣り針で即席の釣竿を作ると川から魚をあっという間に数匹釣り上げる。カンナの手には山菜のザルが握られ、ナズナは立派な川魚を網に入れ、背中に背負う。何かの魔法なのか、中には水が入っているのだが編の隙間から水が漏れてくる事は無さそうだった。



 そうして、再び山を降り出す。先ほどよりも後ろを歩く妹の顔がこわばっていることに気がつき、声を掛ける。


『ナズナ、何があったら言ってね。力になるから』


『うん....ありがとう』


 弱々しいへんじが帰ってきてからは暫く沈黙が続く。明らかにナズナが何かに悩んでいることは明白であった。しかし、それが何なのかさっぱり検討が付かない。


『姉さん?やっぱり今日は家に戻らないの?』


 いつもは十分な山菜を取り、魚を取ったら家に帰るのだが今日に限ってはそこから山を降りるのは初めてだ。


『うんー?今日はちょっと特別な事しよ。ついてきて。』


 そしてそのまま二人は山を降りていく。


『あ!雛野さんが居る』


『え?誰?姉さんちょっと!』


明るい顔で走り出すのだが、追い付けない。


『雛野さんー?久しぶりー』


 ぴょんぴょんとウサギの様に飛び跳ね気味に近づく。満面の笑みを浮かべる。


『お久しぶりです、カンナ様。本日はご宿泊なさいますか?』


 ホウキで地面を掃く手を止め、朝見せた醜態を全く感じさせない完璧な対応をする。あんなに騒がしく宿中を走り回っていたのに、立派な下駄を履くその姿はもう若女将としか形容できない。


『ちょっと、姉さん走るの早すぎ』

 

 遅れてやってきたナズナが息を切らし肩を震わせる。これまでにないぐらい苦しそうな顔をし、顔を赤らめ汗を流す。


『ふふ。ごめんなさい。つい走っちゃった。今日は妹と泊まります。それとこれ、お土産です。』


『あら、気を使わなくて良いのに。後でみんなで頂きましょうか。』


 手を軽く二回鳴らすと山菜と魚の入ったザルが消えてなくなった。

 

『お部屋の準備しときますので、先にお風呂で汗を流してください。鍵はどうしますか?』


『この前メモリーした温泉も捨て難いけど、今回は妹のに浸かりたいから新しい空白のキーをお願いします。』


『畏まりました』


 右目を静かに閉じてウインクをすると手に持っていたホウキが何処かに飛んでいく。空いた掌のに魔力が集まる。空気がビリビリと震え気がついたときには純白の西洋風の鍵が出来ていた。


『こちらがお風呂鍵になります。ごゆっくり。』


 その鍵を受け取り、二人の姉妹は宿の中に入る。姉は相変わらずおっとりしていたが、妹の方は驚きを隠せない。



『姉さん!ここは何?それに、さっきの人、最上級魔法の創成魔法を顔色変えずに使ったよ!』


『さっきの女将さんについては何も知らない。ここは、温泉旅館って言ってお風呂に入ったり美味しいご飯を食べる所。前に足怪我した時に見つけたの。一緒にお風呂入ろう!』


『あ、ちょっと!』


 宿に入り履き物を脱いでそのまま進む。右が男湯で左側女湯なのだが、半ば強引に妹の手を引っ張り女湯へと連れ込む。



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