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「人外歓迎!異世界宿屋  作者: deke
第二章 リザードマン
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第28話 薄い魔力と濃い魔力

第28話 薄い魔力と濃い魔力


 身体が重く動かない。指先を動かそうとしても骨が軋み、頭の中でキィキィと音が鳴るだけなのだ。


「あれ?私、死んじゃった?やりたい事はいっぱいあったんだけどもうどうでもいや...でも最後に謝りたい人は沢山いたな」


 リザードマンの女の子は死を覚悟し、身体から力が抜けていく。だんだんと喉が乾いていよいよかと思いきや身体がじんわりと暖かい。何かに包まれているようなそんな感覚。


 と言うか、熱すぎる。体の芯までもが熱くなり凄くポカポカしているのだ。


 かと思いきや急に息苦しくなり息を吸うと鼻から猛烈な勢いで熱い液体が入ってくる。


「あっちっい!」


 体を起こし鼻に入ってしまった液体を急いで外に出す。


「ゴホッハァゴホッ!」



 思い切り咳き込み辺りを見回す。ゴツゴツとしながらも手触りの良い石に囲まれて作られた湯船。その中に透明なお湯を張りそこに浸かっていた。



 隅には柚の木が植えてあり、時折そこから身が湯船に落ちる。しかし、それ以外はなんの変哲もない。


「何コレ?誰の鍵の温泉?」


「やっと起きました?」


 湯気が立ち上る中で背後から急に声を掛けられ、身構える。


「鱗、色は褪せたけどまだ体に付いてますね〜。髪の毛、湯船に浸らないようにしてあげますからこっちに来て下さい」


 立ち上る湯気の中から出てきたのは髪の毛が湯船に浸からないように手ぬぐいで固定したリンだった。


「リンさん...確認なんですけど私が今そっちに行っても大丈夫なんですか?」



「もひろん、だいしょうふにきまってんじゃがないのどすかー」


 顔を赤らめていたのでもしやと思い目を凝らす。リンの近くの湯船にはお盆が浮かびその上には白く濁った徳利と透き通った紅いお猪口に硝子細工で刻まれた紅葉の酒器が乗っていた。


「じゃあ、お願いします...」


「ほんなに緊張しないえでね~。痛い事しないから」


「何で髪の毛を結うだけなのに痛くするって言葉が何で出てくるんですかー!?」


「そはゃあ、、こんなに瑞々しくて華奢な体があっはらねぇー」


 キュッと型に手を触れ親指で肩甲骨辺りを押す。


「え!?ちょ!?はぁーーーぁぁぁぁぁあ!」


 柔らかく解れた体を揉まれると息が漏れる。


「うーん、柔らかくはなってるけど鱗取れないね?」


「あっ!ホントだ。紅い色も抜けてますけどどうなってるんですか?後、湯船に溶けてる赤い色素ってまさか血!」


「違うよー。まぁっとりあえずはこれでも飲んて。話し長くなるから」


 呂律もうまく回らないのに手早く髪を纏めて手拭いでそれを固定するとお猪口に黄色がかった酒を注いで手渡した。


「私、そこまで強くないからあんまり沢山は...」


「御託はいらないからグビッとのー」


 後ろから出て目を塞ぎ酒を飲む手伝いをリンがする。抵抗しようにも目隠しをされたのに驚き口を大きく開けてしまった所に勢いよく酒が入っていった。


そして...


「ゴクリ!」


 反射的に口の中に入ったお酒を飲み込んでしまったのだ。


「味はどれすかー?豊穣の神とか崇められていた時に覚えた作り方なんへすよー。あら、もうお猪口が空。もう一杯〜」


「いや、わたひはもう...」


 そんな静止を振り切ってもう一杯、またもう一杯と飲ませて行く。


「もっっほのみたいてます。あれ?徳利がもうはい?」



 完全に出来上がったシイナがお盆の上に置いてあった徳利を揺すり催促をする。



「無くなったならすくれば良いんですになー」

 

 空になった徳利にリンが息を吹きかける。そこに湯船の温度を調整するために置かれていた甕。お湯を埋める冷水が入っているのだが、湯船から出てそこから柄杓で徳利に水を入れた。


「呑んへみて」


「ん!」


 湯船に戻るとお猪口スレスレにお酒を入れた。


「苦いてすぬ。ゆっくり伸びます」


先程よりもチビチビとお酒を飲む。


「私は熱くなっちゃったから少し体冷はすー」


 湯船の周りの大きな石に座り直し、足だけを湯船に浸す。


 胸の谷間辺りを人差し指でなぞる。するとオレンジ色に光るビー玉程の球が出てきた。


「酔うのは楽しいけど、話す時には少し邪魔だから徳利に入れますねー」


 身体からアルコールが消えたのかスッキリとした表情になっている。



 暫くして徳利の中からパチュンと何かが弾けるような音が響く。



「じゃあ、これからお話ししますけど大丈夫かな?シイナちゃん、私の話を理解できそう?」


「まだまだ酒が足りへんー。もっと飲めば大丈夫れすよー」


 完全に呂律が回らなくなり、出来上がっていた。


「飲ませすぎちゃったかな?ヤバくなったらこれにて捕まって下さいねー」


再び湯船に息を吹きかける。湯船に浮かんでいた柚子が羊の縫いぐるみのようになり、プカプカと浮かぶ。


「はーい!勿論ですよー」


 そう言いながら一番近くに居た羊を捕まえると体の全てを預けながら酒をチビチビと飲み進めて行った。



 先程まで瀕死の身体だった2人なのだが、今は見る影もない。健康体そのもので、酒がどんどんと進んでいく。



 最初はお酒を飲むことを渋っていたリザードマンのシイナもノリノリであった。

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