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「人外歓迎!異世界宿屋  作者: deke
第二章 リザードマン
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第19話 真実

第十九話 真実


「俺たちのことなんて聞いてどうするの?俺たちはただの盗賊。バックパックの中身を見た時点で分かってるでしょ?それよりも、お姉さんの事を聞きたいな」


「ほーら、話逸らさないで?質問してるのは私。この砂漠じゃ、弱肉強食がモットーで弱い者は食われるまで砂漠から出ることはできない。あんた達3人の命を握ってるの私なんだから、素直に話してくれない?」


 リザードマンの女の子が外套を深々と着込み、真ん前の丸太に座り足を組む。



 言葉は柔らかく優しいのだが、その目はまるでゴミを見るかのように冷たい。



「じゃあ、何で俺たちが盗賊じゃないと思った?さっき迄、俺たちの事を盗賊呼ばわりしてなかったか?」


「最初はそう思ったんだけどね。あんまりにも丁寧だから違うと確信したんだよね」


「と言うと?」


「バックパックの中身、満月の日の昼間にしか咲かない月光蝶って花でしょ?硝子みたいに透き通った花で、その根っこは万病に効くって言われてる通しか知らない花」


「そうだ。高値で取り引きされるから盗みに来た。なんかおかしなところでも?」


「それが、大有りなんだよね。あの花の価値は根っこにしか無い。それどころか、あの花からは花弁が擦れた時に魔物にしか聞こえない周波数の音を立てて周りに魔物を集めるから、普通は花弁を毟り取って根っこだけを採取する。月光蝶の咲く周期を調べられるのにその事を知らない訳は無いよね?」


「月光蝶の音は魔物意外にも、リザードマンやケットシーみたいな亜人種にも聞こえる。君に会いたい一心で花弁を毟らなかっただけかもしれないな」



 鍋をかき混ぜる手が一瞬こわばるのだが、ニッコリ笑顔で返す。



「あんなに沢山の花である意味は?」


「君みたいな可憐な女性には一輪じゃ足りないと思ったから。その理由じゃ、物足りないか?」


「さっきは私のことを女として見てなさそうだった癖に...。嘘が下手だね。じゃあ、何で私のこの格好を見ても逃げないの?」


「格好?紅い外套がどうかした?」


 首を捻って全身を見回すのだが、どこにも怖い要素が見当たらない。それどころか、見れば見るほど、瞳に吸い込まれそうになっていった。



「この砂漠で私はなんでも食べるから悪魔って言われてるんだ....。仕事場の情報も仕入れないなんて更に盗賊っぽくないな」


 だから、顔に張り付いた背筋が凍る不気味な笑顔に気付くのが遅れてしまったのだ。


「さてさて、ここで一つ問題です!盗賊は一般人が入ってはいけない豪魔地帯に入るライセンスを与えられるれっきとした職業ですが、何故砂人などの案内人を雇えないでしょうか?」


「俺の事、馬鹿にしてる?砂人や山人は密告者って呼ばれていて、仕事で豪魔地帯を案内する他に一般者が豪魔地帯に踏み込んだり、盗賊が密猟をしたりするのを監視する。保護って名目でレギオンに通報し報酬を貰う。通報された方は二度と歩けなくなるほどの制裁が加えられるから、盗賊は案内人を雇わない」


「そう。でも、案内人に口止め料として見合う報酬を払えば盗賊のライセンス持ちながら今回よりも安全に冒険できる。金のない盗賊なんていないでしょ? 盗めば良いんだから」


「最近の案内人は、複数人で盗賊のライセンス保持者を嵌めて荒稼ぎしてる。痩せこけた土地に村があったら尚更ね。だから口止め料とかも意味ないよ?」


 鍋をゆっくりとかき混ぜて中身を手の甲に垂らし、唇で触れる。


「へぇー、よく調べてる。だけど私にそれ言うんだ。私は砂人だよ!」


 それを聞いた途端に後ろに飛び退き、腰につけた折れた獲物に手を掛ける。


「あれれ?知らなかったの?ってか、後ろに後ずさる演技上手いね。盗賊ギルドでは赤い外套を着た悪人(砂人)に気を付けろって言われてる筈なんだけどな?本当はライセンスなんてないし、盗賊じゃないんでしょ?」


「どこが決定的だった?」


「じゃあ、認めるんだ。一番決定的だったのはあんた達の体に盗賊のカーマが無かった事」


「カーマ?」


 得物から手を離し、元の丸太に座り鍋をかき混ぜる。


「盗賊ギルドに所属すると、強奪、隠密の二つのスキルを貰えるんだけど、それを覚えた痕が手の甲に残る。でも、お前たちには無かったからそれが決定打だったよ」


「ヘェ〜。カーマってどんなマーク?」


「おいおい。私は砂人だよ。そんな盗賊のカーマなんて一々気にしないで密告する。私が言ったらその模様を真似するみたいだし」


「えー、そんなことしないさ」



女の子が立ち上がると、裾からアニキ格の男の折れた刀身が落ちてきた。


「それは返してもらうよ。逆にコッチやるから」


 差し出された木製のスプーンを口に突っ込まれ、口の中で転がす。



 豊潤なトマトの香りの強烈な味。それを緩和し、風味を際立たせる独特のスパイスが口の中で爆発した。



「これで、決定打がもう一つ増えた。ガサツな盗賊が作る料理じゃない。美味いね」


「褒め言葉として受け取っておくよ。それでこの後は俺たちをどうするつもり?」


「この料理を食べながら、じっくり話を聞きながら考えるよ。先ずはこの砂漠に来た理由を教えてもらおうかな。盗賊の密猟以上に一般人の密猟の方が罪が重い。盗賊を語ってまで密猟に手を染めた理由とかね」


 スプーンを再び鍋の中に入れ、二口目を口の中に放り入れる。

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