プラントキラーと小虫退治の話
関東ちほーに住んでいるのですが、本日梅雨明けされたということで……。
多少晴れ間が増えることを期待しています。
なんだか急に暑くなってしまい、ここ数日でやりはじめた筋トレでも、ちょっと動くと汗が噴き出るので凄く……いっぱいやせた気分になります。気分だけ。
一部では今年は冷夏になるとか、はたまた専門家の意見では猛暑になるとかいわれているようですが、暑くても寒くても困るので、丁度イイカンジにお願いしたいモノです……。
そういえばまだ今年って台風来てない感じしますが、随分すぎるくらい雨降ったからもう良いかな。
先月のエッセイを書かない間に、我が家ではいろいろありました。
うちは風通しが悪いので、雨が降ってないときはなるべく換気を良くしようと思って窓全開なんですけども、近くに山があって、小さい虫とか侵入してきちゃうワケなんですよ(コバエみたいなやつとか)
虫が来ないように吊り下げるヤツとは何だったのか……と薬局で思いましたが、どうやらソヤツらが防げる虫と防げない虫というのがあるっぽい。
それに、小さい窓とはいえ網戸もついてないんだから防げるわけがなかった!
執筆中に目の前をコバエが巡回してくるというイライラがすごい。
じゃあ窓開けるの止めろよ、と思われるかもしれないけど窓開けないと風通しが悪いから蒸すんです……知ったこっちゃないよね……そうだよね。
まあとにかく、窓を開けるというのがデフォなので、虫が当然入る。
そして執筆の邪魔をして小説が進まないわけですよ(でっちあげの罪状)
そこで、秘密兵器を投入したのが二年前。
モウセンゴケ。いわゆる食虫植物というもので、細長い葉っぱの両側にネバネバした粘液の粒みたいなモノがついてて、そこで虫を捕らえる……。
そして、虫を捕って栄養を吸い尽くした後でも死骸がそこに残っているという、串刺し王かよと思うくらい死屍累々の葉っぱになっていくわけです。
そいつの生育状態が良く、なんか茎も立派になってきたし、今使っている鉢では小さいので植え替えをしよう……ということになったわけ。
だが、悲しいかな私は【植え替えをするとほぼ100%植物を殺す】という、プラントキラーのスキルの持ち主であり、書籍を見ながらでも未だかつて成功したためしがない。
私は迷った。
コイツが死んでしまったら、うちでコバエを倒せる奴がいなくなってしまう……。
ただでさえ目を離すと、勝手にコーヒーに突っ込んでプカプカ浮かんでいたりすることもあるので止めて欲しいのに、その頻度が増えるのは冗談ではない……。
人様のブログを拝見し、やり方を参考にさせて頂き、いざ!
と、根を丁寧に外して、鉢に入っていた砂の配分や順番もチェックし、同じような感じで入れて、根をセットして土を被せ、水を上からぶっかけて不要な土を流し落としていく。
当然目が詰まるワケで、保水性をあげるため最後にはミズゴケ(前の鉢に勝手に生えたスギゴケみたいなやつ)を乗せて出来上がり……。
数日様子を見た。
だが、やはり私の【プラントキラー】が発動してしまったらしい。
青々と茂っていた葉は、徐々にネバネバ部分の水分をなくし、葉先を茶色く変色させながら――徐々に枯れ始めたのだ。
「なぜだ」
ちゃんと、資料通りにやったはずだ。鉢を置く場所だって変わっていない。水も水道水だ。
「なぜだ……」
うっかりセリフの後は一文字ぶんあけてしまう小説の癖が出てしまったけど、別に誰も気にしないからいいや。そうじゃなくて、モウセンゴケが枯れていくのを私は黙ってみているほかにない。
根っこを切りすぎたか? いや、ちゃんと小指くらいは長い。充分のハズだ……。
わけもわからず「こいつはほとんど死んでいる……だがちょっぴり生きている」状態のモウセンゴケは、うちを守るためにまあまあ頑張ってくれた名誉草なので見捨てるわけにもいかず、本人の生命力に頼る日々が続いている……。
だが、モウセンゴケという、よくわからねーが気付いたら虫を捕っている、という草が失われつつある今、虫は絶好調に入ってくる。
私のコーヒーもたまに犠牲になり、半分ブチ切れ始めた頃、強力な援軍が我が家に飛び込んできたのだ。
本を読もうと本棚に手を伸ばした瞬間、ヤツは私の手に飛び乗って挨拶を交わしてきたのだ。
「今日から厄介になるぜ」
……と、言ったかどうかは定かではない。多分顎がモゴモゴしてるから言ったと思ってるだけだ。
これでクモの声やら動物の声が聞こえたら、私はとっくに別のことをして暮らしている。
話がびっくりする程度に逸れてしまったが、手に乗ってきたのは体長1.5センチ程度の黒っぽい小グモ。尻にはすっと白い一文字が入っている、シャレオツのイカしたヤツだ。
虫は得意じゃないけど、黒光りするメッチャクチャ速いあいつじゃないし、クモは益虫と思って暮らしているのでオーケーな私にとっては問題ない。
迷い込んできたんだな、とその時は普通に思ったので、そのまま――……。
窓を開けて適当に逃がしてやった。
そして翌日、また窓を開ける。
また昨日のヤツ(同個体かは判別していない)が家に侵入し、居座り始めた。
私の記憶が確かならば、コイツは『アダンソンハエトリグモ』様であり、家に侵入してくるぴょんぴょん飛ぶクモの中ではかなりメジャーなヤツだ。
ちなみに茶色は確かメスの個体だ。ハエトリグモハンドブックで見た。
まあわざわざ追い出すこともないからほっとこう。
その決断が、大変な結果に繋がったわけだ。
その日から、小バエが飛んでるな~と思うと、数十分後にはコバエの霊圧が消える不思議な生活が始まった。
たまにクモくんの個体が変わっているわけだが、基本屋内を巡回しているらしく、気がつくとクモに見守られて生活している。
目の前にささっと来たかと思うと、挨拶なのか存在をアピールして再びどこかに消えていく、なんか律儀なヤツであり、愛らしい性格である。
虫が苦手な人にはここまでの話は何一つとして面白くないのだろうが、まあエッセイなんて雑記みたいなもんだから、書く方もネタがあれば書ける。
気がついたら毎日連載してるやつ一話くらいの分量が余裕で書ける。
見てる人の時間を割いて貰ってるので特別有意義ではないのは申し訳ないが、エッセイなんてゆる~く見るもんだと諦めて欲しい。寝る前に見ると眠くなるから良いかもしれない。
そう、モウセンゴケはモウセンゴケで頑張っていたのだが、アダンソンハエトリグモ氏は忍び寄って即殺なので、即殺つーか忍殺キエエエゆえに、一匹ずつというのは致し方なくとも割と素早く処理してくれる。
数日だけアシダカ軍曹も顔を出してくれたが、うちには軍曹の標的は居なかったらしく静かに去って行った。ありがたい限りだ。
一度歯磨きをしているときに、ハンティングの瞬間を目撃してしまったことがあるが、なんか小さな食物連鎖が展開されているのにちょっぴり感動してしまったものだ。
この間バナナを買ってしまったときなど、コバエの入り込む頻度が高くなりつつあったが……全て秘密裏に処理された。
優秀すぎる。そりゃギルドは厄介な仕事をS級の冒険者に頼るわけだと納得した。
日々のいろいろなことは、知識となって役に立つ。
こうして、私のエッセイにも役立ってしまったように……。
今日の夜も、私の執筆を邪魔するコバエはいない。コーヒーも安心して飲める。
だが――この家のどこかに、まだ虫を探して巡回を続けるクモくんがいらっしゃるはずなのだ。
万能の彼らには感謝しかないのだが、ちょっとだけ……困ることがある。
彼らは常に糸を垂らしながら歩いているわけで、よく見るとあちこちにふわっとクモの糸が引っかかっている。ついでに埃も付着している。
それを掃除する日課が加わったりしているのと、たまに彼らも床を跳ねるように歩いているので、モビルスーツみたいな我々が踏み潰さないよう注意して歩かなければならなくなったことだ。
何はともあれ、私の執筆環境はクモくんのお食事によって守られている。