街
ザッザッザッザッザッザッ…
農村地帯からは街まではわりと近かった。
俺は街の中心までいかずに、まだぽつり、ぽつりと民家が出てきたところで女を下ろす。
穏やかで、なんの争い事も見られない景色。
歩いているのは大人だけで、子供の姿はない。
日常的に見られるような子供のはしゃぐ声もない。
無機質な足音と、機械化されたコンビニのようなもの、
お店のようなものの前にもロボット。
街の中は機械で溢れかえっている。
俺は女にタバコが欲しい。と言った。
女はあぁ、そういえば。というような顔をして、俺に1枚紙幣を持たせた。
俺はコンビニような建物のタッチパネルで赤い箱のタバコを選んだ。
そして、ロボットの中に紙幣を入れる。
ガシャンッ
自動的にお釣りがでてきた。
お釣りを女に渡すと、ライターを貸してとジェスチャーする。
すると、女は横目で見て、あぁ。とライターにカチッと火を灯して俺の前に差し出した。
俺はジェスチャーで手を縦にしてお礼を伝える。
ふぅ〜
スースーしないタバコは落ち着く。
匂いに敏感な俺だが、この匂いは心地がいい。
少しだけ脱力する。
女もタバコを取り出し、カチッと火を灯した。
そしてこう話し始めた。
女「何もない時ほど気を引き締めないとね。どこに監視カメラがあるのかしら?」
俺は辺りを見回すが、何がカメラで何がただの機械なのかわからない。
ただ無機質な機械が並んで、人間すら、ロボットなのか、生き物なのかわからない街。
多少は匂いでわかるものだが、匂いだけでわかるにも歩いている人はパラパラといるだけで、どこかの建物に入っていってしまうため、嗅ぎとるまでの距離を詰められない。
俺と女は街の中を歩いて真っ白で大きな建物を目指す。
その途中で何か武器になるようなものはないかと、辺りを見回す。
小さな路地に怪しい古びたお店を見つけた。
俺は女に声をかける。
「あそこ行ってみようぜ」
女は平然とわかった。というように俺の後についてくる。
小さな路地の商店は、薄暗く、人の気配もない。
そこで店の前のタッチパネルに手を触れるとおかしなことが起きた。
機械「アナタニ、アウノハ、コレデス」
ギィーっと機械音と共に小さなカプセルが出てきた。
そして、そのカプセルを取り出し、開けると中には小さな模型のようなミニチュアの銃とナイフのセットのようなものだった。
1枚の紙が一緒に入っていたので読んでみる。
コレハアナタノチカラニナルデショウ。
テヲ、ケースニカザシ、30ビョウマッテクダサイ。
俺は紙に書いてあったとおりにケースに手をかざしてみた。
すると、ケースはみるみる大きくなり、俺が両手で持つほどの大きさになった。
中を開けてみると、中身の銃とナイフまで俺の肘から手のひら位の大きさになっている。
そして、古びた商店の方をみると、もうそのお店は跡形もなく消えていた。
俺は何が起きたのかわからず、呆然としていたが、
女が口を開いた。
女「歓迎されてるわね。」
俺はなんの事かと思ったが、どうやらこれは全て何かのプログラムで出来ているのかもしれないと察した。
俺はケースごと担ぐと女と共に歩き出す。
あの、大きな白いビルまで、あと4キロちょっとってとこだろう。
腹ごしらえに食べ物を探しながら1人と一匹はなんの迷いもなくビルを目指して歩いていった。