道中
俺は女に声をかける。
「おい、行くぞ。」
女はスクッと立ち上がり、土を払いながら答える。
女「その前にこれだね。」
女は紫の小瓶を俺の前に見せる。
そして小型の注射器でほんのわずか紫の小瓶から液体を吸い取り、俺の口元に近づける。
俺はなんとなく意味がわかった。
適合率を上げて逃げろということなんだろう。
黙って女の動きに従う。
口を開けて、甘いような苦い液体を飲み込む。
ドクンッ
身体が熱くなる…
鼓動が全身から聞こえるかのようにうるさく鳴る。
この感じだ。
身体の動きやすさが格段に上がる。
爪が鋭く光り、全身の毛量が増える。
俺は女にこう言い放つ。
「今ならこっちの方が早い。乗れ。」
女はスタスタとこちらに歩いてきて、こう俺に聞く。
「どこにつかまればいいの?」
俺はため息を吐きながら、ひと言放つ。
「滑って落ちてかないように胴体に手を回せよ。」
女は俺の上に跨り、胴体にしがみつく。
その瞬間から俺は全速力で街の方へと走る。
まずは安全場所の確保と武器の調達だ。
ビュンビュンと風を切る音が鳴る。
女は飛ばされないように必死にしがみついている。
山道を下り、道無き道を突き進む。
途中、綺麗な湖に出る。
辺りを見回しても誰もいない。
水を補給しよう。
俺は立ち止まって、女を降ろすと湖に向かって歩く。
走ったからなのか、身体が暑くてたまらない。
俺は湖にバシャバシャと入っていってみる。
女も暑かったのか、水を飲んで一息ついている。
ふぅ…水浴びをしてさっぱりした俺は体を震わせ水を飛ばす。
女も少し休憩出来たようだ。
さぁ、再び走り出そう。
まずは街へ行くのが先決だ。