伝書鳩
ザッザッザッザッザッザッ…
森の中の獣道を女と1匹が歩く。
ガサガサガサガサ…
森が一斉に騒がしくなる。
辺りが一瞬暗くなって、またいつもの景色と変わらなくなった。
バサバサバサバサバサバサ…
たくさんの小さな羽の音が聞こえた。
バサリ。と大きな影が頭上に現れた。
それはまるで巨大な鳥だった。
手足は鳥で、体は人間、そして顔にくちばしはない。
代わりに口元から牙のようなものが見える。
俺はすぐさま警戒態勢に入る。
低い唸り声をあげて威嚇する。
「ヴーーーーー」
鳥のような人間のようなものはこちらを見て、ニヤリと笑う。
そしてひと言俺たちに向かって言い放った。
鳥男「みーつけた。」
鳥のような人間のような生き物は再びバサリ、バサリと羽の音を立てて飛び去った。
女の方を見ると、女はこぶしを握りしめて、歯を食いしばっていた。
俺は不思議に思い、女に問う。
「あれは何だ?」
女はいつもとは違う、絞り出すような口調でこう言った。
「あれはコウモリ。ようはあの場所での監視役。あれがここに来たということは見つかったってことよ。」
俺は察した。
俺とこの女を殺しに来るやつがいるだろうということは何となくわかってはいたが、ここから先はスムーズに行かせてはくれないようだ。
ザッザッザッザッザッザッ…歩く速度を早めながら、周囲を警戒する。
女は履いていたヒールのカカトを岩のようなところにぶつけてパキンッと折る。
そして平然と走り出す。
俺が走るよりははるかに遅いが、走るスピードは格段に上がった。
草木をかき分け、細かく匂いを嗅ぎ分けながら進む。
周囲の音の変化にも気を使う。
キーン…慣れない音が聞こえた。
すぐ後ろを振り返るも、誰もいない。
上か!
バサリバサリ…重たい羽の音が空気を伝わって聞こえた。
俺は空を見上げながら女に短くこう言った。
「伏せろ。」
女はすぐさま着ていたコートを首元まで羽織り、草の中に伏せた。
俺はザッザッと走って勢いをつけ木を蹴りながら上へ進む。
(見えたっ!)
それは空を優雅に舞っていた。
2メーター以上ある羽を持った生き物が3体飛んでいた。