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LAST NIGHT   作者: 瑞希
12/32

食後

腹も満たされたところで、俺は女に質問してみることにした。


「そのポケットの中は一体何が入ってるんだ?」


女は突然どうしたの?というような顔をしたが、その表情はすぐにいつもの真顔に切り替わり、答え始めた。


女「持ってみる?私の上着。」


俺は重さなのか?と疑問を飲み込みつつも、いつもように答える。


「あぁ。」


女は上着をドサリと音を立てて脱ぎ、俺に渡した。


「なんだこれ?上着だけで10キロはありそうだぞ。」


俺は思わず声に出していた。

女が着ていた上着の異常な重さと、チャックのついた4つの内ポケットの中はそれぞれパンパンに何かが入っている。


俺は女に問う。


「中身はなんだ?」


女はそっけなく答える。


女「君と私の回復薬、そして軽い救急箱代わりってとこかな。

あとは私の宝物。見たかったら見ていいよ?」


俺はガシャガシャと上着を振るのはやめた。

回復薬がなければ俺とこの女の命はなかっただろう。

俺は1つずつチャックを開けてみる。


まずは右の上のポケットから。

青い瓶が5本に、ライター、そしてタバコ。


次に左の上のポケットから、

赤い瓶が5本と注射器1本、そして何やら怪しげな紫色の小瓶が1本。


そして、右下のポケットからは包帯、手術用のメス、そしてガーゼ、そしてテープが出てきた。


最後に左下のポケットから出てきたのは…

古い錆びれた懐中時計と、クロスのネックレスだった。


俺は一通り見るとチャックを全てしめて、再び女に返す。


女は俺から上着を受け取ると、バサリと羽織る。

女に俺は質問した。


「あの紫色の瓶はなんだ??」


女は紫色の小瓶を取り出し、指を指す。

そして、こう言った。


女「これはね、あそこで唯一私だけが扱える薬だよ。

遺伝子の組み合わせを適合させる薬の原液。」


俺は理解が出来ずに食い気味に質問する。


「遺伝子の組み合わせってなんだ??なぜそんな薬がある?」


女は淡々と俺の質問に答え始めた。


女「君はその姿に疑問を持ったことは無い??」


俺はふと思った。

確かに俺はこの姿に疑問を持ってもおかしくはないはずだ。

それなのにさほど感覚などに違和感はない。

俺は女にこう答えた。


「なぜ俺に耳がはえてて、しっぽがあるのかはわからない。だが、身体の感覚としてはさほど問題は無い。」


女は当然とでも言うかのように答える。


女「そうだろうね。君は初めての成功作。遺伝子適合率98パーセントのライカンタイプだからね。

そこで残りの2パーセントを適合させるための薬がこの小瓶だよ。

使い続ければ適合率は100パーセントに近づいていく。

だけど、量を間違えれば変化に体が耐えきれなくて異変を起こすだろうけどね。」



俺はどうやら遺伝子単位で合成されたものらしい。

そして、部屋で飲んだあの液体は紫の小瓶の液体の入ったドリンクなんだろう。

唯一意味の無いものといえば懐中時計とクロスのネックレスか…

俺は女に問うのを辞めた。


「とりあえず1本タバコくれ。」


女はスっとポケットからタバコとライターを出す。

トントンと慣れた手つきでタバコを出すと、俺に1本渡して、女も1本くわえる。

そして、俺に向かってカチッとライターをつけて火を口元に近寄らせてくる。

俺はタバコをくわえ、火を灯す。


ふぅ…


俺が1口吸ったところで女もカチッとライターをつけ、タバコの煙を吸い込む。


「まずい…」


このタバコは俺の口には合わないらしい。

口の中がスースーする。


女は呆れた様子で俺に言う。


女「今はこれしかないわ。街へ出たら好きなのもあるかもね。」


俺と女は一息ついて、街の方へ歩き出した。

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