捕食。
チュンチュン…バサバサバサバサ…
鳥の鳴き声と羽の音で目が覚めた。
辺りは朝陽に照らされて、少しだけ光が差している。
どうやら気付かぬうちに少し寝てしまっていたらしい。
女の方を見るとまだスースーと寝息を立てている。
俺は辺りを見回す。
(腹減ったな……)
どうやら後ろから追っては来ていないようで、俺は少しだけ気が抜けたようだ。
俺は女を起こさないように森を歩き始める。
ザッザッザッザッ…
ガサガサッ
何かが1m先で横切るのが見えた。
あれは、獲物か?
俺は足音を消して音のする方へ近づいていく。
もしゃもしゃと草を食べている。
あれは…鹿だ。
俺は獲物にサッと近づき首に爪を突き刺し一気に頭を落とす。
ドサッ…
鹿の血を浴びた手が朝陽に照らされて妙に画になった。
俺は鹿の後ろ足を持って首を下にし、血を抜く。
そのまま気に吊るして鹿の腹を裂く。
中身を取り出して、皮を剥ぎ取り下処理をする。
(本来ならここで酒でもあれば使うんだがな。)
俺はその間に落ち葉を集めて準備をしていた。
すると後ろから、ガサガサッと音がする。
他のケモノが寄ってきたか?
後ろを振り返ると女が立っていた。
一瞬女だと認識する前に背筋がゾクッとした。
すると女は平然と俺に言う。
女「ライターいる?」
俺は拍子抜けした。
そんな便利なものがでてくるこの女のポケットは何なんだろう?
俺は短く返事をする。
「あぁ。」
女はライターを俺の方にポイッと放り投げた。
俺は木の枝を1本折り、鹿に頭から尻の方まで突き刺す。
丸焼きが出来るように細めの木を2本折って、枝が分かれるところに鹿の刺さった木をかける。
枯れ木を下に敷き詰め、その上に落ち葉を敷き詰める。
カチッとライターで火を灯す。
ジュー
香ばしい匂いがしてきた。
味付けをするものがないのでそのまま丸かじりになるが、この場合は仕方ないだろう。
ある程度焼けたところで俺は足をバキンと折り、1本は女に渡す。
女は驚く様子もなく、かぶりつく。
俺もガブリとかぶりついてみる。
味付けがないとやっぱり臭みは少し残るな。
決して美味いとは言えないが、腹は満たされる。
もくもくと食べ進める俺。
足の半分も食べないうちに手を止める女。
そして、ボソリとこうつぶやく。
女「食べた…」
俺は女に見向きもせず、腹が満たされるまで食べ続けた。
そうこうしているうちに陽が登った。