星空の中に
夕陽の照らす中、女はザッザッと風を切って歩く。
そして、3時間ほど歩いた時に見えてきた景色の中、森が崖のようになっていて、その向こうに一際目立つ建物があった。
それは真っ白で、100階以上ありそうな病院のような建物だった。
周りには公園や、少しだけ街のようなものが見える。
この森はどうやら街からは少し離れた高台にあるのだろう。
見渡せばそこから湖のようなところがあるのも見える。
俺は森の中で武器になりそうなものを探す。
折れた枝、毒を持ちそうな薬草。
そこで俺は気づいた。
この女なら…
そして女に問う。
「この森の中に使えそうなものは無いのか?」
女は振り返って、少し戸惑った様子で俺に答える。
女「私も本とかでは見たことあるけど、外にでたの久しぶり過ぎてわからないの。
だから本の知識が本当かどうかは知らないけど、回復薬の元ならここにあるよ。」
ブチッ…
足元に生えていた手のひらのような形をした大きな葉っぱを1枚ちぎって俺に見せた。
俺はその葉っぱを受け取り、匂いを嗅ぐ。
あ。これは…あの回復薬に入っていた匂いだ。
俺は女に葉っぱを持ったまま言った。
「これは間違いない。あの薬に入っていた。」
女はそうか!と手をポンッと叩くと俺に答える。
女「じゃあ私が知ってる薬草拾うから、君は嗅ぎ分けて!そしたら薬作れるよ。」
俺はコクリと頷いた。
女はそれを見るとスッとしゃがみこみ、薬草を手に取り、少し確認しては俺に渡す。
俺はそれを嗅ぎ分けて、間違いないものだけを手にためていく。
そんな作業を1時間くらいしただろうか。
辺りは薄暗く、街の灯りが目立つようになってきた。
まるでホタルがたくさん飛んだかのような光を放つ。
その中で大きな白い建物は機械的な蛍光灯のような色の光を放つ。
あそこか…ボソリと俺が呟く。
女は立ち止まり、俺に言う。
女「今日はここで休もう。まだ距離もあるし夜は目立つから。
明日とりあえず街まで行って街の様子を見てからいこう。」
俺は女の提案に違和感を感じた。
夜の方が目立たないんじゃないのか?
街の様子が関係してる??
俺は女に質問する。
「夜を避けるのはなぜだ?」
女は俺を見てまっすぐこう答えた。
女「君、夜になると自分がどうなってるか、わかってないんだね。」
俺はなんの事だかわからなく、女に目線を向ける。
女は続けて俺に言った。
女「夜になると光ってるんだよ、君の目は。しかも金色にね。」
俺はハッとした。
今までで目が光ることを気にしていなかった。
そして、目を閉じてため息をついて俺は女に従う。
気がつくと夜空に星が散らばっていた。
空なんて見上げた記憶がなかったが、こんなものだったのか。
女は疲れたのか、近くにあった切り株に座ったまま俯いて寝てしまったようだ。
俺はそんな女を横目に夜空を眺める。
俺は…売られた…
金のためなのか、それとも…
まぁ、いい。
直接会って聞いてやろう。
待っとけよ、親父。
歩いて街に出るにはまだ遠い。
その間に謎を1つずつ解いていこう。