2年後
5000人が異世界に連れてこられて、2年が経過してた。ウィークも17歳となり、心身共に成長して......いなかった。
「ヤバイヤバイ!このままじゃやられるぞ!」
長身の青年が荒い息を吐いてそんな叫び声を上げ、走り回っていた。
「ありがとう。人生。短い間だったけど楽しかったよ」
そんな諦めた台詞を吐いているのは、幼さを残した顔立ちで中肉中背の青年である。
そう、彼が彼こそがウィークだった、2年の時が流れたが精神的に全く成長していなかった。ちなみに先程から彼等がどうして逃げているのかと言うと、上域レベル推奨任務「鋼鉄の鎧蜴」の討伐任務中だからだ。
「もう無理だ!!リリス!!まだかーッ!?」
もう1人の青年キュースはリリスと言うもう1人の仲間に向かって叫んだ。
「ちょっと待ってよ今精霊を呼び出してるところなんだから!ウィークとあんた2人でデコイになってなさい!」
リリスと呼ばれた美少女は少しイラッとした口調でキュースに怒鳴りかけた。
「もう無理もうダメ」
相変わらずウィークは逃げながらそんな事を言っている。そんな事を言っている間に「鋼鉄の鎧蜴」はどんどんウィーク達との距離を詰めて来る。
「鋼鉄の鎧蜴」は普段温厚だが、1度敵とみなしたら死ぬまで獲物を追いかける習性があるのだ、大きな前足に付いた鉤爪がウィーク達を襲おうとした瞬間。
「炎の精霊剣!!」リリスの紅く光った剣が鋼鉄の鎧蜴の身体を真っ二つにした。
『助かった〜』ウィークとキュースは安堵のため息を吐いた。
「ちょっとウィークあんた結構良い技術持ってるんだから戦いなさいよ!」
戦闘が終わった後だと言うのに彼女はそんな事を言ってくる。
ちなみに技術とは能力を持たない者でも努力次第で手に入る力である。
「そんな事言ったって僕は中域なんだよ、上域の君とはわけが違うんだ」
気の強い彼女に対して負けじと言い返そうとするが、どうしても押し負けてしまう。頭に来たリリスはウィークを羽交い締めにしようと襲いかかって来るが、さすがにキュースがそれを止めた。
「まあまあ落ち着けよ、リリスせっかく任務を達成したんだ。さっさと報酬を貰って飯にしようぜ」
キュースは基本的に楽観的な人間だ。自身のモットーは「今が楽しければそれで良い」である。そしてリリスは規律や礼節を結構重んじる性格である。
そのため2人は馬が合わない事が度々あるのだ。ウィークもウィークで周りに流され安いと言う性格なので、なんともバランスの悪いチームで冒険者家業をやっているのである。