期末テスト②
その日の授業を終え、俺はテスト前最後の部活動をするために部活棟へと足を運ぶことにした。
俺の通っている学校では、テスト1週間前からテスト週間として部活動が強制的に休みになる。
部活動に精を出している人達でも、その時期くらいは真剣に勉強をしなさいという学校からのメッセージであるが、この時期に限って運動部の3年生なんかは、最後の大会に向けて朝練を堂々としていて、それを学校側も黙認している節があったりとあまり実感はない。
それでも、表向きにはしてはいけないと言われているのだから、俺はそこをわざわざ破る理由も意味もないので大人しく今日で一旦お休みに入るということになる。
自分自身、運動部ではなく比較的ゆるい文化部に所属しているからこその感情なのかもしれないけれど、仲間との強いつながりとか、一緒に乗り越えて来た苦難とかがあればそういう気持ちにかられていくものだったりするんだろうか。
今までそういった類の経験がないからとても輝いて見えて、羨ましさで心がいっぱいになるときがあるけれど、それは自分の選択してきた道なのだから仕方ない。
俺は少し古くなった扉をキーっと音を鳴らしながら開ける。
「あ、、、せせ先輩こんにちは!今日はいつもより早いですね……」
体を大きくビクッと震わせた後、急いで体勢を俺の方に向けて、手を後ろに回して背中に何かを隠している。
頑張って誤魔化そうとしているらしいが、これでは幼稚園児だって見破れるだろう。
「…..バレバレだから隠さなくていいよ。なにしてた?」
素直に白状しやすいよう、優しく語りかけるように話す。
「い、いや、あのですね….私も何か始めようと思いまして、そうだ!私も小説を書こうと思い立ったので、手始めに先輩が書いたやつから読んで勉強しようと…..」
きいはばつが悪そうにしているが、正直こんなことかと拍子抜けした。
「なんだ、そんなことか。それより始めようという気持ちの方が嬉しいよ」
「でも、勝手に読まれるなんて嫌ですよね。すいません.....」
結構気にしてるな。
「そんなことないよ、そもそも誰かに読んでもらうためにあるんだからさ」
安心したのか、ほっと胸を撫で下ろしていた。
「でも、よりにもよって今日か。せっかく持ってくれた熱がテスト週間で冷めないといいんだけど」
きいのことだから、やっぱやめることにしました!なんてことになりかねない。
「そ、そんなことないもん!...................先輩と一緒にいたいからだし……..////」
最後の方ぼそぼそ言っててよく聞こえなかったな。
まあ、なにはともかく、きいがやる気を出してくれそうでほんとによかった。
「そ、そういえば先輩はテスト大丈夫ですか?」
「急にだな、まあ心配されるほどではないよ」
「そうなんですか!なら、困っている後輩を助けると思って勉強を教えてください!!!」
おかしいな、きいはひまりとは違って、1年生の中でもトップを争う成績だったはず。
だから俺みたいな奴に頼る必要なんてないと思うんだけどな。
「お前そんなのひつy……..」
「とにかく!今週の日曜に先輩の家に伺いますのでよろしくお願いしますね!!」
押切られてしまった感が否めないが、大丈夫だろう
…..あ、ひまりとの勉強会と被ってる…..まあ、なんとかなるだろう!
俺は考えたくなくなったので未来の自分にパスすることにした。
(先輩と二人で勉強会だ!何着て行こうかな〜先輩だって男の子だし二人きりになったら…….勝負下着買わなくちゃ…..!////)