上坂きい
今日二つ目です
今日最後の授業を終え、ホームルームを済ますとすぐに放課後となった。
運動部に所属している人達が校庭や体育館で活気溢れている中、俺は自分の部長を務めている文芸部の部室へと足を進めた。
一日中俺と一緒にいようとするひまりでも、この部活動にだけは普段からついてこない。
恐らくその原因は・・・・
「せーんぱい!遅いですよ!早くこっち来てください」
俺の1つ下の後輩である上坂きい、この子だろう。
「せんぱい何してたんですか?私部室に一人で寂しかったんですよ?」
きいは、俺やひまりに対して、よくからかうようなことを言ったりするのだ。
そういうところがひまりとは合わず、朝のようなことになってしまう。
桜庭さんに関してはあのような冗談自体が珍しかったりするので、基本的には仲がいいと思うが、きいは多分ダメだ。
「ごめんな。てかお前が早過ぎるだけだと思うけど」
「わたしは、せんぱいのこと大大大好きなだけですぅ!」
ニヤニヤしながら上目遣いでジッと見つめてくる。
俺はこういう冗談に慣れてはいないので、きいの一つ一つの仕草にドキッとしてしまう。
それを見透かされたのかきいはどんどん攻めてくる。
「そういう、からかうようなことはやめてくれ」
「せんぱい、今ちょっと照れました?照れましたよね?もう!やっと私の魅力に気づいてくれたんですね!」
きいもひまりに負けた劣らずの美少女で、かなりモテる。
それなのにこいつもひまり同様、彼氏ができたことがないというのだからよくわからない。
こだわりとかがあったりするのだろうか?返事に困ったが、素直に思ったことを言えばいいだろう。
「ん、…ああ、きいはかわいいと思うよ」
そう言いながら、きいの頭を撫でる。
普段はあまりこういうことをしないのでこちらが恥ずかしくなったが、きいにとっても不意打ちだったようでうろたえていた。
少し頬を赤くしながら小声で『そういうのは反則ですよ///……』ときいは呟くが、透には聞こえない。
やめだやめだ、こういうのは柄じゃない。
お互い冷静になるために距離を置いて座る。
俺は次の小説コンテストへ向けた作品を書くことにした。
しばらくそうしていると、きいが暇そうに俺の方を見る。
「きいもこの部活の一員なんだから少しは活動したらどうだ?」
「え〜、お話書くのなんてめんどくさいです」
「別に書くだけが活動じゃないぞ、読んだっていい」
「それもめんどくさいです〜」
「じゃあなんでここにいるんだ?ここはそういうことをするための部活なんだけど」
「り、理由なんてよくないですか?なんとなくですよ!なんとなく」
この文芸部は、1つ上の先輩たちの代に人が多く、きいも仲が良かった。
その人たちが抜けた今、この部活には俺ときいしか残っていない。
きいには何度も辞めたっていいと伝えているのだが、絶対に辞めようとはしない。
理由を訊いてもさっきみたいになんとなくとか、気分とかいって誤魔化される。
「私は、せんぱいとお話したいです!それに、もう時間だって結構経っちゃってるじゃないですか。今日は私とお話しましょうよ〜?!」
確かに今日はもうかなり日が落ちてきているし、活動終了時間までも長くはない。
「分かったよ」
きいは喜んで椅子を俺の隣にまで寄せて座る。
「せんぱいって〜か、彼女とか作らないんですか?」
藪から棒な質問だな。
「俺はそんな相手いないんだ。それをいうならお前だって彼氏いないじゃんか。それはどうなんだよ?」
「わ、私はいいんです!私は。…そ・れ・よ・り、せんぱいは彼女を作りたくないわけではなくて、相手がいないから付き合ってないってことですか?ひまりさんは彼女じゃないんです?」
こうして言われてみると、ひまりはどっちかっていうと妹とかに近い感覚だな。
「別にそんな関係じゃないよ。それに、ひまりには俺なんかよりもっといいやつがいるよ」
そう聞いた瞬間、ガバっと、きいが席を立ち俺に寄ってきて本当ですか?と確認してくる。
顔が近い。
嘘をつく必要はないので、俺はうんと答えた。
すると、急用が出来たとか言ってきいはそのまま部室を出て行ってしまった。
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今の私をせんぱいに見られるわけにはいかない。
ずっとひまりさんが彼女だと思ってたから、私じゃ敵わないと思ってた、、、
でも、そうじゃないなら私だってせんぱいのか、彼女になれるかもしれない///……
そんなことわかったら、私の抑えてた気持ちが爆発しそうだったから急いで部室から出ちゃった。
それに、さっきせんぱいに、かわいいって言ってもらって頭も撫でて貰っちゃったよぉ///……
えへへ、幸せだなぁ!!帰ったらこのことを忘れないようにカレンダーに今日のことをメモしなきゃ///!!
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