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前編

書いている小説が行き詰まってしまい、その間に新しい萌えを開拓してしまいました。

敵対する男女って、いい…。

と妄想を詰め込んだので設定が矛盾だらけですがご容赦ください。


(とき)の声が遠くで聞こえる。



その声を私は敵の死体の山の上で聞いていた。




今しがた息を引き取った兵士から剣を抜くと私はよろめき、死体の山から転げ落ち、仰向けで倒れた。


空は綺麗な青。







我が国は負けたのだ。



領土を広げんと帝国が我が国に侵攻して数ヶ月。


心優しい我が君はよく耐えたと思う。



雪深い位置にある帝国を率いるは冷たい瞳の女帝。

年はまだ若いと聞く。




きっと陛下は処刑されるだろう。



最期までお供したかったのだが、叶いそうにない。








私の方が先に逝くから。


背中と脇腹に剣を貰ってしまった。

背中はまだしも脇腹の傷が深い。治療しなければ死ぬ。

そして今私は敵陣の真っ只中だ。助ける者などいやしない。


いかに我が国随一の剣と讃えられても10人がかりで来られては太刀打ち出来ない。


世の中には100人を1人で倒した奴がいる?

絵物語じゃあるまいし。私には10人が限界だ。



敵が仲間と歓声を上げて喜んでいる。

私のすぐ側を走り抜ける。

その際髪の毛を踏まれて激痛が走るが、悲鳴を上げる気力もない。


喜びの最中に私という異物に邪魔はされたくないだろう。

このまま死が訪れるのを待とう。




瞼を閉じれば、穏やかな笑みを讃える我が君の顔。


私の愛おしい弟。



彼を思いながらもう一度目を開ける。目の前には綺麗な青空。ああ、我が君の瞳と同じだ。




足音が聞こえた。








ああ、何故最期に現れた幻影は、銀髪の敵なんだ…….。
































目を開けると、見たこともない天井だった。


ふかふかの布団に寝てる私の鼻と胃袋を刺激する美味しそうな匂い。

それとは別に何だか懐かしいような優しい匂いもする。



「なるほど。最近の地獄はアットホーム志向なんだな」


戦場で叫び続けていたからか、絞り出した声は掠れている。






「目が覚めての第一声がそれかよ…」


この場にいる筈のない声に身体を起こそうと身を捩ると脇腹に激痛が走る。


「おい!まだ安静にしてなきゃ駄目なんだ!激しい起き方はするな!」


そう言って背中にクッションを入れながら優しく起こす。

その行動に唖然とされるがままの私。


鼻がくっつくくらいの至近距離で彼と目が合う。


彼は顔を真っ赤にしてすまない、と慌てて距離を取る。





…私が知っているこの男はこんな表情をしない。



いつも女帝の側で凍てつく様な視線を向けていた。



これは夢か。


だが脇腹の痛みが現実だと告げている。




私は敵に助けられてしまったのか。




「……陛下はどうなった…?」


何故私を助けたのかも疑問だが今はその事が大事だった。

私がここにいるのならば、彼も…。





「今は生きている、とだけ伝えておく…」

短い沈黙の後、彼はそう言った。



そうか、まだ、生きているのか…。



「私の尋問はいつから始まる?」



「……は?」


…何故呆れたような表情をする?


「お前、今の状況どう見てるんだ…?」


怪我の手当て、豪華なベッド、温かなスープ。

こいつマジか。と呟く敵。


「死にかけた敵からは大した情報も聞けないだろう」


「だったら俺自らこんな事しねぇよ!お前、俺を誰だと思ってるんだよ!」



何でこいつキレてんだ?誰だと思ってるって言われても…。


「帝国一の剣士で女帝の婚約者だろ?」

帝国は秘密主義らしく、こいつは名前しか分からず経歴などは一切公開されていなかった。


あと改めて見ると顔がいいと思う。女帝は面食いだな。



「………………………………」


項垂れている。ぶつぶつ呟いている。近寄りたくない。



数十秒の沈黙の後、何故か凄く疲れた顔を上げて私を見つめる。


「……婚約者じゃない……。俺は陛下の弟だ…。その、髪と瞳の色が同じだろう……?」


言われてみれば女帝もこいつも銀髪に色素の薄い水色の瞳だ。

帝国の人間は皆同じ色なんだと思っていた。


素直にそう告げると思いっきり顔をしかめた。


「彼の国王の姉の興味は自分の弟だけ、って言う噂は本当だったんだな…」

む、何だその失礼な噂は。まあ、概ね間違いではないが。


「疲れた…。とりあえずこれ飲んで寝てろ」

そう言ってスープを私に渡すと奴は少し離れた椅子に座りこちらを見る。

「毒とか入ってないから安心しろ。…やっと手に届く所まで来たんだ。死なせる訳ないだろ」


最初の言葉以外聞こえなかった。うん、聞こえなかった。


私がスープを一口啜ると優しい顔をする。






そうか。これが私への拷問なのか。


敵に命を救われ、憎しみの感情を向けられる事もなく、手厚く保護されて。


反抗の牙を砥ぐ事もなく、この温かな環境で自身の身体がふやけていって。





それを受け入れようとしている私に対して。





「ん…飲み終わったか。それじゃあ、少し眠れ。体力が回復したら、また話をしよう」


そう言って私の頭を撫でながら背中のクッションを外す優しさに。






…もしかしたら、私は、もう………

因みにガチ敵対バージョンも考えたんですがお互いの口から甘い言葉ではなく血反吐が溢れてきそうになって更にRの壁を越えそうになったので没にしました。

私に大人の階段はまだ早い…

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