運命との邂逅 05
ベルスレイアは、魔眼でまじまじとリーゼロッテのステータスを確認する。
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名前:リーゼロッテ・クルエリア(Lieselotte Cruelia)
種族:人間
職業:聖女
レベル:20
生命力:80
攻撃力:24
魔法力:37
技術力:34
敏捷性:32
防御力:22
抵抗力:38
運命力:40
武器練度:杖A
魔法練度:光X 治癒X
スキル:護りの祈り 癒しの祈り 祝福 癒しの波動
不幸 幸運
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まず目を引いたのは、職業。LTOにおける聖女とは、魔法系統の特殊職。光と治癒に特化した賢者、という認識であった。
そして、NPC専用の職業でもあった。
聖王国サンクトブルグに、時代につき一人だけ生まれるという、聖なる魂を持った少女。神の祝福を受けた使徒。それが聖女。LTOでは、サンクトブルグの王女限定の特殊職であった。
成長率と上限は魔法系の上位職、賢者とほぼ同等。習得可能スキルは、治癒魔法系統の優れたスキルを網羅。そして、光と治癒の練度が最初からXに到達している。これが、ベルスレイアの知る聖女という職業の特徴であった。
属性が限定されることを除けば、賢者の上位互換。極めて優秀な職業。ただしNPC、サンクトブルグの王女専用。
――そのはずだった。
ベルスレイアは知っている。リーゼロッテは、サンクトブルグの王女ではない。
LTOの王女と同一人物は、この世界にも存在している。現在は妖精都市フェニキアへ留学中である。
つまり、本来ならそちらが聖女であるはずなのだ。
だが、実際にはリーゼロッテが聖女である。LTOとの相違点と言えばそれまで。しかしベルスレイアは訝しむ。LTOとの相違点があるというならば、自分と同じ。つまり、ベルスレイアの出生の秘密と何か関係があるかもしれない、とも考えられる。
そして奇妙なのは職業だけではない。
尖塔の最上階に幽閉されていたにしては高すぎるレベル。そしてステータス。どれも成長上限に達している。
戦う機会も無い、閉鎖的な場所でこの強さは異様と言う他ない。
スキルに関しても妙な点がある。
護りの祈り、癒しの祈り、祝福、癒しの波動。これらは聖女が習得可能なスキルである。だが不幸、及び幸運というスキルは聖女のスキルではない。
そもそも――この二つのスキルは、LTOに存在しない。
存在しないはずの未知のスキル。これもまた、ベルスレイアと共通する。
――リズは、私の生まれと何か関係があるのかもしれないわね。そこまで考えて、ベルスレイアはようやく口を開く。
「ねえ、リズ。貴女は聖女なの?」
ベルスレイアの問いに、リーゼロッテは頷く。
「はい。そう呼ばれたこともあります」
頷き、説明を続けるリーゼロッテ。
「子供の頃、村からこの城へ連れてこられて……昔のことだから、もうあまり覚えてないんです。でも、無理やり連れてこられたということは覚えてます。その時、私が聖女だからとか、何とか言われていました」
説明から、ベルスレイアはリーゼロッテの境遇を推測。単なる村娘だったリーゼロッテが、何かの拍子に聖女であると知られた。その力を欲した国が、リーゼロッテを強制的に村から連れ去った。
そして今まで、この部屋で飼い殺しにしてきたのだろう。
想像するほどに、ベルスレイアは怒りが湧き上がるのを感じた。よく覚えていない、と言わせるほど昔。それほどまでに幼い子供だった頃から、リーゼロッテはこの部屋に閉じ込められていたことになる。外見年齢から逆算すれば、十数年にも及ぶはず。
――リズにそんなひどい事をするなんて、許せない。
ベルスレイアは、サンクトブルグという国への不信感を募らせる。リーゼロッテは、ベルスレイアにとって自分と等しく尊い。既にこの直感的、本能的な感覚をベルスレイアは肯定している。
よって、サンクトブルグの行いはベルスレイアへの裏切りとも言えた。