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運命との邂逅 02




 尖塔への侵入計画を立てながらも、ベルスレイアはスキルの確認に励んだ。潜影、操影のスキルに関しては操作練度が高まっていった。また、潜影は自分以外のものも持ち込める――つまり、まさに収納魔法同様のことが可能だと分かった。


 しかし、一方で。覚醒、そして破壊の二つに関しては何一つ判明しなかった。覚醒する条件、破壊する条件が不明。発動自体が不可能。よって性能の検証や修練も不可能であった。

 その影響もあり、尖塔への侵入計画に二つのスキルを絡めることは出来なかった。



 最終的な計画は、潜影頼りとなった。

 夜、ベルスレイアはフラウローゼス家の屋敷を抜け出す。操影の衣を纏った状態で貴族街を駆け抜け、王城まで近づく。

 城壁を越えようとすれば、警戒の為に張り巡らされた魔法に探知される恐れがある。よって、正門から堂々と通り抜ける。潜影を使い、閉じた城門の隙間を抜け、城内へ。


 正門を抜けた後は、道に沿って進む。潜影を維持しておけば、城内警備の騎士に見つかる恐れも無い。堂々と、噂の尖塔へと進んでいけばいい。


 尖塔に到着後は、月の光が生み出す塔の影を利用し、潜影で登っていく。内側に影となる空間があれば壁をすり抜けることは可能。窓や隙間があれば、そこから侵入も出来る。

 何にせよ、塔に辿り着けば後はどうとでもなる。



 計画実行当日。ベルスレイアは、順調に貴族街を抜けていく。日頃から夜になると、密偵ごっこで駆け回っている。言わば、貴族街は庭のようなもの。障害などあり得なかった。


 そうして何の不安も無く城門に辿り着く。

 城門もまた、何の問題も無く潜影で素通り。警備の騎士程度の実力では、ベルスレイアの潜影を見破ることは不可能。優れた魔素操作能力、あるいは何らかの魔眼が無ければ違和感すら覚えない。


 城内に入ってからも順調に進んだベルスレイア。目的の尖塔の位置は、既に調べがついている。迷うこと無く、噂の尖塔へ到着。

 噂通り、入り口は見当たらない。城内はもちろん、外にも出入り口は見当たらない。


 だが、ベルスレイアは見上げて気づく。

「――あら。窓があるじゃない」

 塔の頂上付近に、採光の為と思われる窓があった。小さい円形の窓。外の景色を見るための窓では無さそうであった。


 何にせよ、窓があれば侵入は容易い。隙間があれば、潜影で滑り込むことは可能。窓の大小、用途、鍵の有無は関係無い。

 ベルスレイアは舌を出し、唇を舐める。噂に聞きし、秘密の尖塔。その内部を拝む時が来た。


 潜影で塔の影をするする移動し、登っていく。窓と同じ高さで潜影を解除し、壁伝いに窓まで移動。そもそも、ベルスレイアの身体能力があれば素手で塔の壁を登ることさえ可能だ。潜影に頼らずとも、難なく窓に到着する。


 そして――ベルスレイアは気付く。

 窓には鍵が掛かっていない。引けばそのまま開きそうにも見えた。

 窓自体も、ベルスレイアの想像以上に大きい。潜影を使わずとも、ベルスレイアの子供らしい小さな身体は簡単に通り抜けられる。


 好奇心が湧いた。窓に手をかけ、力を入れる。すんなりと窓は開いた。円形の隙間に身体を通し、中へと入り込む。床までの距離は三メートル程度。窓から飛び降り、着地。この程度の高さ、ベルスレイアには何の障害にもならない。



「――えっ?」



 その時、ベルスレイアの背後から声がした。


 驚き、慌てて振り返るベルスレイア。密偵ごっこに興じる時は娯楽性を高めるため、血の魔眼を使用していない。だが魔素操作に優れるベルスレイアは、血の魔眼に頼らずとも探査能力に優れる。

 そのベルスレイアが、塔の中には誰も居ない、と直感していたのだ。


 なのに、実際は人が居た。これは、通常ありえない事態であった。だからベルスレイアは慌てた。自分にも気取られないほど、気配を殺すことに優れた隠密が居るのか、と考えた。


 だが、この予想もまた間違いであった。


 振り返ったベルスレイアの目には――一人の少女が映った。



「――天使?」


 思わず、呟くベルスレイア。


 そこに居た少女――金髪碧眼の儚げな顔立ちの少女は、ベルスレイアをして天使と呼ばせるほど美しく、可憐であった。

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